Daily Archives: 2020年7月22日

労働災害104 長時間労働と労災(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、労働者の自殺につき業務起因性を否定した原審の判断が覆された事案を見てみましょう。

青森三菱ふそう自動車販売事件(仙台高裁令和2年1月28日・労経速2411号3頁)

【事案の概要】

本件は、Aらが、子でありY社の従業員であった亡Xが違法な長時間労働等により精神疾患を発症して自殺したとして、Y社に対し、使用者責任、不法行為又は債務不履行に基づき、損害賠償及び亡Xが自殺を図った日を起算日とする民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

原審が、Aらの請求をいずれも棄却したところ、Aらは、控訴を提起した。

【裁判所の判断】

原判決を取り消す。

Y社は、A1に対し、3681万3651円+遅延損害金を支払え

Y社は、A2に対し、3678万0062円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 亡Xは、平成28年1月上旬頃、それまでのY社八戸営業所における業務に起因して適応障害を発症したところ、その後も長時間労働が続き(平成28年1月上旬以降の労働時間についても、それまでの時期と異なる認定をすべき事情は見当たらず、むしろ、同年3月は繁忙な決算月として、他の月よりも長時間の労働を余儀なくされたと推認することができる。)、出来事に対する心因性の反応が強くなっていた中、同年4月16日、先輩従業員であるCから叱責されたことに過敏に反応して自殺を図るに至ったと認めることができる。

2 亡Xが適応障害を発症して自殺を図るに至ったことについては、Y社八戸営業所の長であるG所長及び亡Xの上司であるE課長代理において、亡Xに業務上の役割・地位の変化及び仕事量・質の大きな変化があって、その心理的負荷に特別な配慮を要すべきであったところ、亡Xの過重な長時間労働の実態を知り、又は知り得るべきであったのに、かえって、従業員が実労働時間を圧縮して申告しなければならない労働環境を作出するなどして、これを軽減しなかったことに要因があるということができ、G所長らには亡Xの指導監督者としての安全配慮義務に違反した過失がある。そうすると、Y社は、使用者責任に基づき、Aらに対し、亡Xの死亡につき同人及びAらが被った損害を賠償すべき責任がある。

長時間労働が原因となった労災は、パワハラ等と比べて、業務起因性や素因減額を争いにくいですね。会社によって繁忙期があるのはよくわかりますし、労働力不足も重なって、どうしても長時間労働になりがちです。

会社としては、労働時間を短縮するために、サービス内容を再定義するなど、できることをやっていくしかありません。

日頃から顧問弁護士に相談しながら、適切に労務管理をすることが大切です。