有期労働契約91 定年後再雇用従業員に対する雇止め(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、定年後再雇用のタクシー運転手の雇止めが有効とされた裁判例を見てみましょう。

すみれ交通事件(横浜地裁令和元年9月26日・労経速2397号30頁)

【事案の概要】

本件は、一般乗用旅客自動車運送事業を営む特例有限会社であるY社において勤務し、又は勤務していたXら7名のうち、①X7を除くXら6名が、Y社に対し、Y社から年次有給休暇の取得を妨害されたとして、雇用契約上の債務不履行に基づき、すでに喪失した年次有給休暇の日額報酬相当分及び年次有給休暇を使用できずに欠勤した日数の日額報酬相当分の損害賠償+遅延損害金の各支払、②X2が、Y社に対し、X2に対する雇止めが違法無効であると主張して、不法行為に基づき300万円の慰謝料+遅延損害金の支払、③X7が、Y社に対し、X7に対する就労拒否が違法無効であると主張して、不法行為に基づき300万円の慰謝料+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社は、X2が平成27年5月16日に危険運転を行い、これに対する反省が見られないことを理由に本件雇止めを行っているところ、X2は、同日、Z6バイパス上において、観光バスの前に割り込む形で車線変更を行い、観光バスがパッシングしたことに対して運転車両を急減速させるなど、危険運転と評価されてもやむを得ない運転行為に及んでおり、これについて警察から注意を受けた際も、自らの非を認めず謝罪や反省をしなかったことが認められる。この点に関しX2は、パッシングされて観光バスに故障等の異変が生じたかと思い、様子を伺うために減速したに過ぎないなどと述べて危険運転の存在を争うが、故障等のトラブルが生じた際にパッシングをして前方の車両に合図を送るというのはいかにも不自然な経緯を述べるものであり、信用できない。むしろ、X2の車両が観光バスの直前に入り込む形で左側車線から車線変更をしていることや、観光バスがあえてドライブレコーダーを解析してX2の車両を特定し、警察に通報したという経緯を踏まえると、X2の運転行為が相応に危険なものであったことが推認される

2 さらに、Z1の供述によれば、X2は、この運転行為が発覚した際、観光バスがパッシングしたから急ブレーキをかけたことを認める発言をしていたとのことであり、労働契約期間満了通知書にも同様の記載が認められることからすれば、X2においても、自らの運転行為が危険なものであったことを認識しながら、謝罪を拒んだものと認められる

3 以上に加えて、X2がB賃乗務員となった後の交通事故発生率が比較的高く、とりわけ本件雇止め直前の雇用期間中の平成26年9月と11月に立て続けに事故を惹起していること、それにもかかわらず前記危険運転行為に及び、これについて反省や今後事故を回避するための方策を真摯に検討する様子が伺えない点を踏まえると、Y社が、今後X2の運転により重大な事故等が発生することを危惧し、前記運転行為について真摯な謝罪や反省がなければ契約の更新を行うことはできないと判断したことは、やむを得ないというべきである。

解雇や雇止めの合理的理由の有無を考える場合、当該従業員の非違行為等の程度とともに、その後の反省、改善に対する姿勢等も加味することになります。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。