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今日は、面接時の説明と未払賃金等支払請求に関する裁判例を見てみましょう。
社会福祉法人稲荷学園事件(大阪地裁令和2年3月13日・労判ジャーナル101号32頁)
【事案の概要】
本件は、保育士Xが、かつての勤務先であるY社に対し、雇用契約に基づく、平成29年度冬季賞与の未払部分約37万円、平成29年4月から平成30年までの基本給の未払部分合計約2万円、平成29年度夏期及び冬期賞与の未払部分合計1万円、平成30年1月から同年3月までの未払通勤手当合計約1万円の各支払請求のほか、福利厚生の一環として飲食補助費を支払う旨の合意に基づく、飲食補助費2万円の支払請求、さらには、Y社がXに対してパワハラかつ名誉毀損の不法行為に基づく、損害賠償(慰謝料)約106万円の支払請求とともに、民法723条の名誉回復処分としての「謝罪文」と題する書面に署名押印することを求めた事案である。
【裁判所の判断】
通勤手当に関する未払賃金は一部認容
損害賠償等請求は棄却
【判例のポイント】
1 Xは、本件採用面接の際、現Y社代表者から、賞与に関して、前年度には基本給4.4か月分の金員を支払っており、今後も同等の金額の賞与を支払う予定であるなどと告げられたと主張するが、X主張に係る現Y社代表者がしたという発言は、賞与に関する一般的な説明をしたにすぎず、具体的な一定割合の賞与の支払いを確約したものであるとは認め難い。また、就業規則によって労働条件が規律され得ることから、Y社の就業規則の一部を構成する賃金規程上の賞与に関する定めについてみることとしても、「賞与は毎年7月および12月に支給する」とあるものの、具体的な支給額や支給割合を明示するものではないから、本件雇用契約の内容として、Y社はX主張に係る賞与の支払義務を負うものではない。
2 Xは、本件採用面接の際、現Y社代表者から、毎年4月、定期昇給として月額6000円ずつ基本給を増額し、実績が良好であればさらに特別昇給を行うなどと告げられたと主張するが、賞与と同様の観点から、Y社の賃金規程上の定期昇給に関する定めをみることとしても、原則的な年1回の定期昇給とともに、社会情勢あるいはその他諸事情によって定期昇給がされないことがある旨定められているなど、定期昇給の実施についてY社の裁量があり得ることが示されているのであって、具体的にX主張に係る月額2000円の定期昇給の実施を定めたものとはいい難く、Xの主張を基礎付けるものにはなり得ず、ほかにX主張事実を認定するに足りる証拠はないから、本件雇用契約の内容として、Y社はX主張に係る定期昇給に伴う金員の支払義務を負うものではない。
いずれの判断も規程を重視したものです。
賞与も定期昇給も確約されるものではないという社会通念にも合致します。
日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。