おはようございます。
今日は、商品先物取引の歩合登録外務員との契約が、労働基準法16条の「労働契約」にあたらないとされた裁判例を見てみましょう。
岡地事件(東京地裁令和2年1月15日・労経速2419号23頁)
【事案の概要】
本件は、商品先物取引等を業とするY社の外務員であったXが、Y社に対し、雇用契約又は不当利得に基づき、外務員であった期間中に積み立てた身元保証金188万9433円+遅延損害金の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 日本橋支店の投資相談部内には30名程度の歩合外務員が所属していたが、これら歩合外務員の間においては職制上の上下関係はなく、他には事務手続を行う一般社員が数名所属していたのみであって、同部内において歩合外務員に対し強い指揮監督を及ぼすべき組織体制は取られていなかった。このような組織体制の下、Xはインターネット上に個人で開設したサイト等を用いて、自身の裁量に基づき大部分の営業活動を展開しており、営業方法についてXがY社から具体的な指示を受ける場合は限定されていた。業務内容の報告についても、毎営業日に外務員業務日誌を提出していたものの、同日誌に記載された報告内容は、顧客から受注した売買取引の内容及び売買成立の結果に止まるものであり、Xが営業内容や交渉状況等について具体的に記載することや、Y社の責任者が具体的な指導事項を記載することはほとんどなかった。
このように、Xが業務遂行上Y社から受ける指揮監督は、極めて弱いものであったということができる。
2 歩合外務員の多くは、毎営業日、Y社に出社しており、Xも、営業日には概ね午前8時に出社していたが、歩合外務員の出社時刻、退社時刻及び休憩時刻について定めはなく、歩合外務員の中には、午前9時頃に出社したり、昼過ぎに退社したりするものもおり、遅刻、早退又は欠勤を理由として、歩合外務員の固定報酬部分から報酬が控除されることはなかった。先物取引の売買執行の際には日本橋支店内での作業が必要となることや、個々の歩合外務員専用フリーダイヤル用の電話機が日本橋支店内に設置されていたこと等を踏まえると、Xを含む多くの歩合外務員が日本橋支店へ出社していたことは業務の性質を理由とする側面が強く、Y社が指揮監督を及ぼすために勤務場所・勤務時間を強く拘束していたと評価することはできない。
労働者性に関する争いは多くの場合、肯定・否定いずれの要素も混在していますが、本件は、かなり労働者性を肯定しやすい事案ではないかと思います。
労働者性に関する判断は本当に難しいです。業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。