同一労働同一賃金15 専任教諭と常勤講師との間の同一労働同一賃金問題(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、長期間継続していた定期昇給の慣行が法的拘束力を有すると判断された裁判例を見てみましょう。

学校法人明泉学園事件(東京地裁令和元年12月12日・労経速2417号3頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、平成3年4月1日、Y社との間で期間の定めのある教員である専任講師(常勤講師)として労働契約を締結して勤務を継続したが、上記労働契約の期間の定めは無効であるなどとして、Xは期間の定めのない教員である専任教諭の地位にあった旨主張し、Y社に対し、労働契約に基づき、平成28年9月から平成30年3月まで期間の定めのない専任教諭として別紙1専任教諭賃金表の適用を受ける地位にあったことの確認を求めるとともに、同賃金表の適用を受けることを前提として、又は、仮にXが専任教諭の地位になかったとしても、Xと専任教諭との間における賃金格差は労働契約法20条等に反し無効であるか若しくは専任講師(常勤講師)について基本給が定期昇給する労使慣行が存在するなどと主張して、労働契約に基づき、Xが専任教諭であった場合に平成25年4月から平成30年3月までに支払われるべきであった賃金と同期間に実際に支払われた賃金との差額である別紙3請求債権目録の賃金差額相当損害金欄の各請求債権額欄記載の金員の合計額1080万6480円+遅延損害金の支払を求め、また、Y社がXと専任教諭との間に賃金格差を設けたことはXに対する不法行為であるとして、不法行為による損害賠償請求権に基づき、前同様の差額1080万6480円+遅延損害金の支払を選択的に求めるとともに、弁護士費用として同差額の10パーセント相当の108万0648円+遅延損害金の支払を求め、さらに、Y社はXの専任教諭として扱われることへの期待を破壊するなどしてXの人格権を侵害したとして、不法行為による損害賠償請求権に基づき、慰謝料500万円+遅延損害金並びに弁護士費用として同慰謝料の10パーセント相当の50万円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

1 Xが平成28年9月から平成30年3月までY社との間で期間の定めのない雇用契約関係にある専任教諭として別紙1専任教諭賃金表の適用を受ける地位にあったことの確認を求める部分に係る訴えを却下する。

2 Y社はXに対し、958万2000円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Z1高校においては、遅くとも平成10年度までに、勤務形態の変更、就業規則所定の昇給停止年齢への到達、病気等による長期欠勤その他の特別の事情がない限り、常勤講師を含む全教員を、翌年度も契約が更新され又は継続する限り、毎年度少なくとも1号俸ずつ定期昇給させることが事実として慣行となっていたことが認められ、Y社の代表者理事長を含む労使双方が、同慣行を規範として意識し、これに従ってきたとみることができる、そうすると、同慣行は、遅くとも同年度の時点で、法的拘束力を有する労使慣行となっていたものというべきである。

2 専任教諭は、長期間の雇用が制度上予定されている上、管理職を含めた各役職の大部分に就いて重い職責を負っており、重要な業務を担っていたのに対し、常勤講師は、長期間の雇用が制度上予定されていなかっただけでなく、管理職を含めた各役職の職責を恒常的に担うことも予定されておらず、重要業務のうち担当しないものもあることが認められ、無期契約労働者である専任教諭と有期契約労働者である常勤講師のそれぞれについて基本給をどのように設定するかにおいて考慮すべき各事情に相当な差異があるものというべきである。以上の事情に加え、専任教諭と常勤講師との調整手当の差額が基本給の3パーセントにとどまることも併せ考慮すれば、Xを含む常勤講師が教科教育、クラス担任、クラブ活動の指導等について専任教諭と同様の職務に従事していたことなどの事情を考慮しても、Xを含む常勤講師と専任教諭との間の調整手当の相違は、不合理であると評価することはできないから、労契法20条にいう不合理と認められるものには当たらないというべきである。

珍しく労使慣行に法的拘束力が認められました。

この論点は、思っている以上にハードルが高いので注意が必要です。

また、労契法20条の論点は、コツをしっかり掴んでポイントを押さえることがとても大切です。

顧問弁護士のアドバイスの下、正しく労務管理を行えば、それほど恐れる必要はありません。