おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。
今日は、試用期間中の解雇に関する裁判例を見てみましょう。
MAIN SOURCE事件(東京地裁令和元年12月20日・労判ジャーナル100号46頁)
【事案の概要】
本件は、Y社との間で雇用契約を締結していたXが、試用期間中に行われたY社による解雇が無効であると主張して、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、雇用契約に基づく賃金支払請求として平成30年8月以降本判決確定日まで毎月10日限り月額20万円(ただし,平成30年7月分については既払額を控除した残額である19万0480円)+遅延損害金の支払を求め、併せて、本件解雇が不法行為に該当し、また、Y社には職場環境配慮義務違反があると主張して、不法行為に基づく損害賠償請求として110万円(慰謝料100万円、弁護士費用10万円)の支払を求める事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 Xは、作業日報の記載方法や記載内容について説明を受けていたにもかかわらず、作業日報の問題点欄や今後の対策欄に何の記載もしなかったり「なし」とのみ記載したり、予定作業内容欄に簡略な記載しか行わないなど、Y社が求める記載方法や記載内容とは異なる方法で作業日報を作成しており、これについてBマネージャーやCからの指示、指導がされても改善されないといったことがあったことに加え、作業日報の作成時間等を巡ってY社側と意見を対立させた挙句、平成30年6月1日にはY社代表者に対して原田メソッドがXの思想良心の自由を侵害する違法なものであるから紹介をやめるよう求め、意見を聞き入れなければ訴える等と告げているのであって、BマネージャーがXの作業日報に記載しているXに対する肯定的な評価を踏まえても、Xに協調性がないとY社が判断したことはやむを得ないものといえる。
加えて、XがY社への就職内定後、Y社から借りた本件トラックを使用中に、結果として100万円以上の損害をY社に被らせた本件物損事故を起こしたにもかかわらず、事故後速やかな警察への連絡も、Y社への連絡、報告、相談も行っておらず、その後、本件トラックの損傷状況がY社に明らかになった後も、Y社からの要請があって初めて具体的な事故状況の報告を行ったり、本件物損事故の現場の調査を行っているといった不十分な対応しかとっていないことを、その後のXの作業日報に関するやりとりと併せて考えれば、Y社において大切なこととされている「報告・連絡・相談」をXが適切に行うことができないものと評価することもやむを得ないといえる。
2 Y社における業務内容が、複数の工程を限られた従業員(平成30年9月当時の従業員数は9人にすぎない)で分担して行うものであって、また、作業内容が技術的事項にわたるものであってOJTによる習熟を前提としていることからすれば、協調性や、適切な報告・連絡・相談の実施は、Y社の従業員として求められる適性であると解されるのであって、平成30年4月16日の採用内定後に発覚した上記事情によりXが上記適性を欠くと評価できる以上、Y社が留保解約権を行使することには客観的に合理的な理由が存在し、また、上記経緯に照らせば、その行使は社会通念上も相当と認められる。
3 Y社は原田メソッドの考え方をY社の経営理念、経営方針に取り入れているにすぎず、また、作業日報は、Y社従業員の作業実態を踏まえ、各従業員の作業内容及び進捗状況の確認、作業時間、作業結果等に基づく習熟度の把握、業務の効率化等の就業意識の向上等を目的として作成を義務付けられているものであり、求められている記載内容も、Y社従業員において、日々の業務において気づく力を養い、自らの技術の精度を向上させ、より質の高い製品の製作を実現するとともに、各従業員を自立型社員へと育成するためのものであって、営利企業であるY社において上記目的をもって上記記載を求めることは必要なものと言えるから、不要、困難な記載を求めるものでも、思想良心の自由を侵害するものでもない。その他に、Y社が職場環境配慮義務に違反していることを認めるに足りる証拠はない。
上記判例のポイント1のような事情についてしっかり証拠化しておくことが大切です。
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。