おはようございます。
今日は、環境業務課に勤務する勤続年数23年の労組委員長Aを3級に昇格しなかったことが不当労働行為に当たらないとされた事案を見てみましょう。
公益財団法人秋田市総合振興公社事件(秋田県労委平成31年3月26日・労判1220号131頁)
【事案の概要】
本件は、環境業務課に勤務する勤続年数23年の労組委員長Aを3級に昇格しなかったことが不当労働行為に当たるかが争われた事案である。
【労働委員会の判断】
不当労働行為にあたらない
【命令のポイント】
1 昇格の上申を受けた者全員が昇格するわけではない。また、初任給、昇格、昇給等に関する規程で昇格基準となる経験年数及び在級年数を満たしていることも、昇格を保証するものでない。何れも、昇格の必要条件ではあるが、十分条件とはなっていない。
結局は、昇格は、所属長からの上申があり、昇格基準となる経験年数及び在級年数を満たした者の中から、理事長ら4名が勤務態度、自己研さん、協調性、責任感、服務規律等を総合的に判断した上で決定しているのであるから、A委員長だけが例外的に昇格しなかったとはいえない。
2 組合役員経験者でも、公社の管理職になる者もおり、組合活動をしたことを理由に不利益な取扱いを受けた組合員は見受けられないとの証言もある。
また、昇格については、上申があった昇格者と未昇格者における組合員の比率を比較してみても明確な差異が見られないことに加え、A委員長と同期職員との比較においても、全員が組合員であるにもかかわらず、3級昇格に要した勤続年数には差が見られることから、昇格できない原因が、組合加入の有無と強い相関関係があるとも認められない。本件で見受けられる組合嫌悪の感情は、どちらかといえば使用者の一般的な組合嫌悪の範囲にとどまるものであり、不当労働行為意思があったとまで認めることはできない。
昇格、昇給差別に関する紛争の場合には、上記命令のポイント2のような他の組合員や非組合員との比較をするのが効果的です。
組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。