Monthly Archives: 1月 2021

本の紹介1119 60歳からヘタれない生き方(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

著者は、相国寺、金閣寺、銀閣寺の住職です。

ときどきこのような本を読むと初心に帰ることができます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

禅では、ものごとにとらわれ、それに執着してしまうことを何よりも嫌います。それが心の自由を奪うからです。」(41頁)

全く同感。

執着は依存につながり、依存は弱さとなります。

何事にも執着せず、「別になんだっていい」という感覚で生きると、気が楽です。

5年も10年も前のことをいまだに根に持っているとか、絶対に許さないなどという感情は、自分を苦しめるだけで、何の得にもなりません。

職業柄、いろんなことに執着・固執している人を見ますが、そこから抜け出せれば、もっと生き易いだろうに、とよく思います。

賃金206 賃金規程変更の正しいやり方(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、賃金計算において電車遅延時の遅延分や業務中の通院時間を非控除とした扱いの廃止が認められた裁判例を見てみましょう。

パーソルテンプスタッフ事件(東京地裁令和2年6月19日・労経速2429号45頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であるXが、Y社に対し、(1)Y社が、電車が遅延した際に遅刻した時間分の賃金を控除しない扱い(以下「遅延非控除」という。)をする労使慣行を変更して、平成30年7月以降、遅刻した時間分を賃金から控除する扱いとしたこと(以下「本件変更①」という。)について、その無効の確認を求め、(2)Y社が、就業時間中の通院について通院時間分の賃金の一定額を控除しない扱い(以下「通院非控除」という。)をする旨の賃金規程の規定を削除して、同月以降、通院時間分を賃金から控除する扱いに変更したこと(以下「本件変更②」という。)について、その無効の確認を求め、(3)本件変更①及び②の対象となるY社の全従業員に対する、これらの変更が不法行為による不利益変更であった旨の説明及び謝罪と、Y社の費用負担での就業規則等の回復等を求め、(4)Y社が同年1月から人事考課の評価項目を変更したこと(以下「本件変更③」という。)に関して、Xが、無期転換雇用後も含めて、グラフィックデザイン・DTPに関する業務(以下「本件業務」という。)を行う職種限定の技術社員としての雇用契約上の地位の確認を求め、(5)Xが平成31年4月25日以降、基本給として24万9340円の支払を受けることができる地位にあることの確認を求め、適正な人事考課に基づき昇給が行われたことを前提として、同日以降毎月25日限り各月の給与の昇給額分7140円,令和元年6月20日以降毎年12月20日及び6月20日限り同様の賞与の昇給額分7140円+遅延損害金、(6)今後の雇用契約に関して、労働基準法15条並びに労働契約法3条及び4条に基づき、上記(4)及び(5)の地位にあることが明記された雇用契約書を取り交わすことを求めるものと解される事案である。

【裁判所の判断】

本件訴えのうち、就業規則の対象となるXを含む全ての従業員に対し、Y社による不法行為による不利益変更であった説明及び謝罪、就業規則及び人事システム等の回復及び変更に関する役務の提供並びにこれに係る費用負担を求める部分、無期転換雇用後も含めてグラフィックデザイン・DTPに関する業務を行う職種限定の技術社員としての雇用契約である地位の確認を求める部分、平成31年4月25日から24万9340円を基本給として被告から賃金の支給を受ける地位にあることの確認を求める部分、本件口頭弁論終結日の翌日以降毎月25日限り7140円、毎年12月20日及び6月20日限り7140円+遅延損害金の支払を求める部分をいずれも却下する。

