Monthly Archives: 8月 2020

本の紹介1065 「無理」の構造(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう!

今日は本の紹介です。

サブタイトルは「この世の理不尽さを可視化する」です。

帯には「理不尽なのは『世の中』ではなく『私たちの頭の中』である。」とも書かれています。

世の中に理不尽を感じる人は、きっとこの本を読んでもその感情は消えません(笑)

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人間社会の日常に関わる事象については、いつまでたっても同じ過ちが繰り返され、『無駄な努力と抵抗』が永遠に続いているようにも見えます。『歴史から学べ』とはよく言われることですが、私たちが歴史から学べることが一つあるとすれば、それは『歴史からは何も学べない』ということかも知れません。逆に言えば人間は自らの一生の中で数々の失敗と『無駄な努力と抵抗』を直接的に重ねることでのみ賢くなっていけるのかもしれません。」(147~148頁)

労務管理の世界でも同じことがいえます。

典型例は、管理監督者性と固定残業制度です。

判例により要件が明確にされて以降も、多くの会社がいまだに同じ過ちを繰り返し続けております。

歴史から学べるかどうかは、すなわち、モノを知る環境に身を置いているか否かの違いにつきます。

すべての分野を自ら勉強することはほぼ不可能です。

だからこそその道の専門家をブレーンに置き、レクチャーを受けられる環境に身を置くのです。

これができれば、少なくとも「不必要な失敗」の多くは避けることができます。

賃金194 賃金減額の合意が有効と判断されるためには?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、賃金減額の合意と辞職の意思の有無に関する裁判例を見てみましょう。

岡部保全事件(東京地裁令和2年1月29日・労判ジャーナル99号34頁)

【事案の概要】

本件は、Y社代表者の娘婿であり、Y社で働いていたXが、平成29年10月支払分からXの同意なく賃金を減額され、平成29年12月22日をもって辞職した扱いとされ、平成30年1月以降、賃金を支払われなくなったとして、雇用契約に基づき、地位確認及び平成29年10月分から同年12月分までは減額された月額201万5566円の賃金及び平成30年1月以降月額309万円の賃金+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

辞職無効
→地位確認請求認容

【判例のポイント】

1 賃金の減額に対する労働者の同意は、形式的に存在するのみでは足りず、自由な意思に基づいてされたものであることを要するというべきである。本件は、Y社代表者とXとの間に親族関係がある点で、通常の労働者、使用者との関係と全く同様とはいえないが、賃金の減額に対する同意の有無を慎重に判断する必要がある点は異ならないと解すべきである。
Xは、本件減額の告知を受けた翌日の平成29年10月13日、賃金額を説明するCのメールに対し、「了解です」との返信をしたものの、その後、同月25日及び26日には、本件減額を認めていない旨のメールをC宛に送信し、同月30日には、Y社代表者の執務室へ赴いて本件減額について考え直してほしい旨を直接告げ、同年12月には、X代理人に依頼して、賃金の差額を請求する旨を通知した。「了解です」との言葉の意味は、内容を承諾した旨とも内容を理解した旨とも解釈可能であり、Xが、「了解です」とのメールを送信したのは、Y社代表者に話をするには時間を置いた方がよいと考えたためであると説明していることに加え、同メール送信後ほどなく、減額告知後の最初の給与支給日までには、Y社による本件減額に対して明示的な拒否の意思を伝えていることからすると、Xが、Y社に対して、本件減額に同意する意思を表明したということはできない

2 Y社は、Xが、Y社代表者の知らない弁護士に委任して、弁護士からの電話一本もなく、賃金請求の内容証明郵便を送付したことは、義理の親子間にあっては他人行儀を超えて冷酷非礼なひどい行為であり、退職するとの不動の覚悟と断固たる決意がなければできないことであるから、内容証明郵便の送付が辞職の黙示の意思表示である旨を主張するけれども、そもそも、退職する覚悟でなければ使用者に対して内容証明郵便を送付しないものではない上、在職を続けることを前提に、会社に対して賃金等の請求を行うことは、権利の行使として当然に許されるから、採用できない
また、Xが発出したY社とa社との業務委託契約の解約の有効性を争う旨の通知についても、XのY社に対する辞職の意思表示とは認められない。
したがって、Xは、Y社に対し、明示にも黙示にも辞職の意思表示をしていない

上記判例のポイント2の考え方は、労働事件で頻繁に出てきますので、是非、押さえておきましょう。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介1064 ゼロからつくるビジネスモデル(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

