おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。
今日は、業務外負傷による休職期間満了後の退職扱いの適法性に関する裁判例を見てみましょう。
日東電工事件(大阪地裁令和3年1月27日・労判1244号40頁)
【事案の概要】
Y社に雇用されていたXは、業務外の事故により負傷し、休職していたところ、Y社は、休職期間の満了により、Xとの雇用関係が終了したものとした。Xは、休職期間満了時点において休職事由が消滅していたから雇用契約は終了していない旨主張して、Y社に対し、雇用契約に基づき、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、休職期間満了日の翌日である平成29年2月4日から本判決確定の日までの間の賃金月額59万9753円及び年2回の賞与各165万5500円+遅延損害金の支払を求め、さらに上記雇用契約終了に至るY社の対応に違法性がある旨主張して、不法行為に基づく損害賠償(慰謝料)として100万円+遅延損害金の支払を求めている。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 E産業医は、復職審査会の場で、Xについて「復職可能とは判断できない」旨の意見を述べ、後に同意見及びその理由を記載した意見書を提出しており、上記診断書と反対の意見を述べている。
そこで、検討するに、E産業医は、上記意見を形成するにあたり、X作成に係る「生活リズム確認表」をもって、休職期間満了時機に程近い10週間分にわたるXの生活状況等を確認した上、復職審査会に先立ってXと面談して業務一覧表を用いつつXの健康状態や就労能力について確認している。加えて、E産業医は、Y社の職場関係者及びXの主治医とも面談し、上記意見を形成しており、Xの業務内容や健康状態、身体能力を踏まえて業務の遂行可能性やその程度等について相当具体的に検討しているといい得る。
他方、Xの主治医がXの職場内容や就労環境について、Y社の従業員と面談し、具体的な情報を取得していたことは本証拠上うかがわれず、また、上記診断書はどのような通勤を前提として就業規則どおりの勤務について問題なく可能であるとしているのかも不明である。さらに、同診断書が作成されるに先立ち、Y社担当者は、X代理人に対し、復職可能との判定に必要となるであろう診断書の記載内容として「従前の業務にて、就業規則どおりの勤務ができること」等の文例を示しているところ、主治医作成の診断書の文言が先に示された文例に酷似しており、かつ本件雇用契約が終了に至るか否かといった時期・局面において主治医作成の診断書が作成されていることを踏まえると、主治医作成の診断書で示された所見は、復職を希望するXの意向を踏まえ、担当業務の具体的内容等を十分検討することなく記載された可能性が払拭できない。
以上に加えて、Xの後遺障害の内容、身体能力、健康状態及び上述した労働条件に関するXの申入れ及び発言内容等も踏まえると、上記診断書の内容は、にわかに信用できないものである。
休職期間満了時における復職の可否判断について主治医と産業医の意見が相違することは珍しくありません。
その際、裁判所がどのような点に着目して各診断書の証拠価値を判断するのかがよくわかる事案です。
是非、参考にしてください。
今回の事案のようなケースにおいて、事前にいかなる準備をすべきかについては、顧問弁護士に相談するようにしてください。