おはようございます。
今日は、配転命令に従わない等の業務命令違反を理由とする解雇の有効性に関する裁判例を見ていきましょう。
F-LINE事件(東京地裁令和3年2月17日・労判ジャーナル112号62頁)
【事案の概要】
本件は、Y社に雇用されていたXが、Y社のXに対する平成31年1月1日付け配転命令及び同年3月1日付け懲戒解雇の意思表示は無効であると主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位に在ることの確認を求めるとともに、労働契約に基づく賃金請求として、本件配転命令後の未払賃金等の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
解雇有効
【判例のポイント】
1 本件において、Y社は平成30年3月5日、i社からXに対する対応を求められその後、XとD氏が接触しないよう調整するなどして対応し、その後も話し合いが続けられたが、i社の他の従業員の負担が重いことから、同年6月25日以降はi社においてD氏をc営業所の勤務から外し、i社のL係長においてD氏の業務を代替したが、L係長の負荷も重いことから、同年9月11日には、i社からY社に対し、状況の改善が見られないままではトラック5台体制の維持が難しく、4台体制とすることを考えてほしい旨の要望が出されるに至った。c営業所の○○輸送業務は、Y社のトラック4台とi社のトラック5台の9台体制で行われているところ、i社が5台体制から4台体制に縮小した場合には輸送業務に大きな影響が出ることになるが、○○輸送業務はタンクローリーによる特殊業務であり、特殊な作業手順があることから、スポット的に他社に代替を依頼することが困難であり、Y社としてはi社の業務縮小を避ける業務上の必要性があり、そのためにはXの勤務先を変更する必要性があったといえる。また、本件配転命令当時、d営業所には欠員が出ており、欠員を補充する必要もあった。
以上によれば、本件配転命令には、業務上の必要性があると認められる。
2 Xは、本件配転命令後、d営業所における初出勤日である平成31年1月9日に出勤することなく、同営業所のMマネージャーが電話で出勤を求めたのに対し、納得できないので業務命令には従わない旨回答し、同日以降、同年2月27日までは電話に出ることもなく、ショートメールによる連絡に対しても反応しなかった。また、Y社による同年1月15日、同月25日、同月29日及び同年2月1日付けの文書による出勤指示に対しても反応せず、同年3月1日付けで本件解雇されるまでの間、Y社に対して何らの連絡をすることなく欠勤を継続した。
前記のとおり、本件配転命令が有効であると解されることからすれば、Xによる同年1月9日から同年3月1日までの欠勤は、無断欠勤に当たると認められる。
3 以上によれば、懲戒理由③は本件就業規則の懲戒解雇事由に該当すると認められるところ、Xは、本件配転命令の内示を受けた直後から、C所長やB支店長に対して本件配転命令を拒否する姿勢を示した上、d営業所での初出勤日である平成31年1月9日、Mマネージャーに対して電話で業務命令に納得できないから従わない旨告げて以降、2か月近くにわたって被告からの連絡を無視し続けており、業務命令違反の程度は著しく、懲戒解雇処分となることもやむを得ないと考えられることに加えて、Xが、平成29年4月に本件譴責処分を受けていることや、G氏とのトラブルにおいても鉄の棒を持ったことにつき厳重注意されたことがあることのほか、配車担当者に対して配車に関する不満を継続的に述べ、上長から複数回にわたり公平に配車をしていること等の説明を受け、業務に支障を生じさせていたこと等Xのこれまでの勤務状況等にも鑑みれば、本件解雇は客観的合理的理由があり、社会通念上相当であるといえ、権利の濫用には当たらず、有効である。
配転命令が有効である場合、配転命令に応じないことは無断欠勤となります。
その程度が重い場合には、本件のように解雇事由として認められます。
実際の対応については顧問弁護士に相談しながら行うことをおすすめいたします。