おはようございます。
66日目の栗坊トマト。見えます?実がついているの!
今日は、退職後の一定期間における競業事業者への就職等の禁止を定める誓約書の効力を一部無効とした裁判例を見てみましょう。
アクトプラス事件(東京地裁平成31年3月25日・労経速2388号19頁)
【事案の概要】
本件は、Y社が雇用していたX1及びX2がY社の就業規則の規定又はY社とX2が取り交わした誓約書における約定に反して、A社の業務執行社員に就任するとともに、Y社の登録派遣社員を引き抜き、Y社の顧客に派遣して顧客を奪ったなどと主張して、X1及びX2に対し、債務不履行、不法行為及び会社法597条に基づき、A社に対し、X1及びX2との共同不法行為に基づき、連帯して、逸失利益1385万7186円及び弁護士費用相当損害金138万5719円の合計1524万2905円+遅延損害金の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 本件誓約書6条は、X2に対し、Y社退職後1年間、事前の許可なく、一都三県においてY社と競業関係にある事業者に就職等をすることを禁止しているところ、かかる制限はX2の職業選択の自由を制限するものである上、Y社との間で有期労働契約を締結し、主として登録派遣社員の募集や管理等を行っていたにすぎないX2について、制限の期間や範囲は限定的であるものの、Y社の秘密情報の開示・漏洩・利用の禁止や、従業員の引き抜き行為等の禁止をする以上の制限を課すべき具体的必要性が明らかでなく、かかる制限に対する特段の代償措置も設けられていないことなどを考慮すると、本件誓約書6条は公序良俗に反し無効である。
2 派遣社員募集にWeChatを利用することは、Y社独自のノウハウということはできない上、A1グループやA2グループに登録されたメンバーの情報についても、その全てがY社の業務上形成されたものとはいえず、Y社入社前から上記情報を形成してきたX2との間で上記情報に関する権利関係も明確でない以上、X1及びX2がA社において上記情報を利用することが直ちに違法になると解することはできない。
また、X2は、Y社退職の際、後任者であるDに対してA1に対する人材派遣についての引継ぎを行っており、A1から発注があれば、Dにおいて派遣社員の募集をすることが可能であったものの、Y社はX2退職後、A1から発注を断られたことが認められるところ、X2がA1のY社への発注を妨げたと認めるに足りる証拠はない。むしろ、A1からY社への発注がなくなったのは、FのY社顧問退任とA社顧問就任による影響や、A1とX1及びX2の信頼関係によるものと推認することができ、X1及びX2がY社退任後にA社においてA1グループやA社グループを利用して人材募集をしたことが理由でA1からY社への発注がなくなったと認めることもできない。
なお、Y社のA2からの人材派遣の受注がX1及びX2のA社への入社後に減少したと認めるに足りる証拠はなく、むしろ増加しているものとうかがえる。
以上によれば、X1及びX2が違法に本件引き抜き行為等を行ったことを前提とするY社のX1及びX2に対する損害賠償請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。
いつもながら競業避止義務や引抜き行為に関する事案は、原告側に厳しい判断が多いですね。
上記判例のポイント1のような考慮要素は理解しておく必要があります。
訴訟の是非を含め、対応方法については事前に顧問弁護士に相談しましょう。