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今日は、休職命令の無効と退職無効地位確認等請求に関する裁判例を見てみましょう。
タカゾノテクノロジー事件(大阪地裁令和2年7月9日・労判ジャーナル105号38頁)
【事案の概要】
本件は、医療機器等の製造、販売等を目的とするY社の従業員であったXが、Y社から休職期間満了を理由に退職扱いとされたが、その前提となる休職命令自体が無効であり、Xは退職とならないなどと主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、労働契約に基づき、出勤停止及び休職命令以降の未払賃金+遅延損害金の支払、また、Y社がY社の従業員によるXに対する性的言動を把握した後も配置転換等の適切な措置を取らなかったためにXが適応障害に罹患し、休業を余儀なくされたとして、不法行為又は債務不履行に基づき、休業損害等計412万3384円+遅延損害金の支払を求める事案である。
【裁判所の判断】
XがY社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
Y社は、Xに対し、582万3803円+遅延損害金を支払え。
Y社は、Xに対し、令和元年7月から令和2年3月まで毎月26日限り月額26万3640円+遅延損害金を支払え。
Y社は、Xに対し、令和2年4月から本判決確定の日まで毎月26日限り月額26万3640円+遅延損害金を支払え。
【判例のポイント】
1 Xの欠勤が続いていたわけではなかった。B産業医は、Xが適応障害というより、うつ病等他の何らかの精神疾患を発症している疑いがあるとの所見を持っていたけれども、平成29年8月17日、Xと面談した結果、「今、病気の症状は感じられなかった。現時点で、僕がXさんに対して就業制限とかアクションを起こすことはない。」旨述べており、その趣旨は、時短勤務や勤務配慮の必要がないというものであって、B産業医の判断を前提とすると、仮にXが何らかの精神疾患を発症していたとしても、時短勤務等の必要もない状況であり、そうである以上、Xが更に欠勤する必要がある状況ではなかった。加えて、B産業医は、上記面談時点で、M医師がXを診断した場合、何もないと言われると考えており、Y社が本件各受診命令において、Y社担当者立会い等を条件としていたのも、M医師が診断した場合、その診断の当否はともかく、Xの意向を尊重して、適応障害等の精神疾患を再発又は発症していない(あるいは治癒している)との判断がされるものと考えていたためと推測される。そうすると、現にXの欠勤が続いている状況ではなかった上、産業医及び主治医ともXが欠勤する必要があるとは考えていなかったのであるから、Xが私傷病により長期に欠勤が見込まれる、又はそれに準ずる事情があると認めることはできない。
2 Y社における賞与は、人事考課等を経て初めて具体的な権利として発生するものであるから、退職扱いがなければ、労働契約上確実に支給されたであろう賃金には当たらない。
主治医及び産業医がともに欠勤の必要性を否定している場合において、それでもなお休職命令を発することは根拠がないと判断されてもやむを得ません。
非常に判断が難しい分野ですので、顧問弁護士に相談することをおすすめします。