おはようございます。
今日は、不当な配転等を理由とする損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。
スーパー・コート事件(大阪地裁令和元年11月26日・労判ジャーナル96号82頁)
【事案の概要】
本件は、Y社に雇用されて稼働していたXが、Y社から不当に配置転換され、配転先に出勤しなかったところ、雇止めがされたが、当該雇止めは違法であり、これによってXは損害を被ったなどと主張して、損害賠償等の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 Y社が、平成29年11月30日、Xに対し、看護師としての業務をさせない旨の指示をしたことが不法行為に当たるかについて、Xは、平成29年11月2日の入職後1か月の間に、2度にわたる誤薬事故を起こしていること、第1誤薬事故の原因として、同事故の対象となった入居者は、通常の人は膣がある位置に膣がなく、肛門があるという身体的特徴があったこと、第2誤薬事故の原因として、Xは、反省文に、入浴後の処置においては、テープ貼付分は外してくれている、あるいは入浴中に剥がれてしまっていると聞いていたなどと記載していること、本件指示によって、Xの賃金に何ら不利益はないこと、以上の点を併せ鑑みると、X自身が、入居者の特性や本件施設での業務フローへの認識の相違を上記各誤薬事故の原因と主張しているのであるから、入居者の特性や日常生活動作の把握を先行させ、これらの把握まで身体への侵襲を伴い得る看護師業務への従事を一時的に停止することが、Xに対する不法行為に当たるとはいえない。
2 Y社のXに対する配置転換命令の有効性について、雇用契約書の記載が、就業当初の勤務場所の記載という意味を超えて、就業規則の規定を排して勤務場所を限定する趣旨のものであり、XとY社との間で勤務場所を本件施設に限定する合意があったと認めることはできず、配転先施設には、当時、正社員を含む看護師が8名程度在籍し、Xに対して看護師業務の直接的な指導ができると考えたことから、Xを配転先施設に配置転換させることとしたものであり、これらは企業の合理的運営に寄与するものであって、業務上の必要性がないとはいえず、Xが、従前からY社による本件配置転換に従わない意向を明らかにしていたことを踏まえると、Xが指摘するY社の対応は、Xの行動を予測したものというにすぎず、不当な動機・目的が看取できるとはいえず、Xが、配転先施設に出勤して就業できない、あるいは本件配転命令に従うことによって通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を被るとは認められないから、本件配転命令が、Y社の配転権を濫用したものであり、違法無効であって、Xに対する不法行為を構成するとはいえない。
上記判例のポイント2の考え方は非常に重要ですので、是非参考にしてください。
雇用契約書の勤務場所や職種の記載は、配置転換の要件に関する解釈に影響を与えますので、この裁判例を知っておくことは重要です。
実際の対応については顧問弁護士に相談しながら慎重に行いましょう。