Xのその余の請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 本件変更②は、就業規則の一部である賃金規程の変更により原告の労働条件を変更するものであるから、本件変更②が有効であるためには、労働契約法10条の要件を満たす必要がある。
そこで検討すると、Y社は、本件変更②を行うに際して、Y社の従業員に対し、本件変更②の説明資料を配布するなどして説明を行った上で、本件変更②を反映した賃金規程をY社のイントラネットで公開し、Y社の従業員が事務所からアクセスして知り得る状態に置き、また、従業員からの求めがあれば、賃金規程を送付するなどしていたのであって、同賃金規程はY社の従業員に周知されていたといえる。
そして、通院非控除については、本来は支払われない通院した時間分の賃金を通院という事情に鑑みY社の従業員に有利に恩恵的に支払ってきた扱いであると推測されるところ、通院非控除を廃止することは、本来的な賃金の支払のあり方に変更するものにすぎない。また、Y社の従業員数と通院非控除の適用回数の実績からすれば、平成29年及び平成30年では、それぞれ最も従業員数が少ない月の従業員数を前提としても、従業員1人に対し遅延非控除が適用されるのは、全従業員でも、Xと同じJC職の従業員でも、せいぜい年1回程度にすぎず、しかも、通院非控除自体、1日の所定労働時間の3分の1まで、賃金計算期間内の回数にして5回、時間にして5時間未満までというごく限定された範囲内で賃金を控除しない扱いであって、本件変更②によりY社の従業員に与える影響は相当程度小さいものといえる。
そして、本件変更②は、Y社のグループ会社内の人事制度を統一するために行われたものであり、これがY社及びそのグループ会社の間の事務処理の効率化に資することは明らかであるから、本件変更②を行う必要があり、また、その当時、Y社のグループ会社の中で、通院非控除が存在した会社の方が相当少数であったから、通院非控除を廃止する方向で統一することも相当であったといえる。
また、Y社には労働組合が存在しないところ、Y社は、本件変更②についても、各事業所の職場代表者の意見を聴取しているが、反対する意見はなかった
その他、Y社は、上記の本件変更②による不利益の程度にもかかわらず、2年間にわたり遅延非控除を適用する経過措置を設けて、その不利益の緩和を図っている
以上によれば、Y社は、本件変更②について従業員に周知している上、本件変更②についてはY社のグループ会社間の人事制度の統一に伴う必要性及び相当性があり、また、本件変更②による不利益は相当程度小さく、経過措置によりその不利益も更に緩和され、職場代表者の意見聴取も行われていることからすれば、本件変更②は合理的であり、有効であるというべきである。

模範解答のような準備のしかたです。ここまでしっかりやれば危なげないですね。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介1118 頑張らなくても意外と死なないからざっくり生きてこ(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

著者は、歌舞伎町のゲイバー店員の方です。

帯には「結局、本気で空気読めないヤツがいちばん幸せに生きられるのよね。あー、腹立つ💛」と書かれています(笑)

はい、そのとおりです。

この世の中、いろいろ生き辛いと感じている方は読んでみましょう。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ハッキリ言うわ。チームで仕事をするとき、人間に興味がないやつは一切成長しない。『この人は今これをやっているから、自分はこっちをやっておこう』みたいに流れをつかみながら仕事するのって、人に興味がないとできないから。」(134頁)

みなさん、お気づきのとおり、こういうのは、もともとできる人と、いくら指導・教育されてもできない人に分かれます。

「持って生まれたもの」とまでは言いませんが、現状を把握した上で臨機応変に対応できる人は、最初から何の指導もなく、いとも簡単にできます。

状況を鳥瞰する力、次の展開を想像する力がどこから生まれるのかわかりませんが、「できる人」の特徴であることは間違いありません。

継続雇用制度31 人件費削減の必要から嘱託社員の雇止めは認められるか?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、定年後有期雇用契約を2回更新した元社長補佐に対する更新拒絶の適法性に関する裁判例を見てみましょう。

テヅカ事件(福岡地裁令和2年3月19日・労判1230号87頁)

【事案の概要】

本件は、いわゆる定年後の継続雇用としてY社との間で雇用期間を1年とする有期の雇用契約を締結し、複数回の契約更新をしていたXが、雇用契約が更新されると期待することに合理的理由があったにもかかわらず、Y社がこれを拒絶し、そのことについて客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上も相当でないと主張して、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認するとともに、民法536条2項に基づき、更新拒絶の後の給与支払日である平成30年4月から本判決確定の日まで毎月25日限り従前と同一の労働条件である賃金41万7000円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 本件継続雇用制度の運用実態を前提とすると、本件継続雇用制度に基づき継続雇用されていたY社の従業員は、更新することができない何らかの事情がない限り、契約期間の満了時に、満65歳に至るまでは更新されると期待し、そのことについて合理的理由があると認めるのが相当であり、それはXも例外ではないというべきである。

2 Y社において人件費削減の必要性がないとはいえないとしても、平成29年3月頃以降に業績不振に直面した後、人件費削減以外の方策としてどのような対処が考えられるのか、人件費削減による賃金削減により被る不利益の程度をどう抑制するのかなど、経営再建を図るために必要な経営合理化策と解雇や雇止めを可及的に回避するために採るべき措置を具体的に検討した形跡は証拠上認められない

