おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。
今日は、取引先奪取行為等を理由とする未払退職金請求に関する裁判例を見てみましょう。
ユフ精器事件(東京地裁令和3年3月30日・労判ジャーナル114号48頁)
【事案の概要】
本件は、Y社の元従業員Xが、本訴として、Y社に対し、退職金規程に基づき退職金約685万円等の支払を求め、これに対し、Y社は、反訴として、Xに対し、取引先を違法に奪い、在庫品を無断で搬出するなどの違法行為をしたとして、不法行為による損害賠償請求権に基づき損害約4619万円等の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
本訴退職金請求認容
反訴損害賠償請求棄却
【判例のポイント】
1 Y社はXが本件4病院に対し、取引先を変更するよう社会通念上自由競争の範囲を逸脱した方法で働きかけた旨主張するが、社会通念上自由競争の範囲を逸脱した方法で働きかけたことを認めるに足りる証拠はなく、そして、M記念病院以外の病院、医療センター及び脳神経センターについては、Xが取引先を変更するよう働きかけたことを認めるに足りる証拠はないから、Y社の主張を認めることはできない。
2 Y社は、Xが、本件搬出行為、本件販売行為及び本件取引先奪取行為という一連の行為を行ったことにより、本件4病院は、Y社との取引を終了させたと主張するが、Xは、本件取引先奪取行為をしたと認めることができず、そして、Y社の方で、Xが退職することとなった後に本件4病院に対して積極的な営業活動を行ったことは認められず、かえってY社は、東京警察病院に対してXと連絡を取らないように求める書面を差し入れるなどしてY社の社内に紛争を抱えていることをあえて同病院に知らせてその印象を悪化させる行動にすら及んでおり、これらの状況に照らせば、本件4病院がY社との取引を終了したことは、かえって専らY社のフォロー不足が原因であると推認することができ、本件搬出行為及び本件販売行為と本件4病院がY社との取引を終了させたこととの因果関係を認めることはできないから、Y社の前記主張を認めることはできず、Y社の反訴に係る損害賠償請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。
顧客は、会社ではなく担当者につくのは、美容師やキャバ嬢に限った話ではありません。
その結果、担当従業員が退職することによって、「顧客を奪われた」ように見えてしまうことは多々あります。
しかしながら、著しく不相当な事情がない限り、裁判所は「自由競争」を重んじます。
競業避止に関する裁判は、多くの場合、会社に不利な結果となりますのでご注意ください。
競業避止義務の考え方については顧問弁護士に相談をし、現実的な対策を講じる必要があります。