500頁を超える大作ですが、非常に読みやすいです。

ビジネスモデルを考える上での基本的姿勢がよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人間が口にする言葉の中に盗作でないことが存在するとでもいうのか!(小説家マーク・トウェイン」(120頁)

いずれも、その業界を代表し、イノベーションの象徴とされる企業ですが、異国、異業種、過去のものを上手に模倣しています。独創的ともいえるこれらのビジネスモデルは、必ずしもゼロから生み出されたものではないのです。思いもよらない『お手本』を見つけ出し、創造的に模倣することで生まれたのです。」(121~122頁)

ここに書かれていることこそまさにずっと前から言われ続けていることで、いわば「模倣」なのです。

1から10まで前代未聞で完全にオリジナルなものなんて存在しませんし、そんなものを発明しなくてもビジネスはできます。

いかにうまく模倣し、形を変え、見せ方(魅せ方)を工夫できるかこそがキモです。

業種を問わず、うまくいっていることには必ず理由があります。

ものまね芸人の方が本人のエッセンスを上手に抜き取り、特徴を誇張して再現するというあの過程はまさにビジネスモデルを生み出す過程と同じことです。

セクハラ・パワハラ61 顧問弁護士によるハラスメント調査と利益相反問題(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、パワーハラスメントを理由とする懲戒処分(訓戒)が有効とされた事案を見てみましょう。

辻・本郷税理士法人事件(東京地裁令和元年11月7日・労経速2412号3頁)

【事案の概要】

【裁判所の判断】

Y社がXに対し行った訓戒の懲戒処分の無効確認請求は却下

その余の請求は棄却

【判例のポイント】

1 B弁護士は、Y社の顧問弁護士であり、Y社から依頼を受けて本件調査を行った者であるが、同弁護士は、Y社から本件調査についての意見を聞くことなく本件調査を開始し、X及びEからそれぞれの言い分等を記載した書面の提出を受け、X及びA部長が所属する人事部の従業員のみならず、他の部署の従業員からも事情聴取を行った上で本件報告書を作成していることが認められる。
そして、B弁護士による調査が中立性、公平性を欠くというべき具体的な事情は事情は窺われず、また、上記のとおり本件調査は、複数の部署にわたるY社の従業員から事情を聴取して行われており、人事部における人間関係にとらわれない調査方法が用いられているということができる。さらに、本件報告書に至る過程に特段不自然・不合理な点は認められない。
以上によれば、本件報告書には信用性が認められ、同報告書に記載された事実を認めることが相当である。

2 Xは、本件懲戒処分を受けるに当たり、B弁護士から事実関係のヒアリングを受けたにすぎず、懲戒権者であるY社に対する釈明又は弁明の機会が与えられていないことから、Y社の就業規則において必要とされる手続が履践されていない旨主張する。
しかしながら、Y社の就業規則においては、「懲戒を行う場合は、事前に本人の釈明、又は弁明の機会を与えるものとする」との規定があるのみであり、釈明の機会を付与する方法については何ら定められていない。そして、本件懲戒処分に先立ち行われた本件調査は、法的判断に関する専門的知見を有し、中立的な立場にあるB弁護士が、Y社から依頼を受けて行ったものであるから、釈明の機会の付与の方法として適切な方法がとられたということができ、Y社の就業規則において必要とされる手続が履践されたというべきである。したがって、Xの主張は採用することができない。

本件では、Y社の顧問弁護士が調査をしており、「中立的な立場」といえるかが問題となりましたが、調査過程等に鑑み、肯定されています。

この類の紛争では、調査を担当した弁護士が、訴訟になった際にそのまま会社側の代理人となる場合があり、それが利益相反とあたらないか疑義が生じますので注意が必要です。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

本の紹介1063 働き方5.0(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう!

今日は本の紹介です。

表紙には「『社会の前提』は覆された。新たな世界の景色と展望を共有したい」と書かれています。

著者がこれからの時代をどう見ているのかがとてもよくわかります。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

他人にはコピーできない暗黙知を自分の中に貯めていくことが大事。いまはインターネットで一瞬にして情報がシェアされ、世界中に拡散していく時代ですが、そういう誰でも知っている情報をたくさん持っていることには何の価値もありません。」(94頁)

クイズ王のように大量の知識を暗記していても、「ネット調べれば載ってるじゃん」という話です。

いかにネットで調べても載っていない「暗黙知」を蓄積していくかがとても重要なのです。

場数を踏まないとわからないことやモノの見方・考え方といった切り口こそが他との違いになります。

変化の激しい時代だからこそ、ますますこのような力が重宝されるようになるのです。

賃金193 賃金控除は違法?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、賃金控除が不法行為に該当しないとして、損害賠償請求及び不当利得返還等請求が棄却された事案を見てみましょう。