3 現時点(当審の口頭弁論終結日)では、次の更新があるかどうか、又はその更新後の本件雇用契約に基づく賃金額は未確定であるといわざるを得ず、令和2年3月21日以降にも本件雇用契約が当然に存続し、かつそれに基づく賃金額も定められているとは認められない。したがって、Xの賃金請求については、本判決を言い渡す口頭弁論期日が本件雇用契約上の最後の賃金締日である同月20日の前日である同月19日に指定されていることに鑑み、本件雇用契約に基づく最後の賃金支払日である令和2年3月25日を終期として認める限度で理由があり、上記の終期にかかわらず本判決確定の日までの賃金の支払を請求する部分は理由がない

有期雇用契約の場合であっても、正社員同様、整理解雇の場合には、4要素を考慮してその是非を判断する必要があります。

解雇(雇止め)回避努力が不十分な場合には、本件同様の結論となってしまいます。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。

本の紹介1117 パーソナル・トランスフォーメーション(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

本田直之さんの本です。

サブタイトルは「コロナでライフスタイルと働き方を変革する」です。

もうあの頃には戻れないということを強く意識し、何をどうすればよいのか、著者の見解が述べられています。

非常に共感できる内容です。

いつもそうですが、あとはやるか、やらないか。ただそれだけです。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

アフターコロナでマストになるのは(以前から言い続けていましたが)、複数の収入源だと私は思っています。自分の選択肢を増やしておくことです。副業でなく複業です。また、クリエイティブな人間にしかできない仕事を増やしていく。・・・考え方をリセットすることです。そうでないと危ない。会社にぶら下がっている、組織に属しているから安心だと思った瞬間に、使い捨てられる可能性が出てくる。」(121頁)

このご時世、どこかの組織に属しているから生涯安泰だなんて思っている人がいるのでしょうか?

違いは、準備をしているかどうか、ただそれだけです。

絶対に沈没しない船などありません。

船の大きさは関係ないことはタイタニック号が証明してくれています。

いつどうなるか全く先が読めない時代だからこそ、人が休んでいるときに、コツコツ準備をするのです。

労働災害105 精神疾患未発症でも長時間労働について慰謝料請求が認められる?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、懲戒処分の適法性ならびに安全配慮義務違反の有無に関する裁判例を見てみましょう。

アクサ生命保険事件(東京地裁令和2年6月10日・労判1230号71頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であるXが、Y社に対し、①Xに対する懲戒戒告処分は無効であるとして、不法行為責任に基づく慰謝料+遅延損害金、②Xが上司から受けたパワハラや平成27年5月1日から平成29年9月30日までの間の長時間労働について、Y社が使用者として適切な対応を怠った等として、使用者責任ないし安全配慮義務違反・職場環境配慮義務違反による債務不履行責任に基づく慰謝料+遅延損害金の各支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、10万円+遅延損害金を支払え。

Xのその余の請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 Y社は、遅くとも平成29年3月から5月頃までには、三六協定を締結することもなく、Xを時間外労働に従事させていたことの認識可能性があったというべきである。しかしながら、Y社が本件期間中、Xの労働状況について注意を払い、事実関係を調査し、改善指導を行う等の措置を講じたことを認めるに足りる主張立証はない。したがって、Y社には、平成29年3月から5月頃以降、Xの長時間労働を放置したという安全配慮義務違反が認められる

2 Xが長時間労働により心身の不調を来したことについては、疲労感の蓄積を訴えるX本人の陳述書に加え、抑うつ状態と診断された旨の平成29年4月1日付け診断書があるものの、これを認めるに足りる医学的証拠は乏しい。しかし、Xが結果的に具体的な疾患を発症するに至らなかったとしても、Y社が、1年以上にわたって、ひと月当たり30時間ないし50時間以上に及ぶ心身の不調を来す可能性があるような時間外労働にXを従事させたことを踏まえると、Xには慰謝料相当額の損害賠償請求が認められるべきである。

上記判例のポイント2は注意が必要です。

金額としては大きなものではありませんが、実際、損害賠償請求が認容されていることは軽視すべきではありません。

労災発生時には、顧問弁護士に速やかに相談することが大切です。

本の紹介1116 「人生100年」老年格差(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

サブタイトルは「超高齢社会の生き抜き方」です。

帯には「健康度、脳機能、若々しさ、お金・・・怖いほど格差が広がる時代がやってくる。」と書かれています。

今後ますます格差が広がっていく中でいかに生きていくべきかが書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

老化において、いちばんやっかいなのは、意欲が衰えていくことです。意欲がなくなってくると、何に対してもやる気が湧かず、人にも会いたくないし、家にこもりがちになってきます。・・・つまり、意欲を保つことが、老化を遅らせる大前提になります。意欲レベルの高い人ほど、元気で頭もシャキッとしています。」(39~40頁)

