Monthly Archives: 1月 2021

本の紹介1114 誰も教えてくれなかった金持ちになるための濃ゆい理論(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

経済評論家の上念司さんの本です。

帯には「マイホーム、高級車、ブランド物・・・『地位財』を貯め込んでも、一生満たされることはない。自分の欲望の本質を見極めろ!」と書かれています。

まったく同感。

物で幸福度が上がらない人にとっては、これらの購入は、お金の無駄遣い以外の何物でもありません。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

何度も言いますが、これまで平均で10年に一度の割合で経済危機が来ています。それもリーマンショック級のデカいやつです。つまり、10年を超えるような長期計画というのはよほど慎重に余裕をもって立てなければなりません。住宅ローンの返済計画に代表される私たちの人生設計は甘すぎます。・・・現状が永久に続くと仮定してギリギリ逃げ切れる計画なんて脆弱すぎる。」(163~164頁)

35年間、平穏に暮らせるという前提を本当に信じているのでしょうか。

これだけ頻繁に「危機」に直面しているのに・・・。

10年後どころか来年どうなっているかもよくわからない世の中です。

昭和時代の常識は、令和時代の非常識だということを強く認識する必要があります。

従業員に対する損害賠償請求8 退職従業員に対する労基法16条適用の可否(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、退職した日雇従業員の不動産取引損金補てん合意の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

P興産元従業員事件(大阪高裁令和2年1月14日・労判1228号87頁)

【事案の概要】

本件は、Xとの間で不動産取引に関してY社に生じた損金をXが補填する旨の合意をしたY社が、本件合意により補填されるべき損金239万9835円が生じたと主張して、Xに対し、本件合意に基づき、上記損金+遅延損害金の支払を求める事案である。

原審はY社の請求を全部認容したところ、Xがこれを不服として本件控訴を提起した。

【裁判所の判断】

原判決を取り消す。

Y社の請求を棄却する。

【判例のポイント】

1 Xは労働契約に基づきY社に対して業務提供をしていたから、XとY社との権利義務関係については、労働基準法の適用を受ける。そして、同法16条は、「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」と規定しているところ、本件合意は、その成立時期がXの退職直後であるものの、使用者が労働契約関係にあった労働者に退職後も上記労働契約に付随して努力する義務を負わせた上、将来Y社に損害が生じた場合には、事情の如何を問わずその全額の賠償を約束させるものにほかならず、実質的には、上記労働基準法の規定の趣旨に反するものである。

2 XがY社に取引を勧めたのは、本件覚書記載の3物件のうち愛知県C物件のみであり、本件不動産及びL物件については、Xが入札の可否に関する判断をしたわけではなく、その他、Y社に生じた損金を補填しなければならないような合理的理由を何ら見出すことはできない

3 本件合意は、上記3物件の転売による利益はY社が取得することを前提としながら、損金が生じた場合はその全額をXに負担させるというものであり、極めて不公平で一方的な内容のものというほかない

4 本件覚書は、Y社に一方的に有利で、かつ、Xに一方的に不利益な内容であって、既にY社を退職していたXが本件覚書に係る本件合意をする合理的理由を何ら見出せないにもかかわらず、Xが本件覚書に署名押印したのは、これを拒否した場合にX及び当時Y社に就労中の妻Mに加えられることが想定されるY社代表者及び関係者からの報復を恐れたためであると解するのが自然であり、これに沿う控訴人の供述は信用できる。
したがって、本件合意は、Xの自由意思によるものとは到底いえないというべきである。

担当する裁判官によって、こうも判断が異なるものかと感じます。

親と裁判官は選べません。

だからこそリスクヘッジのためにも、日頃から顧問弁護士に相談することを習慣化しましょう。

本の紹介1113 人生攻略ロードマップ(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

サブタイトルは、「『個』で自由を手に入れる『10』の独学戦略」です。

著者のテーマは「人生においてあらゆる自由度を最大化する」とのこと。

すなわち、金銭的な自由、時間的な自由、精神的な自由、身体的な自由。

これらの自由を手にするために著者が行ってきたことがまとめられています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

