おはようございます。
今日は、組合についての記事掲載及び書面送付が不当労働行為にあたるかが争われた裁判例を見てみましょう。
国・中労委(シーフォービジネスインテグレーション)事件(東京地裁令和3年3月25日・労判ジャーナル113号44頁)
【事案の概要】
本件は、X組合が、都労委に対し、Y社が平成●年●月●日にインターネットのフェイスブックページにX組合に関する記事を掲載したこと及びY社がY社の退職者に対してX組合に関する記述に関する記事を掲載したこと及びY社がY社の退職者に対してX組合に関する記述を含む書面を送付したことが、それぞれ労働組合法7条3号の不当労働行為(支配介入)に該当するとして救済命令を申し立てたところ、都労委が、前記各行為が不当労働行為に当たると認めて救済命令を発し、Y社はこれを不服として、中労委に再審査を申し立てたが、中労委が、前記各行為は不当労働行為に当たると認めて、初審命令を一部変更した救済命令を発したため、Y社が、中労委が発した本件命令の取消しを求めた事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 本件記事は、Y社のフェイスブックページに掲載されたものであり、Y社の退職者やその他の読者が閲覧できるものであり、本件記事掲載は、Y社の退職者を含む読者に対して、組合と関係を持つとトラブルに巻き込まれかねず、JJK脱退手続が早期に行われない可能性があるという危惧を抱かせるものであり、Y社の退職者のうち、非組合員にはX組合に加入することを躊躇させ、X組合員にはX組合から脱退することを促す効果を持つ行為であり、X組合の組織結成を妨害し、X組合を弱体化させる行為であると認められること等から、本件記事掲載は、支配介入に該当するものと認められる。
2 本件書面送付は、退職者に対して書面を郵送するという方法で行われたところ、本件書面の記載内容の要点は、Y社の発行済株式の全部を所有していたA社の代表取締役Bにより、不法な会社の乗っ取りが行なわれたが、脱退手続を含む離職手続に関し、添付した退職経緯書を記入して返信すれば、離職手続を完了させるというものであり、送付した退職者に対して、X組合は、建造物侵入などで逮捕者を出し、組合員に使用者の情報を盗ませる不法行為を行っている組織であり、また、X組合のY社に対する争議行為はBの画策であるとの印象を与えるものであるから、本件書面送付は、読者である非組合員にはX組合に加入することを躊躇させる効果をもたらし、組合員には組合から脱退することを促す効果をもたらすものといえ、組合を弱体化させる行為であると認められること等から、本件書面送付は、組合への支配介入に該当するものと認められる。
表現の自由があるとはいえ、公共の福祉による制約を受けます。
今回の事案のように組合に関する表現行為については、労組法の不当労働行為による制約を受けることは言うまでもありません。
軽率な行為・言動はトラブルに発展しますのでお気を付けください。
労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。