おはようございます。今週も一週間お疲れさまでした。
今日は、コロナ禍におけるタクシー乗務員らの整理解雇に関する裁判例を見てみましょう。
センバ流通(仮処分)事件(仙台地裁令和2年8月21日・労判1236号63頁)
【事案の概要】
本件は、タクシー乗務員であるXらが、Y社に対し、Y社が令和2年4月30日付でした整理解雇は無効であるとして、労働契約上の地位保全及び賃金の仮払いを求めた事案である。
【裁判所の判断】
解雇無効
【判例のポイント】
1 本件解雇は有期雇用契約の期間満了前の解雇であるから「やむを得ない事由」(労働契約法17条1項)が必要である。やむを得ない事由の判断にあたっては、本件解雇が整理解雇でもあることからすると、①人員削減の必要性、②解雇回避措置の相当性、③人員選択の合理性、④手続きの相当性の各要素を総合的に考慮して判断すべきである。
2 債務者の売上については、令和2年3月ころから、新型コロナによるタクシー利用客の減少による売上の減少が始まり、4月は激減した。債務者の4月の収支は約1415万円もの支出超過、4月30日の資産は総額約3133万円もの債務超過となっている。新型コロナの影響によるタクシー利用客の減少がいつまで続くのか不明確な状況であった以上、本件解雇時において、債務者に人員削減の必要性があること及びその必要性が相応に緊急かつ高度のものであったことは疎明がある。
しかし、今後については、給与は従業員を休業させることによって6割の休業手当の支出にとどめることが可能であり、しかも、雇用調整助成金の申請をすればその大半が補填されることがほぼ確実であった。また、燃料費、修繕費、保険料、自賠責保険料は、臨時休車措置をとることにより免れることができた。
これらの事情を総合すると、債務者の人員削減の必要性については、ただちに整理解雇を行わなければ倒産が必至であるほどに緊急かつ高度の必要性であったことの疎明があるとはいえない。
3 債務者は、本件解雇に先立ち、雇用調整助成金の申請や臨時休車措置の活用はしていない。厚生労働省や労働基準監督署、宮城県タクシー協会がホームページや説明会を利用して雇用調整助成金を利用した雇用の確保を推奨していたこと、東北運輸局がホームページを利用して臨時休車措置の利用を推奨していたこと〈など〉に照らすと、債務者は、本件解雇に先立ち、これらの措置を利用することが強く要請されていたというべきである。債務者の解雇回避措置の相当性は相当に低い。
4 本件全疎明資料によっても、債権者らが顧客からのクレームが多いこと〈など〉の疎明があるとはいえない。そうすると、人員選択の合理性の程度も低い。
5 解雇通知は、整理解雇との関連性に欠ける記載が多く、団体交渉の席上での口頭説明では十分とはいえない。そうすると、本件解雇の手続きの相当性も低い。
コロナ禍における整理解雇事案です。
雇調金等について言及されており、昨今の特殊事情を考慮した判断となっています。
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。