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今日は、従業員同士の暴行による傷害と使用者責任等に関する裁判例を見てみましょう。
A研究所ほか事件(横浜地裁川崎支部平成30年11月22日・労判1208号60頁)
【事案の概要】
本件は、平成26年4月20日当時、Y社の従業員であったXが、同日、勤務中に、Y社の事業所内において、当時Y社の従業員であったAから暴行を受けて受傷したとして、Aに対しては不法行為に基づき、Y社に対しては使用者責任又は雇用契約上の債務不履行(安全配慮義務違反)に基づき、損害賠償金1195万0218円+遅延損害金の連帯支払を求めている事案である。
【裁判所の判断】
AはXに対し、472万2589円+遅延損害金を支払え。
Xのその余の請求は棄却
【判例のポイント】
1 以上検討したところによれば、むしろ、AにはX主張の業務上のミスはなく、本件暴行の原因となったXの言動は、Xの担当業務の遂行には当たらないことが認められる。したがって、本件暴行の原因とY社の事業執行との間には密接な関連性があるとのXの主張は、その前提となる事実を欠くものというべきである。
かえって、XとAは、初対面の時から互いに相手に対して不快な感情を抱き、その後も、互いに相手の態度や発言に反感を抱き、Xとは親しい関係にあるGが従前からAと対立関係にあったとの事情もあって、相手に対する敵対的な感情を相互に強めていたところ、平成26年4月20日、Xが、Aに対し、Aは仕事ができず、他の従業員に迷惑をかけているとのAを貶める発言や、本件トラブルの原因はAのミスなので報告するなどとの事実に反しAを貶める発言をしたこと等から、これに憤慨したAが、Xからパソコンを取り上げようとし、XがAの右手首をつかんでひねったことがきっかけとなって、Aが本件暴行を開始したことが認められる。
上記認定事実によれば、本件暴行は、Y社の事業所内においてAの従業員同士の間で勤務時間中に行われたものではあるが、その原因は、本件暴行前から生じていたXとAとの個人的な感情の対立、嫌悪感の衝突、XのAに対する侮辱的な言動にあり、本件暴行は、私的な喧嘩として行われたものと認めるのが相当である。
上記認定事実からしても、本件暴行がY社の事業の執行を契機とし、これと密接な関連を有するとは認められないから、本件暴行によるXの損害は、AがY社の事業の執行につき加えた損害に当たるとはいえない。
従業員同士の暴行・傷害事件の場合、会社に対してその責任を追及できるかを検討する場合、本件のように本件暴行の原因と事業執行との間に密接な関連性があるか否かを見て行くことになります。
評価が微妙なことが多く、悩ましいところです。
日頃から顧問弁護士に相談をすることを習慣化しましょう。