Daily Archives: 2021年11月22日

配転・出向・転籍48 配転拒否後に解雇された事案における配転の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、配転拒否後解雇された事案における配転の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

インテリジェントヘルスケア(仮処分)事件(大阪地裁令和3年2月12日・労判1246号53頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、Y社からの配転命令に応じなかったとして解雇(普通解雇)されたが、同解雇は無効であるとして、①労働契約上の地位を有する地位にあることを仮に定めること、②賃金の仮払い、③配転命令先に勤務する労働契約上の義務がないことを仮に定めることを求める事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効
Y社は、Xに対し、令和3年2月から本案訴訟の第一審判決言渡しに至るまで、毎月25日限り、16万3000円を仮に支払え。

【判例のポイント】

1 債務者は、センターⅠにおいて、印鑑の不正所持という問題や、ケアマネージャーが、多数にわたって介護保険に定められたルールを逸脱して居宅サービス計画書の作成等を行っていたという重大な不正行為が発覚したことから、人員配置について見直すことを含めて対応策を検討していたもので、本件配転命令は同対応策として発令されたものである旨主張する。
しかし、確かに、ホロニクスグループにおいて、令和元年6月21日付けで、利用者の印鑑の使用に関する注意喚起が行われたことが認められるが、同注意喚起は、京都府八幡市社会福祉協議会職員のケアマネージャーによる行為についての新聞報道がなされたことを受けてのものであって、センターⅠにおいての問題が発覚したことを受けてのものではなく、ほかに、センターⅠにおいてY社が主張するような問題が発覚したことを客観的に裏付ける疎明資料もない。
また、仮に、Y社が主張するような問題が発生したため、Y社内部あるいはホロニクスグループ内部において検討がなされたり、行政への対応を行ったり、対応策の検討が行われたのであれば、そこには何らかの痕跡が残ることが想定されるが、本件において、Y社が、そのような検討、対応等を行ったことを客観的に裏付けるに足りる疎明資料はない
さらに、Y社あるいはホロニクスグループ内において、一般的な人事異動として、センターⅠとその余の施設の間において、定期的に人事異動が行われていたことを一応認めるに足りる疎明資料もない
そして、Xが、Y社に対し、就業規則の変更について問題視する内容のメールを送信しているところ、労働者の同意がなくても、就業規則を変更して1日の所定労働時間を延長したり、休日に関する定めを変更することが可能な場合もあるが(なお、Y社における就業規則の変更が有効か無効であるかは現時点では明らかではない。)、その点をさておき、Xが上記のようなメールを送信した約1か月後に本件配転命令が発令されたものである
以上を総合考慮すれば、本件配転命令は、業務上の必要性を理由として発令されたものと評価することはできず、ひいては、配転命令権の濫用として無効となるといわざるを得ない。
そうすると、本件配転命令に従わなかったことを理由とする本件解雇も無効となるから、本件においては、被保全権利が認められることとなる。

解雇理由を配転命令に従わなかったこととする場合には、当然、前提となる配転命令が有効である必要があります。

今回の事案では、配転命令に業務上の必要性が認められなかったため、無効と判断されています。

突発的な配転命令を行う場合には、事前に顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。