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今日は、未払賃金等支払請求と通勤時間等の労働時間性に関する裁判例を見てみましょう。
オーイング事件(福井地裁令和3年3月10日・労判ジャーナル112号54頁)
【事案の概要】
本件は、Y社と雇用契約を締結して労務を提供していたXら12名が、Y社に対し、雇用契約に基づく賃金支払請求権に基づいて、未払賃金等の支払を求めるとともに、付加金請求権に基づいて、付加金等の支払を求め、さらに、不法行為に損害賠償請求権に基づいて、それぞれ100万円等の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
未払賃金請求一部認容
損害賠償請求棄却
【判例のポイント】
1 各集合場所と高浜発電所の間のY社社有車の移動時間については、Xらは、他の従業員を乗せて社有車の運転を行う場合もあったとはいえ、社有車内で業務を行うことはなかったことからすると、自家用車等で通勤する場合と差異はないといえ、Xらが入門証の管理についてY社の指示に従っていたことから直ちに、Xらが上記移動時間中にY社の指揮命令下に置かれていたとはいえないこと等から、Xらが主張する各集合場所と同発電所までの移動時間については、これを労働時間と認めることはできない。
2 午前8時に呼出周辺巡回業務を開始する警備員を対象に午前7時半頃から朝礼が行われていたこと、朝礼において、前日からの引継ぎや業務に関する注意喚起など、業務遂行に必要な連絡等が行われていたこと、朝礼に参加しない場合において注意を受けるということもあったことが認められ、そして、朝礼終了後、警備員はその日のそれぞれの配置場所に移動した上で勤務を開始していたことからすると、朝礼及びその後の配置場所までの移動までの行動を含めて、Y社の指揮命令下に置かれていたものと認められるから、呼出周辺巡回業務を担当する警備員において、午前8時に同業務を開始する日の朝礼開始後業務開始までの30分間は労働基準法上の労働時間に該当するものと認めるのが相当である。
3 Xらは、昼の60分の休憩時間全体において、ゲートの開閉等の業務について、直ちに対応することが義務付けられており、労働からの解放が保障されているとはいえず、Xらは、Y社の指揮命令下に置かれていたといえるから、昼の60分の休憩時間とされた時間は、労働基準法上の労働時間に該当するものと認めるのが相当であり、夜勤の60分間の休憩時間について、Xらは夜勤時においてもPHSを携帯していたことが認められ、これに加え、昼の60分間の休憩時間についてローテーションが機能していなかったことからすれば、夜勤の60分間の休憩時間についても、ローテーションが機能していなかったことが推認されるから、夜勤の60分間の休憩時間において、Xらは、労働からの解放が保障されているとはいえず、XらはY社の指揮命令下に置かれていたといえるから、日勤の昼の60分の休憩時間のほか、夜勤の60分の休憩時間についても、労働基準法上の労働時間に該当すると認めるのが相当である。
警備員に限らず、休憩時間の労働時間該当性についての判断として一般的なものです。
日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。