おはようございます。
今日は、採用権限の有無と管理監督者性に関する裁判例を見てみましょう。
カーチスホールディングス事件(東京地裁令和3年3月17日・労判ジャーナル113号54頁)
【事案の概要】
本件は、Y社の元従業員Xが、所定労働時間を超える残業を行ったとして、未払割増賃金等の支払を求めるとともに、労基法114条に基づく付加金等の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
未払割増賃金等請求は一部認容
付加金等請求は棄却
【判例のポイント】
1 Xは、採用面接については実質的な権限を有していたと認められるが、これは、使用者の人事権の一部に過ぎず、その他の業務内容に照らしても、Xは、基本的には財務経理業務を担当していたものであり、Xが経営上の事項について実質的な決定権限を有していたものとは認められないことからすれば、実質的に経営者と一体的な立場にあるといえるだけの重要な職務と責任、権原があったとは認められず、また、Xが、本件請求期間中、基本的には午前9時までには出勤し、朝礼に参加し、朝礼の当番も割り振られていたことからすれば、Xは、財務経理業務の繁閑に応じて残業をする必要があったものと認められ、Xは、始業時刻及び終業時刻について制約があったものであり、自己の裁量で労働時間を管理することが許容されている立場にあったとは認められないこと等から、Xが、実質的に経営者と一体的な立場にあるといえるだけの重要な職務と責任、権限を有していたとは認められず、また、Xがこのような実質的な決定権限を行使するにあたって労働時間に関する裁量を有していたとも認められないことからすれば、Y社においてXの処遇が高水準であり、管理監督者としてもふさわしい待遇であったと認められるとしても、Xが労基法41条2号の管理監督者であったと認めることはできない。
2 Y社が割増賃金を支払われなかったのは、Xを管理監督者であると認識していたためであるところ、結果として管理監督者とは認められないものの、XのY社内における肩書、業務内容及び処遇等に照らすと、Y社がXを管理監督者に該当すると認識したことには一定の理由はあると解され、Y社がXに割増賃金を支払わなかったことが悪質であると評価することはできないから、本件において、Y社に付加金の支払を命ずることは相当ではない。
いつもながらの開かずの扉です。
日本の中に、管理監督者性の要件を満たしている管理職が何人いるでしょうか・・・。
労務管理は事前の準備が命です。顧問弁護士に事前に相談することが大切です。