オレンジキャブ事件(大阪地裁令和2年2月12日・労経速99号30頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されて稼働していた元従業員らが、Y社に対し、Aが、Y社に対し、Y社がAの賃金から「貸付金」「貸付利息」「共済会費」「持帰り分」「特別車」の名目で控除したことがY社の不法行為に当たるとして、不法行為に基づく損害賠償等の支払、Bが、Y社に対し、Y社がBの賃金から、「特別車」「共済会費」の名目で控除したこと、「お年玉」「無事故手当」を支給しなかったこと、Y社の常務取締役から嫌がらせを受けたことがY社の不法行為に当たるとして、不法行為に基づく損害賠償等の支払、Cが、Y社に対し、Y社がCの賃金からCが入居していた「α荘」の家賃として1万円を超えるきんがくを控除した部分が不当利得に当たるとして、不当利得の返還及び「α荘」の敷金として5万円を支払ったが、「α荘」の退去後返還されないとして、同敷金の返還等を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社による賃金からの控除がY社による不法行為に当たるか及び損害額について、「貸付金」「貸付利息」名目での控除について、Y社が、わざわざ従業員の支給明細書に「貸付金」「貸付利息」と記載し、所長に指示して現金での精算を行わせていたと認めるに足りる的確な証拠は認められず、またその必要性も認め難いから、Y社による「貸付金」「貸付利息」の名目での控除が、Aに対して詐術を用いて交付すべき金員の支払を免れていたことに当たり、Aに対する不法行為を構成するとはいえず、さらに、Y社による「納金不足分」「持ち帰り分」の名目での控除が、Aに対して詐術を用いて交付すべき金員の支払を免れていたことに当たり、Aに対する不法行為を構成するとはいえず、そして、「共済会費」「特別車」名目の控除について、従業員に対する賃金支払の際に控除することができる旨の労使協定が締結されていること等から、Y社が、「特別車」の名目で賃金から控除した行為が、Aに対する不法行為を構成するとはいえない

2 毎月1万円を超える家賃控除が不当利得に当たるか及び敷金返還請求権の存否について、Y社は、入居者の賃金から「α荘」の家賃分を控除した上、入居者に代わって「α荘」の家主に支払っていたのであるから、Y社に利得が発生しているとは認められず、Cは、「α荘」の敷金が40万円であり、これをY社が立て替えて支払った、入居者8人で分割して5万円ずつの敷金について分割して給与から控除された旨供述するが、立替えに係る借用証書には、5万円の趣旨が「礼金」であると記載されており、Cの「敷金」との供述とは矛盾し、礼金であれば高額に過ぎる旨のCの主張を踏まえても、Y社が立て替えた5万円が「敷金」、すなわち返還の約束のあるものであるとは認め難いから、Cの敷金返還請求は理由がない。

事実認定の問題ですので、一般化しづらいですが、基本的には賃金から控除は慎重に行われるべきです。理由なく賃金から何らかの費用を控除するとトラブルになるので避けましょう。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介1062 社会を変えるアイデアの見つけ方(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

著者は、「空調服」を開発、製造した株式会社空調服(!)の社長です。

タイトルの通り、アイデアをいかにして見つけるのかについて実体験に基づき書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

こういった思い込みに気づかせてくれるのが、自分ではない誰かとのコミュニケーションです。調べて得た知識は信じてしまったとき、それを検証して指摘してくれる他者の存在は貴重です。人は自分が間違っていることには気づくことができません。」(106頁)

まあそうですね。

信用している人とのやりとりによる検証は極めて重要です。

ここで陥りがちなのは、多数決で決めるがごとく大勢の人に意見を聞きまわるという愚策です。

意見を聞かれる側も迷惑ですし、そもそも判断のしかたが間違っています。

決断力のない方に限って、このような行動をしてしまうので、判断は遅いわ、間違っているわという感じになってしまうので気を付けましょう。

詰まるところ、思考と行動の習慣の違いにより結論が決まるということです。

不当労働行為248 労組委員長に対する昇格・昇給差別?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、環境業務課に勤務する勤続年数23年の労組委員長Aを3級に昇格しなかったことが不当労働行為に当たらないとされた事案を見てみましょう。

公益財団法人秋田市総合振興公社事件(秋田県労委平成31年3月26日・労判1220号131頁)