私は年間2000万円以上も知識や経験への自己投資をしています。その理由は、『無知がゆえに損をするのは絶対に嫌』だからです。無知は恐ろしいものです。知識がないと『損をする』どころか、『損をしていること』にすら気づかないということも普通に起こり得ます。」(49頁)

損をしていることに気づかないことは、ある意味、幸せかもしれませんが。

いまやほとんどのことは検索すればわかります。

そのため、「知らない」というのは「知りたいと思わない」とほぼ同義です。

調べないし、知っている人に聞かない。

そりゃ、どう考えたって損しますわ。

同一労働同一賃金17 通勤手当の相違と同一労働同一賃金(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、通勤手当の相違を不合理とし、引っ越し作業中の破損への賠償金負担等も判断した裁判例を見てみましょう。

アートコーポレーション事件(横浜地裁令和2年6月25日・労経速2428号3頁)

【事案の概要】

本件は、引越関連事業を主な事業とする株式会社であるY社との間で雇用契約を締結し、勤務していたXらが、Y社に対し、次の(1)ないし(6)の各請求をするとともに、Y社の企業内労働組合であるZ組合に対し、次の(6)の請求をする事案である。
(1)Xらが、未払の時間外割増賃金等がある旨主張して、雇用契約に基づき、各Xらの別紙集計表(原告主張版)E欄記載の各未払残業代+遅延損害金の支払の請求
(2)Xらが、Y社に引越事故責任賠償金名目で負担させられた金員について、法律上の原因を欠く旨主張して、不当利得に基づき、X1が24万9500円、X3が37万1500円、X2が26万4500円の各返還+遅延損害金の支払の請求
(3)X1及びX2が、未払の通勤手当がある旨主張して、雇用契約に基づき、未払の通勤手当として、X1が38万3120円、X2が13万円の各支払+遅延損害金の支払の請求。なお、X2については、予備的に、アルバイトに通勤手当を支給しない旨の規定は労働契約法20条(平成30年7月6日法律第71号による改正前のもの。以下同じ。)に違反すると主張して、不法行為に基づき、損害賠償金13万円(通勤手当相当額)+遅延損害金の支払の請求
(4)X3が、Y社からは業務用携帯電話の支給がなく、個人で業務専用の携帯電話を使用していたが、この携帯電話料金はY社が負担すべきであると主張して、不当利得に基づき、4万9563円の返還+遅延損害金の支払の請求
(5)労基法114条に基づき、本件提訴日である平成29年10月10日から2年以内の上記未払割増賃金等と同額とXらが主張する付加金(X1につき38万2696円、X3につき56万3629円、X2につき52万1953円)の支払+遅延損害金の支払の請求
(6)Xらが、XらはZ組合に加入しておらず、組合費の控除について同意していないのに、賃金から組合費の控除が行われ、これがZ組合に支払われていたと主張して、Y社に対しては、雇用契約に基づき、未払の賃金として、平成27年3月分以降に賃金から控除された金員(X1が1万7000円、X3及びX2が各2万4000円)の支払+遅延損害金の支払の請求。
Z組合に対しては、不当利得に基づき、入社時から退職時までに賃金から控除されてZ組合に支払われた金員(X1が5万3000円、X3が7万3000円、X2が4万8000円)の各返還+遅延損害金の支払の請求

