おはようございます。
今日は、育休中の所属チーム消滅と復帰後の配置変更等の不利益取扱い該当性に関する裁判例を見てみましょう。
アメックス(降格等)事件(東京地裁令和元年11月13日・労判1224号72頁)
【事案の概要】
本件は、Y社の個人営業部の東京のべニューセールスチームのチームリーダーとして勤務していたX
が、産前産後休業及び育児休業の取得を理由に、チームリーダーの役職を解かれ、アカウントマネージャーに任命されるなどの措置を受けたことが、均等法9条3項及び育介法10条、Y社の就業規則等又は公序良俗(民法90条)に違反し人事権の濫用であって違法・無効であるとして、①主位的に、上記措置がとられる前のY社個人営業部の東京のべニューセールスチームのチームリーダー又はその相当職の地位にあることの確認を求め、②予備的に、Y社個人営業部のアカウントマネージャーとして勤務する労働契約上の義務が存在しないことの確認を求めるとともに、③不法行為又は雇用契約上の債務不履行に基づき、損害賠償金2859万2433円+遅延損害金の支払を求める事案である。
【裁判所の判断】
本件訴えのうち、Y社の個人営業部の東京のベニューセールスチームのチームリーダー(バンド35)又はその相当職の地位にあることの確認を求める部分を却下する。
Xのその余の請求をいずれも棄却する。
【判例のポイント】
1 Xが育児休業等による休業中にY社からチームリーダーの役職を解く旨の辞令やその連絡を受けたことはなく、平成27年8月の時点では、Xが産前休業を取得するに当たり、Xチームに仮のチームリーダーが置かれたにすぎず、Xからチームリーダーの役職を解く措置がとられたとみることはできない。また、平成28年1月には、Xチームが消滅しているけれども、他方で、Xのジョブバンドは同月以降もバンド35のままであり、Y社の人事制度の下では特定のジョブバンドに対応する主な役職が設けられていて、Xが実際に復帰した際にはバンド35に相当する役職に就くことが予定されていたということができる。そうすると、Xチームが消滅した一事をもって、Xからチームリーダーの役職を解かれたとか、Xの所属が不明な状態に置かれたとみることはできず、他にそのような評価を基礎付ける事実を認めるに足りる証拠はない。
2 均等法11条の2及び育介法25条所定のいわゆるマタハラ防止措置義務は、相談や対応体制の整備などを中心とする内容のもので、国が事業者に対して課した公法上の義務にすぎず、労働者と使用者との法律関係を直接規律するものではないから、これら規定をもって直ちにその内容に対応する私法上の義務がY社とXとの間に生じるとはいえない。上記各規定の存在は上記私法上の注意義務発生の根拠として考慮すべき一つの要素とはなろうが、上記私法上の注意義務を措定するについては、当該具体的事案に照らして、発生した権利ないし法益侵害の内容や程度、使用者の結果に対する予見可能性を前提とした上での結果回避可能性などを総合的に勘案して検討すべきである。
上記判例のポイント2は、労働事件では基本的な考え方ですので、理解しておきましょう。
実際の対応については顧問弁護士に相談しながら慎重に行いましょう。