【事案の概要】

本件は、環境業務課に勤務する勤続年数23年の労組委員長Aを3級に昇格しなかったことが不当労働行為に当たるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 昇格の上申を受けた者全員が昇格するわけではない。また、初任給、昇格、昇給等に関する規程で昇格基準となる経験年数及び在級年数を満たしていることも、昇格を保証するものでない。何れも、昇格の必要条件ではあるが、十分条件とはなっていない
結局は、昇格は、所属長からの上申があり、昇格基準となる経験年数及び在級年数を満たした者の中から、理事長ら4名が勤務態度、自己研さん、協調性、責任感、服務規律等を総合的に判断した上で決定しているのであるから、A委員長だけが例外的に昇格しなかったとはいえない

2 組合役員経験者でも、公社の管理職になる者もおり、組合活動をしたことを理由に不利益な取扱いを受けた組合員は見受けられないとの証言もある
また、昇格については、上申があった昇格者と未昇格者における組合員の比率を比較してみても明確な差異が見られないことに加え、A委員長と同期職員との比較においても、全員が組合員であるにもかかわらず、3級昇格に要した勤続年数には差が見られることから、昇格できない原因が、組合加入の有無と強い相関関係があるとも認められない。本件で見受けられる組合嫌悪の感情は、どちらかといえば使用者の一般的な組合嫌悪の範囲にとどまるものであり、不当労働行為意思があったとまで認めることはできない。

昇格、昇給差別に関する紛争の場合には、上記命令のポイント2のような他の組合員や非組合員との比較をするのが効果的です。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介1061 最強の縄文型ビジネス(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

縄文時代と弥生時代を比較した上で「縄文型ビジネス」という切り口を示しています。

成功しているかどうかはさておき、著者のチャレンジングな発想それ自体が勉強になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

管理型経営の行き過ぎによって、ビジネスパーソンが会社の歯車と化す。競合他社との差別化競争によって、ステークホルダーが疲弊するとともに、地球資源の奪い合いが続いていく。コンプライアンスの徹底によって、決められたことしかやらない思考停止状態に陥る。投資に見合うリターンを回収しようとして、強引な商談が生まれる。」(209頁)

今の日本の働き方やビジネスのやり方を表現しています。

このような生き方、働き方をしているうちは、強度のストレスに晒され、結果として幸福度は決して上がりません。

単純に、いかにストレスフリーな生活を送るかがその人の幸福度に直結しているのだと思います。

自分の生き方を選択できるようになるとストレスは大幅に減ります。

何かに依存、執着、固執していると、その「何か」を失うことを恐れ、ストレスがかかります。

依存しない、執着しない、固執しない。 これが幸福度が上がる生き方のキーワードです。

不当労働行為247 書面のやりとりで団体交渉はアリ?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間がんばりましょう。

今日は、雇用契約期間に関する労使の認識が異なる組合員の継続雇用を議題とする労組の申し入れた団交に応じなかった法人の対応が不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

社会福祉法人寺田萬寿会事件(大阪府労委令和元年7月1日・労判1220号130頁)

【事案の概要】

本件は、雇用契約期間に関する労使の認識が異なる組合員の継続雇用を議題とする労組の申し入れた団交に応じなかった法人の対応が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 確かに平成30年5月7日の組合員の発言のみをとらえれば有期雇用契約を前提とした発言であるといえなくもないが、同年4月27日の組合員の発言及びその後、組合に加入し自身の雇用問題について団交を申し入れていることからすれば、組合員は有期雇用契約であることに納得せず、法人の従業員たる地位の喪失について争っているといえる。
そうであれば、雇用が維持されるか否かは労働者にとって最も基本的かつ重要な「労働条件その他の待遇」であり、そのことに争いがある以上、30.6.30団交申入れ及び30.7.12団交申入れに係る団交事項が義務的団交事項に当たることは明らかである。

2 法人は、組合から交渉を求める書面が届く都度、毎回誠実に回答をしており、交渉を拒否したことはない旨をも主張する。しかしながら、労使双方が自己の意思を円滑かつ迅速に相手に伝達し、相互の意思疎通を図るには、直接話し合う方式によるのが最も適当であり、その際、書面を補充的な手段として用いることは許されるとしても、法人の主張する専ら書面による方式は、直接話し合う方式に代わる機能を有するものではなく、労働組合法の予定する団交の方式ということはできない

上記命令のポイント2は団体交渉のルールの基本中の基本なので押さえておきましょう。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。