【裁判所の判断】

(1)Y社は、X1に対し、29万6517円+遅延損害金を支払え。
 (2)Y社は、X1に対し、24万9500円+遅延損害金を支払え。
 (3)X1のY社に対するその余の請求をいずれも棄却する。
(1)Y社は、X3に対し、31万6746円+遅延損害金を支払え。
 (2)Y社は、X3に対し、37万1500円+遅延損害金を支払え。
 (3)X3のY社に対するその余の請求をいずれも棄却する。
(1)Y社は、X2に対し、47万0070円+遅延損害金を支払え。
 (2)Y社は、X2に対し、26万4500円+遅延損害金を支払え。
 (3)X2のY社に対する通勤手当に係る主位的請求を棄却する。
  Y社は、X2に対し、13万円+遅延損害金を支払え。
 (4) 原告X2の被告会社に対するその余の請求をいずれも棄却する。
 XらのZ組合に対する請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 Y社通勤手当支給規程によれば、通勤手当の受給にはその申請が必要であり、支給漏れがある場合に遡って受給することができるのは過去3か月分に限定されるところ、X1がこの通勤手当の受給申請をしておらず、かつ、X1の本訴請求に係る通勤手当が上記遡及可能期間を徒過していることは明らかである。これに対し、X1は、a支店においては、被告通勤手当支給規程を含む就業規則は、X1を含む労働者に周知されておらず、Y社通勤手当支給規程に定められた受給申請の手続をX1が履践していないことを理由に、Y社が通勤手当の支給を拒絶することは権利の濫用であり認められないなどと主張するが、Y社においては、少なくとも新入社員研修の際には、通勤手当の申請手続が説明されており、通勤手当制度の存在及びその受給のための手続が周知されていないということはできないし、Y社において、通勤手当について従業員に対し虚偽の事実を告げたり、通勤手当の申請を行わないよう不当な圧力を加えたりしたという事情も特段うかがわれないことを踏まえれば、X1に通勤手当を支給しなかったことを権利の濫用などということはできない
したがって、X1の通勤手当の請求は理由がない。

2 X2は、正社員等とアルバイトとの間で通勤手当の支給に関して相違を設けることは不合理であり、労働契約法20条に違反する旨主張し、主位的に雇用契約に基づく賃金として、予備的に不法行為に基づく損害賠償として、通勤手当ないしそれと同額の損害賠償を請求する。
この点について検討すると、同条が有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違は「不合理と認められるものであってはならない」と規定していることや、その趣旨が有期契約労働者の公正な処遇を図ることにあること等に照らせば、同条の規定は私法上の効力を有するものと解するのが相当であるが、有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が同条に違反する場合であっても、同条の効力により当該有期契約労働者の労働条件が比較の対象である無期契約労働者の労働条件と同一のものとなるものではないと解するのが相当である。
そうすると、非正規従業員給与規程には、アルバイトに通勤手当を支給すると解釈する根拠となる規定がない以上、アルバイトであるX2に通勤手当を支給することが同人の労働契約の内容となるとはいえないから、その余の点を検討するまでもなく、X2の雇用契約に基づく賃金請求は認められない。

3 X2の予備的請求である、不法行為に基づく通勤手当と同額の損害賠償請求の可否について検討する。労働契約法20条にいう「期間の定めがあることにより」とは、有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が期間の定めの有無に関連して生じたものであることをいうものと解するのが相当であるところ、本件において、通勤手当に係る労働条件の相違は、正社員とアルバイトとでそれぞれ異なる就業規則(給与規程)が適用されることにより生じているものであることに鑑みれば、当該相違は期間の定めの有無に関連して生じたものであるということができる。したがって、正社員とアルバイトの通勤手当に関する労働条件は、同条にいう期間の定めがあることにより相違している場合に当たるということができる。
そして、Y社における通勤手当は、通勤に要する交通費を補填する趣旨で支給されるものと認められるところ、労働契約に期間の定めがあるか否かによって通勤に要する費用が異なるものではない。また、職務の内容及び配置の変更の範囲が異なることは、通勤に要する費用の多寡とは直接関連するものではない。その他、通勤手当に差異を設けることが不合理であるとの評価を妨げる事情もうかがわれない。
したがって、Y社における、正社員とアルバイトであるX2との間における通勤手当に係る労働条件の相違は、労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するのが相当であり、このような通勤手当制度に基づく通勤手当の不支給は、X2に対する不法行為を構成する。

通勤手当については上記判断で落ち着いています。

まだ対応していない会社は顧問弁護士に相談しながら速やかに制度変更に着手してください。

本の紹介1112 FIRE最強の早期リタイア術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

タイトルのとおりの内容です。

早期リタイアを目指している方は読んでみましょう。

早期リタイアするかどうかはさておき、多くの経済的に豊かな人たちが認識している内容です。

帯には「30代で経済的自立を達成するための全技術」と書かれます。

才能ではなく技術なのだとわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

家は優れた投資になり得ますが、それは不動産業者、政府、保険会社、銀行にとっての話にすぎません。持ち主を除いた全員にとっての話なのです。持ち主にとっては、家は最悪の投資資産です。」(105~106頁)

