解雇341 自家用車への不正給油と懲戒免職処分(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、自家用車への不正給油と懲戒免職処分に関する裁判例を見てみましょう。

津市事件(津地裁令和2年8月20日・労判ジャーナル105号28頁)

【事案の概要】

Xは、津市の職員であるが、公用車の自動車燃料給油伝票を用いて、Xの自家用車に不正に給油したことを理由に、津市長Aから懲戒免職処分を受け、更に、三重県市町総合事務組合管理者Cから、退職手当等の全額を支給しないこととする退職手当支給制限処分を受けた。
本件は、Xが、津市に対し、本件免職処分が違法であると主張して、その取消しを求める(第1事件)とともに、被告組合に対し、本件制限処分が違法であると主張して、その取消しを求める(第2事件)事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 各非違行為のうち、最も重大な非違行為である非違行為1について見ると、津市の参事であったXは、平成26年8月から平成28年11月までの間に63回にわたって、X車両を使用していたにもかかわらず、給油伝票に公用車の車両番号等の虚偽の記載をして、給油業者及び津市の担当職員を欺罔し、X車両に不正に給油を受け、津市に27万0831円の損害を与えたことが認められる。そして、津市においては、私用車を利用し、その使用料を請求できるのは、当該職員が公用車を利用することが困難な場合等に限定されており、Xの職場の公用車の配備状況からすれば、Xは、X車両を公務に利用する許可を受けて、その使用料を津市に請求することはできなかったのである。
このように、Xは、給油伝票に虚偽の記載を行うという積極的な欺罔行為によって、本来請求し得ないX車両のガソリン代を津市に支出させているのであり、この行為態様やその期間の長さ等に鑑みれば、これは相応に重い非違行為であるというべきであり、本件指針にいう詐取に該当するものであると解される。

2 以上のとおり、Xの非違行為1の態様は相応に悪質なもので、その動機に特段酌むべき事情があるともいえず、Xの地位に照らすと、この非違行為1が公務に及ぼす影響も決して軽視できるものではない。これらの事情を勘案すると、Xがその勤務状況について高い評価を得ていたこと、Xが非違行為の後には反省の態度を示し、津市のために勤務をしていること、Xは全額の被害弁償をしていることなどのXに有利な事情を勘案した上で、免職処分を選択するに当たっては特に慎重な配慮を要することを踏まえても、津市長の判断は、その裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものと認めることはできない。

裁判官によっては、相当性の要件で解雇の有効性を否定することもあり得るかなと思います。

ときどき「え、まじで!?これでも解雇無効なの?」と思ってしまう裁判例を見かけますので、油断はできません。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。