おはようございます。
今日は、未払能力給支払請求の可否に関する裁判例を見てみましょう。
白鳳ビル事件(東京地裁令和3年4月23日・労判ジャーナル114号30頁)
【事案の概要】
本件は、Y社の元従業員Xが、Y社に対し、網膜剥離等にり患していたXに無理な職場復帰を求めるなどといった安全配慮義務違反がY社にあり、これにより損害を被ったとして、慰謝料等の損害合計約167万円等の賠償金の支払、雇用契約に基づき、平成30年6月21日から同年7月16日までの管の就労に係る能力給約2万円等の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 Xは、Y社との間の雇用契約では、偶数月の末日に能力給が支払われることが合意されていた旨主張するが、Y社の就業規則やXが同意したとして署名した本件説明書には能力給との名称の賃金についての規定がなく、実際にもXに対し能力給との名称の賃金は支払われていないから、XとY社の間の雇用契約において、能力給との名称の賃金が支払われることが合意されていたとは認められず、また、Xは、賞与の支払を求めるものとも思われるが、Y社では、賞与の支払については、Y社の業績や従業員の貢献度を基にしてY社の裁量により査定をして金額を定めるものとされているところ、査定の結果は明らかではなく、賞与の具体的な金額を算定することができず、また、賞与については支払日である偶然月の末日に在籍した従業員に対してのみ支払われるものとされているところ、Xが支払を請求する平成30年6月21日から同年7月16日までの間の賞与の支払日は同年8月31日と解されるが、Xは、同日より前の同年7月17日にはY社を退職しており、これにもかかわらず賞与の支払の請求を認めるべき事情を本件証拠上見出せないから、Xは、Y社に対し、能力給ないし賞与の支払を請求することはできない。
これではどうしようもありません。
口頭でそういう話を聞いたというだけでは、裁判に勝つのは難しいです。
日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。