貧しい人はモノを買う。中産階級の人は家を買う。お金持ちは投資資産を買う。」(109頁)

所有か賃貸かという議論はもうそろそろ飽きたのでおいておきます。

その人の好きにすればいいのです。

「消費」と「投資」を意識して分けるという考えは、生きていく上で非常に有益です。

時間もお金も、なんとなく使うのではなく、このいずれに該当するかを考えると、使い方が変わってきます。

自分の商品価値を高めることに時間もお金も使いましょう。

配転・出向・転籍45 育休中の所属チーム消滅と復帰後の配置変更の不利益取扱い該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、育休中の所属チーム消滅と復帰後の配置変更等の不利益取扱い該当性に関する裁判例を見てみましょう。

アメックス(降格等)事件(東京地裁令和元年11月13日・労判1224号72頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の個人営業部の東京のべニューセールスチームのチームリーダーとして勤務していたX
が、産前産後休業及び育児休業の取得を理由に、チームリーダーの役職を解かれ、アカウントマネージャーに任命されるなどの措置を受けたことが、均等法9条3項及び育介法10条、Y社の就業規則等又は公序良俗(民法90条)に違反し人事権の濫用であって違法・無効であるとして、①主位的に、上記措置がとられる前のY社個人営業部の東京のべニューセールスチームのチームリーダー又はその相当職の地位にあることの確認を求め、②予備的に、Y社個人営業部のアカウントマネージャーとして勤務する労働契約上の義務が存在しないことの確認を求めるとともに、③不法行為又は雇用契約上の債務不履行に基づき、損害賠償金2859万2433円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

本件訴えのうち、Y社の個人営業部の東京のベニューセールスチームのチームリーダー(バンド35)又はその相当職の地位にあることの確認を求める部分を却下する。

Xのその余の請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 Xが育児休業等による休業中にY社からチームリーダーの役職を解く旨の辞令やその連絡を受けたことはなく、平成27年8月の時点では、Xが産前休業を取得するに当たり、Xチームに仮のチームリーダーが置かれたにすぎず、Xからチームリーダーの役職を解く措置がとられたとみることはできない。また、平成28年1月には、Xチームが消滅しているけれども、他方で、Xのジョブバンドは同月以降もバンド35のままであり、Y社の人事制度の下では特定のジョブバンドに対応する主な役職が設けられていて、Xが実際に復帰した際にはバンド35に相当する役職に就くことが予定されていたということができる。そうすると、Xチームが消滅した一事をもって、Xからチームリーダーの役職を解かれたとか、Xの所属が不明な状態に置かれたとみることはできず、他にそのような評価を基礎付ける事実を認めるに足りる証拠はない

2 均等法11条の2及び育介法25条所定のいわゆるマタハラ防止措置義務は、相談や対応体制の整備などを中心とする内容のもので、国が事業者に対して課した公法上の義務にすぎず、労働者と使用者との法律関係を直接規律するものではないから、これら規定をもって直ちにその内容に対応する私法上の義務がY社とXとの間に生じるとはいえない。上記各規定の存在は上記私法上の注意義務発生の根拠として考慮すべき一つの要素とはなろうが、上記私法上の注意義務を措定するについては、当該具体的事案に照らして、発生した権利ないし法益侵害の内容や程度、使用者の結果に対する予見可能性を前提とした上での結果回避可能性などを総合的に勘案して検討すべきである。

上記判例のポイント2は、労働事件では基本的な考え方ですので、理解しておきましょう。

実際の対応については顧問弁護士に相談しながら慎重に行いましょう。

本の紹介1111 叩かれるから今まで黙っておいた「世の中の真実」(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

ザ・ひろゆきさんの本という感じの内容です。

普段、ユーチューブ等でお話されていることをまとめたものです。

感覚でものを言うのではなく、データによって主張を裏付けることの大切がわかる、とてもいい本です。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

