おはようございます。
今日は、勉強会への出席につき、労働基準法上の労働時間に該当するとされた裁判例を見てみましょう。
前原鎔断事件(大阪地裁令和2年3月3日・労経速2432号19頁)
【事案の概要】
本件は、Y社との間で期間の定めのない雇用契約を締結して稼働していたXが、①Y社から普通解雇されたが、同解雇は無効であると主張して、地位確認及び未払賃金(月給及び賞与)+遅延損害金の支払を、②Y社の従業員らからパワハラ行為を受けたと主張して、不法行為(使用者責任)に基づく損害賠償+遅延損害金の支払を、③時間外労働を行ったが、割増賃金が支払われていないと主張して、未払割増賃金+遅延損害金の支払を,それぞれ求める事案である。
【裁判所の判断】
地位確認は棄却
損害賠償請求は棄却
割増賃金2万0523円+遅延損害金を認容
【判例のポイント】
1 Xは、「勉強会」への出席も余儀なくされた旨主張し、Y社は、Xが「勉強会」に任意に参加していたことは明らかであり、労働時間には当たらない旨主張する。
確かに、「勉強会」は、本件組合の提案を受けて開催されるようになったものではあるものの、Xに対する指導内容等を振り返ることを内容とするものであるから、Xが参加せずに開催されることはそもそも予定されていない。また、Xは、D取締役が入社した平成20年の時点において、既に、Y社の従業員らから、なかなか仕事の技術が身に付かないと認識されていたものであり、Xが「勉強会」に参加せず、その後も技術が身に付かないままであれば、Xの賃金や賞与の査定如何、ひいては従業員としての地位如何にかかわるのは明らかである。加えて、Y社の就業規則には、「会社は、従業員に対し、業務上必要な知識、技能を高め、資質の向上を図るため、必要な教育訓練を行う。」、従業員は、会社から教育訓練を受講するよう指示された場合は、特段の事由がない限り指示された教育訓練を受講しなければならない。」と規定されていることをも併せ鑑みれば、Xが「勉強会」に参加する時間は、Y社の指揮命令下に置かれている時間、すなわち労働基準法上の労働時間に該当すると解するのが相当である。なお、「勉強会」の日時についてXの予定を考慮して決められたり、Xの都合により日程を変更したりしたこともあることによって、上記判断は左右されない。
2 勉強会の所要時間について、B主任は30分程度と証言し、Xは45分程度と供述する。証拠によれば、平成29年11月1日実施の「勉強会」は15分間であったと認められることを踏まえると、B主任が証言する30分の限度で認めるのが相当である。
勉強会や研修の労働時間性については昔から争点となってきましたが、多くの場合、参加・出席が任意であると評価できるかが鍵となります。
労働時間に関する問題は、事前に顧問弁護士に相談をして対応することを強くおすすめします。