おはようございます。
今日は、固定残業制度に関する裁判例を見てみましょう。
アクレス事件(東京地裁令和2年10月15日・労判ジャーナル108号28頁)
【事案の概要】
本件は、Y社と労働契約を締結し就労していたXが、Y社に対し、労働契約に基づき、未払賃金、未払割増賃金、未払退職金及び付加金等の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
未払賃金等請求は一部認容、未払退職手当等請求は棄却
【判例のポイント】
1 Y社は、Xが管理監督者に該当する旨主張するものの、Xが実質的に経営者と一体的な立場にあるといえるような重要な職務と責任、権限を付与されているか、自己の労働時間について裁量を有しているか、管理監督者としての地位や職責にふさわしい賃金等の待遇がなされているか等について具体的な主張をしておらず、その他本件に現れた一切の事情を考慮しても、Xが労基法41条2号の管理監督者に該当するとは認められない。
2 本件において、Y社は、Xの基本給に残業代が含まれている旨主張しており、証拠によれば、Xが平成29年5月1日付け及び同年11月1日付けで押印した各雇用条件通知書兼雇用契約書の「賃金」欄の基本給40万円の記載の直後に、「残業代込み」と記載されていることが認められるが、同契約書のその他の記載を見ても具体的に基本給のうちいくらが残業代に当たるのか又は何時間分の残業代が基本給に含まれているのかを明示する部分はない。また、証拠によれば、Xの平成30年3月分及び令和元年5月分の各給与明細の備考欄には「※基本給には定額残業代100,000円(45時間分)を含む」と記載されていることが認められるが、これらはXがY社での勤務を開始してから相当期間が経過した後に被告が記載したものであって、これらにより直ちにY社とXの間で基本給のうち10万円を固定残業代とする旨の合意をしたことが推認されるとはいえない。
また、就業規則において通常の労働の対価の部分と残業代が明確に区分されているとも認められない(なお、証拠によれば就業規則33条及び46条には賃金に関する詳細は賃金規程に定める旨記載があるが、Y社は賃金規程を証拠として提出せず、また、その内容も覚えていない旨述べている。)。その他一件記録によっても、本件労働契約締結時又はその後いずれかの時点において、XとY社の間において金額又は対象時間数を明示したうえで基本給の一部を固定残業代とする旨の合意をしたと認めるに足りる証拠は見当たらない。
よって、Y社主張の固定残業代の合意が有効であるとは認められない。
いつまで続くのでしょうか・・・
固定残業代の有効要件を満たすことは全然難しいことではないのですが、いつまで経ってもこの手のケアレスミスがなくなりません。
ケアレスミスの代償は、賃金の消滅時効が伸びることによりますます大きくなります。
日頃から顧問弁護士に相談をすれば、間違いなく防げる内容です。