おはようございます。
今日は、再雇用職員に対して、再雇用以前より好待遇の記載がある就業規則適用が認められた事案を見てみましょう。
社会福祉法人青梅市社会福祉協議会事件(東京地裁立川支部令和2年8月13日・労経速2445号31頁)
【事案の概要】
本件は、Xらが、Y社に対し、雇用契約及び有給休暇の買取の合意に基づき、Y社就業規則及びY社再雇用職員取扱要綱に基づき算定される給料等の金額と実際の支給額との差額及びこれに対する遅延損害金の支払を求める事案である。
Xらは、給料、地域手当、期末手当、勤勉手当、時間外勤務手当及び有給休暇買取分について上記差額の支払を求め、給料、地域手当、期末手当、勤勉手当及び時間外勤務手当の差額について遅延損害金の支払を求めている。
Y社は、定年退職後の再雇用期間におけるXらには、就業規則における再雇用職員の給料に関する定めは適用されず、仮に適用されるとしてもXらの請求は権利濫用に当たると主張し、また、有給休暇買取分について買取の合意を争っている。
【裁判所の判断】
請求認容
【判例のポイント】
1 Y社は、再雇用職員の給料に関する定めはXらに適用されないと主張する。
まず、Y社は、仮に再雇用職員の給料に関する定めがXらに適用された場合、Xらの再雇用期間における給料は、再雇用前の給料を上回ることとなるが、再雇用職員の給料に関する定めは、雇用慣行に従った通常の採用の場合を前提としているのであり、再雇用職員の給料が再雇用される前の給料を上回ることは想定されていないなどと主張する。
しかし、再雇用職員の給料に関する定めは、職務の級により異なる金額を記載しているものの、再雇用職員の定年退職までの勤続年数や定年退職時の給料の月額等によって再雇用職員の給料を区分していないのであるから、再雇用職員の給料に関する定めは,再雇用職員の定年退職までの勤続年数や定年退職時の給料の月額等にかかわらず、再雇用職員の職務の級に従って一律に適用されるものと解するのが相当であり、このように解する再雇用職員の給料に関する定めの内容が不合理であるとはいえない。
また、Y社は、Xらを再雇用するに際し、再雇用後の給料を含む雇用条件は再雇用前と同じであることを説明し、Xらはそれを承認していたと主張する。
しかし、同事実を認めるに足りる証拠はなく、仮にY社の主張するような説明と承認があり、これについてXらと被告が合意していたとしても、その内容はXらに適用される再雇用職員の給料に関する定めに達しない労働条件であるから、同合意は無効である。
あまり見かけないタイプの事案です。
規程内容からすると、このような判断もしかたがありません。
今後ますます継続雇用制度に関する紛争が増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。