Daily Archives: 2020年6月4日

セクハラ・パワハラ60 退職してから2年以上経過後のパワハラに関する損害賠償請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、上司のパワハラに基づく損害賠償等請求に関する裁判例を見てみましょう。

西京信用金庫事件(令和元年10月29日・労判ジャーナル97号36頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、Y社への在籍当時、上司からいわゆるパワーハラスメントを継続して受けたことにより精神疾患を発症し、Y社には使用者としての職場環境配慮義務の違反があったと主張して、Y社に対し、慰謝料及び逸失利益等の損害賠償金約1654万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 X主張のA支店長による本件パワハラ行為に関して客観的な証拠等は見当たらず、また、医師作成に係る診断書には、適応障害の発病の状況について、Xの主張に沿う記載があるが、医師のXに係る初診の時期は、XがY社を退職した1年8か月余りを経過しているものであるから、この診断内容をもって直ちに本件パワハラ行為の存在を肯定することはできず、さらに、証人Bは、Xと交際がある友人であり、本件証拠上うかがわれる関係性に照らし、Xの供述を支えるに足りる客観的な証拠力があるとまではいえず、そして、Xは、A支店長から遂行が明らかに不可能な量の業務を割り当てられた旨主張するが、Xが毎日30件の顧客を訪問するよう指示されていたとしても、それが信用金庫の営業業務として達成が困難な程度のノルマないし業務量を課したものであると認めるに足りるものではなく、A支店長のXに対する業務の割当てに関して違法であると評すべき行為は認められず、以上の検討のほか、XがY社に対して初めて損害賠償を求めたのは、Y社を退職してから2年以上も経過した時期のことであること等から、本件パワハラ行為についてのXの供述は、にわかに採用することができず、Xの請求は理由がない。

消滅時効の点は措くとしても、退職してから2年以上経過してパワハラについて損害賠償請求するというのはうまくありません。

また、診断書の作成時期についても、退職後相当期間経過後ですので、証拠価値は低いです。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。