個人的には、意欲と筋力の低下が老化の定義と考えています。

年齢は単なる数字ですから、何の意味もありません。

概して、年齢を重ねるごとにさまざまなことが億劫になっていくものです。

それゆえにますます老化していくというスパイラルに陥ります。

意欲格差がそのまま経済や健康等の格差につながっているように思います。

不当労働行為258 技能実習生が加入した労組との団体交渉における使用者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、外国人技能実習生受入れ事業を行う協同組合が実習生の加入した労組の申し入れた団交に応じないことが不当労働行為に当たらないとされた事案を見てみましょう。

中亜国際共同組合ほか事件(広島県労委令和2年3月13日・労判1227号96頁)

【事案の概要】

本件は、外国人技能実習生受入れ事業を行う協同組合が実習生の加入した労組の申し入れた団交に応じないことが不当労働行為に当たるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為に当たらない

【命令のポイント】

1 本件協同組合はA組合員の座学講習の適正な実施について、技能実習制度の範囲内ではあるが、現実的かつ具体的に決定することができる地位にあったものと認められる。したがって、組合が、A組合員の座学講習の適正な実施のために、本件協同組合に対して話し合いを求めたことには相応の理由があると解される。
もっとも、本件協同組合のA組合員に対する座学講習は、監理団体の業務として行われたものと解される。そして、座学講習は雇用契約の効力の発生の前提として密接に関連するものの、座学講習の受講は労務の提供ではないことから、本件協同組合における座学講習の適正な実施に関する事項は、A組合員の基本的な労働条件等に当たらないと解するのが相当である。

2 本件一時帰国の決定は、本件協同組合の監理団体の業務として行われたものと解される。そして、本件一時帰国は、座学講習の中断を意味するものであり、座学講習の受講は労務の提供ではないことから、A組合員の一時帰国における本件協同組合の対応に関する事項は、A組合員の基本的な労働条件等に当たらないと解するのが相当である、
以上のとおりであるから、本件団体交渉事項について、本件協同組合に労働組合法7条2号の使用者性は認めることはできない

労組法上の使用者性や義務的団交事項に関する判断です。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介1115 人生最後の日にガッツポーズして死ねるたったひとつの生き方(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

吉田松陰、高杉晋作、野村望東尼、ジョン万次郎、坂本龍馬

5人の生き方を通じて、いかに生きるべきかを説いています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

多くの人は、過去は変えられないと嘆き、過去の出来事(トラウマ)にとらわれています。でも、過去は変えることができるのです。過去をジャンプ台にして、最高の未来を生み出したときに、その過去を受け入れることができるからです。龍馬はそれをした。過去は未来が決めるのです。」(239頁)

過去の起きた「事実」それ自体は、タイムマシンが発明されない限り変えようがありません。

しかし、その事実に対する「解釈」は変えることができます。

「あ、あの出来事があったから今の自分がいるんだ」

これは未来が過去の事実の「解釈」に影響を与えている表れです。

今できることを精一杯やることにより未来が作られ、その作られた未来によって過去に対する解釈が変わるのです。

不当労働行為257 団交の打切りが不誠実団交と評価されない場合とは?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、介護老人保健施設で介護職員として勤務してきた組合員を解雇したことが不当労働行為に当たらないとされた事案を見てみましょう。

医療法人健和会事件(大阪府労委令和2年4月13日・労判1229号102頁)

【事案の概要】

本件は、Y法人の設置運営する介護老人保健施設で介護職員として勤務してきた組合員を解雇したことが不当労働行為に当たるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 Y法人がB利用者への虐待行為があったと判断したことには理由があり、かつ、Y法人が虐待行為を重視し、虐待行為を行った職員を解雇することが不合理であるといえないことからすると、29.7.18通知書等に記載されたもののうち、B利用者への虐待の件だけを取り上げてみても、解雇には相応の理由があったというべきである。
・・・したがって、Y法人が、平成29年8月24日をもってF組合員を解雇したことは、組合員であるが故の不利益取扱いには当たらない。

2 Y法人は、本件団交の2日後に、29.8.23解雇通知書を送付しているが、Y法人が、F組合員の処遇についての結論を急いだことに、理由がなかったわけではないといえ、また、組合が、29.7.26団交要求書の要求内容について継続して協議する意向を持っていたかについて疑念が残るといわざるを得ず、これらのことを考え合わせると、Y法人が、本件団交の2日後に29.8.23解雇通知書を送付したことをもって、団交を一方的に打ち切ったとまではいえない

上記命令のポイント2のように、使用者側から団交を打ち切ると不誠実団交の疑いが生じます。

打ち切りの合理的理由があるかどうかについては慎重に判断することが求められますのでご注意ください。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。