おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。
今日は、売上金窃取等を理由とする妊娠中の普通解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。
アニマルホールド事件(名古屋地裁令和2年2月28日・労判1231号157頁)
【事案の概要】
甲事件は、Y社に雇用されていたXが、後記窃取を理由に普通解雇されたが、窃取事実はなく解雇は無効であるなどと主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認及び解雇後である平成30年7月21日以降の賃金の支払を求めるとともに、違法解雇であり不法行為が成立するとして、解雇により受給できなかった出産手当金相当額52万7967円及び慰謝料300万円の小計352万7967円の損害賠償金のうち300万円の支払を求める事案である。
乙事件は、Y社が、Xが平成29年9月23日から平成30年5月11日の間の計40日間・41回にわたり、Y社の運営する動物病院の診療費明細書(控)を破棄・隠匿すると同時にレジスターから計26万3966円の診療費を窃取したとして、不法行為に基づき、上記診療費に加えて無形の損害100万円、弁護士費用50万円の損害賠償を求める事案である。
【裁判所の判断】
解雇無効
→バックペイ
Y社は、Xに対し、17万7288円+遅延損害金を支払え
Y社は、Xに対し、102万7967円+遅延損害金を支払え
X・Y社のその余の請求を棄却
【判例のポイント】
1 本件解雇は、客観的合理性・社会的相当性を欠いており、権利濫用と評価され、認定事実の平成30年5月11日以降の経過や本件訴訟での主張立証状況に鑑みても性急かつ軽率な判断といわざるを得ず、少なくともY社に過失が認められることは明らかであるから、Xの雇用を保持する利益や名誉を侵害するものとして、不法行為を構成するというべきである。
2 Xは、Y社から確たる証拠もなく窃取を理由に産前休業の直前に解雇されたものであること、本件解雇の通告後、その影響と思われる身体・精神症状を呈して通院していることに照らすと、未払賃金の経済的損失のてん補によっても償えない特段の精神的苦痛が生じたと認めるのが相当である。・・・Xの精神的苦痛に対する慰謝料額として50万円が相当である。
窃盗、横領事案については、いかに裏付けをとるかが鍵となります。
「そうではないか」程度で解雇すると、訴訟になってから立証に苦労することになります。
訴訟になる前の段階から顧問弁護士に相談しながら対応することが大切です。