おはようございます。
今日は、雇用継続の合理的期待がないとして有期労働契約の期間満了時の雇止めが有効とされた裁判例を見てみましょう。
学校法人A学園(雇止め)事件(那覇地裁令和元年11月27日・労経速2407号7頁)
【事案の概要】
本件は、Y社との間で期間の定めのある労働契約を締結していたXが、Y社の雇止めは、客観的に合理的な理由及び社会通念上の相当性を欠くものであり、労働契約法19条によりXとY社との間の労働契約は従前と同一の内容で更新されたなどと主張して、Y社に対し、地位保全及び賃金仮払いを求める事案である。
【裁判所の判断】
本件申立てをいずれも却下する。
【判例のポイント】
1 Xは、看護師として採用されたものであり、業務内容は、臨時的なものではなく、継続的に行っていく必要がある業務も含まれていたことが認められる。しかし、Y社が採用している看護師は全て任期制雇用であり、Xの地位は、正職員と記されている場合があるものの、それは、派遣社員との比較における記載で、契約書上も就業規則上も明確に有期雇用であるとされ、更新の可能性は指摘されているが、継続的に更新されるとまではされていない。
また、Xは、当初2年の契約期間で雇用され、その後、1回の更新を経て、通算期間2年5月の勤務をしてきたものであり、多数回で長期間の契約期間であったものではない。
2 1回の更新後の契約期間についての意味合いについては、Z4博士によるXに対しての説明内容について、当事者間に争いがあるものの、更新期間が5月であり、クリニックの再開の目途がたった場合に、更新を必ず行うというのであれば、そもそも2年更新を検討するという前提(Y社側の説明に合致する。)だったからこそ、とりあえず年度末まで契約更新して、それまでの間に考え、更新しない方針となったのであれば、更新しないこととすることを考えた上での、更新であったと認められる。
また、契約更新の手続は、システム上で行えるものとなっており、Y社から契約更新の条件を明示され、かつ、それにXが同意すれば更新されるというものであり、厳格なものであった。
3 以上の事情を総合すると、X自身としては、Y社において勤務するにあたり看護師として長期にわたり働く予定であったことはうかがえるものの、あくまで主観的なものといえ、Xに雇用継続の合理的期待があるとはいえず、本件労働契約は労働契約法19条2号に該当しない。
上記判例のポイント1、2のような運用をしている限り、雇止めが無効と判断される可能性はかなり低いといえます。
雇止めが無効と判断されている事案の多くは、運用の稚拙さがその理由となっています。
日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。