経団連の調査では、企業が新卒者を採用するにあたって『選考時に重視する要素』に挙げている1位は、16年連続で『コミュニケーション能力』だったそうです。個人のスキルより、みんなと一緒にうまくやれることを求めているわけです。」(149頁)

だそうですよ(笑)

ある程度の素養があれば、スキルはあとから身に付けられますが、対人能力については、持ち合わせているものが大半ではないでしょうか。

得意な人は何もしなくても得意ですし、その逆もまたしかり。

世の中の悩み事の大半は、対人関係に関することです。

たった1人で仕事を進めることなどほとんどない以上、コミュニケーション能力が重要であることは言うまでもありません。

賃金205 職務手当が固定残業代として認められるためには?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、固定残業代制度の有効性と割増賃金等請求に関する裁判例を見てみましょう。

サン・サービス事件(名古屋高裁令和2年2月27日・労判1224号42頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社に対し、①雇用契約に基づき、未払残業代、未払い給与、②付加金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、577万4788円+遅延損害金を支払え

Y社はXに対し、付加金370万4451円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 Xは、料理長としての仕事のみならず、フロント業務の一部や客の送迎をも行っていたこと、本件店舗を含むホテル内には従業員の休憩施設がないことなどに照らすと、Xが調理等に従事していない時間があったとしても、それは勤務から完全に解放された休憩時間ではなく、手待ち時間とみるのが相当である。

2 労基法37条5項により割増賃金の基礎から除外される通勤費は、労働者の通勤距離又は通勤に要する実際費用に応じて算定される手当と解される。本件提案書によれば、Xに支給される通勤費は、日額625円として月額1万5000円が支給されることになっているところ、本件提案書作成時、Xは千葉県に居住しており、勤務開始後の実際の通勤距離や通勤に要する実際費用に応じて定められたものとは認められず、労基法37条5項の通勤手当に当たるとは認められない

3 Y社は、XとY社間の雇用契約書である本件提案書に、「勤務時間」として「6時30分~22時00分」と記載し、「休憩時間は現場内にて調整してください。」としていた上、勤務時間管理を適切に行っていたとは認められず、Xは、平成27年6月から平成28年1月まで、毎月120時間を超える時間外労働等をしており、同年2月も85時間の時間外労働等をしていたことが認められる。その上、Y社は、担当の従業員が毎月Xのタイムカードをチェックしていたが、Xに対し、実際の時間外労働等に見合った割増賃金(残業代)を支払っていない。
そうすると、本件職務手当は、これを割増賃金(固定残業代)とみると、約80時間分の割増賃金(残業代)に相当するにすぎず、実際の時間外労働等と大きくかい離しているものと認められるのであって、到底、時間外労働等に対する対価とは認めることができず、また、本件店舗を含む事業場で36協定が締結されておらず、時間外労働等を命ずる根拠を欠いていることなどにも鑑み、本件職務手当は、割増賃金の基礎となる賃金から除外されないというべきである

仕事柄、労働時間が長くなってしまうことは容易に想像できますが、労務管理の基本を押さえていなかったがために、ちゃんとやっていれば支払う必要のない支出を強いられることになります。

事前に顧問弁護士の指導を受けておけば多くの類似トラブルは回避できます。

本の紹介1110 非常識な思考法(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今年も一年よろしくお願いいたします。

今日は本の紹介です。

著者は、函館のケーキ店のオーナの方です。

函館の小さな街の片隅に行列のできるお店を作った方法が書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『売りたいものと売れるものは違う』ということも知っておきたいことの1つです。たとえば、魚釣りをする時に自分が釣りたい魚があるならば、その魚の好きな餌をつけないとその魚は釣ることができません。これは商売においても一緒です。いくら自分が『これを売りたい!』という商品があっても、お客様が欲しいと思う商品でないと売れないのです。」(27~28頁)

多くの人が陥る落とし穴です。

自分が売りたいものと顧客が欲しいものは必ずしも一致しません。

商品に対する思い入れが強ければ強いほど、この落とし穴にはまります。

また、業界にいる時間が長くなればなるほど、顧客の視点がどんどん失われていきます。

このことを意識して、ニーズを客観視することがとても大切です。