労働時間74 ダブルワーク先の労働時間について通算が否定された理由とは?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、労基法38条に基づき、ダブルワーク先の労働時間について通算が否定された事案を見ていきましょう。

シェリーマン事件(東京地裁令和3年3月3日・労経速2454号37頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されていたXが、①雇用契約に基づく賃金請求として、平成29年11月1日から同年12月5日までの間(以下「本件請求期間」という。)の未払残業代18万2185円及び②労基法20条1項に基づく解雇予告手当の未払分の請求として、17万6700円の合計35万8885円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、6万4421円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Xは、午前7時から翌日の午前7時まで24時間勤務のダブルワークを行っており、ダブルワーク先における労働時間を、労基法38条に基づき、Y社における労働時間に通算すべきである旨主張する。
この点、労基法32条2項が、1日8時間を超えて労働させてはならない旨規定する趣旨は、長時間労働により労働者に生じる種々の悪影響を排除することにあると解されることからすれば、同項の1日とは、午前0時から午後12時までのいわゆる暦日をいうが、継続勤務が2暦日にわたる場合には、たとえ暦日を異にする場合でも1勤務として取扱い、当該勤務は始業時刻の属する日の労働として、当該日の1日の労働とすべきであると解される(昭和63年1月1日基発第1号,平成11年3月31日基発第168号参照)。

2 Xは、平成29年11月2日、同月5日、同月12日、同月16日、同月20日及び同月26日に、ダブルワーク先において、午前7時から翌日の午前7時まで就労していたことが認められるところ、継続勤務が2暦日にわたる場合には、暦日を異にする場合でも1勤務として取り扱い、当該勤務は始業時刻の属する日の労働として扱うべきであると解されることからすれば、2暦日目の午前0時から午前7時までの7時間の労働時間については、ダブルワーク先における始業時刻が属する日の労働時間として算定されるべきものである。
また、ダブルワーク先における始業時刻の属する日において、当該始業時刻前に、Y社において夜間清掃業務を行っていた場合、夜間清掃業務は前日のフロント業務との継続勤務が2暦日にわたる場合として、当該フロント業務の始業時刻の属する日の労働であると解されるから、夜間清掃業務と午前7時からのダブルワーク先における労働は、別日のものと解すべきである。
そうすると、ダブルワーク先における労働時間について、労基法38条に基づきY社における労働時間として通算すべきものがあるとは認められず、Xの主張は採用できない。

上記判例のポイント1の通達は理解しておきましょう。

労働時間に関する対応は、事前に顧問弁護士に相談することにより大幅にリスクヘッジが可能になります。