おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。
今日は、有期雇用職員の無期転換を議題とする団交において、労組の要求する他大学の財務状況に関する資料を提示しなかったことは不当労働行為に当たらないが、希望者全員の無期転換ができない理由の根拠となる資料の提示および説明をしなかった法人の対応は不当労働行為に当たるとされた事案を見てみましょう。
国立大学法人東北大学事件(宮城県労委令和元年11月14日・労判1214号91頁)
【事案の概要】
本件は、有期雇用職員の無期転換を議題とする団交において、労組の要求する他大学の財務状況に関する資料を提示しなかった法人の対応、希望者全員の無期転換ができない理由の根拠となる資料の提示および説明をしなかった法人の対応は不当労働行為に当たるかが争われた事案である。
【労働委員会の判断】
労組の要求する他大学の財務状況に関する資料を提示しなかったことは不当労働行為に当たらない
希望者全員の無期転換ができない理由の根拠となる資料の提示および説明をしなかった法人の対応は不当労働行為に当たる
【命令のポイント】
1 他大学の財務状況に関しては、財務諸表や決算報告書などに記載されている概括的な情報は公開されているとしても、職員の雇用管理に関する情報や財源の具体的な使途等、比較分析を行うために必要な情報まで公開されているものではない。また、X組合がY社に対して、他大学の情報を入手するよう求めていることからも、それらの情報が一般に公開されているとは言い難い。さらに、X組合もそれらの情報の入手方法について具体的な主張をしておらず、Y社が入手可能であったとする特段の事情も認められない。よって、Y社が、他大学と異なる財務状況を説明することが可能であったとは認められない。
このような状況において、他大学との比較資料を提供しなかったとしても、誠実交渉義務に違反する対応であるとまではいえず、労組法7条2号の不当労働行為に該当するとはいえない。
2 Y社は、希望者全員の無期転換というX組合の要求を受け入れられない理由として、正職員の人件費が逼迫した財務状態にあることや運営費交付金が減少していることなどの一般的・抽象的な理由を説明したにすぎず、有期雇用職員の現時点における人件費の額は明らかにしているものの、希望者全員を無期転換した場合に増加する将来の人件費の額、Y社の予算に占める増加額の割合(影響度)といった事項については明らかにしておらず、これらの事項を具体的に検討したことは窺えない。仮にこれらの事項について、Y社が具体的に検討し、X組合に情報を提供していれば、X組合は、それを前提に自身の要求の実現可能性を判断し、他の財源を割り当てる、あるいは無期転換の要求を一定程度縮小するといった対案を検討するなどしてY社と交渉することも可能であった。すなわち、Y社が、Xの要求を具体的に検討していないことにより、X組合に対して労使対等交渉に必要な情報が開示されず、労使対等交渉が妨げられていたことが認められる。
上記命令のポイント1と2を比較検討すると、いかなる場合に、不当労働行為と判断されるかがよくわかりますね。
組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。