解雇309 私用・不適切メールを理由とする解雇(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

62日目の栗坊トマト。2か月経ってここまで大きくなりましたー!

今日は、私用・不適切メール等を理由とする解雇に関する裁判例を見てみましょう。

日東精機事件(大阪地裁令和元年5月21日・労判ジャーナル90号32頁)

【事案の概要】

本件は、Y社において勤務していたXが、Y社から普通解雇されたが、同解雇は無効であるなどとして、地位確認並びに賃金(未払分及び将来分)等の支払を、同僚からいじめを受け、これをY社の元代表者を報告したにも関わらず、Y社は、何らの対応を取らずに放置し、これによって、Xは精神疾患を発病して休職を余儀なくされたとして、不法行為に基づく損害賠償等の支払を、それぞれ求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効

【判例のポイント】

1 Xの解雇事由に該当し得る事実は別紙1の番号13(Xが、インターネット上に「無能上司」等の表現を含む会社や上司に関する不満を書き込んだ)、14(Xは取引先従業員、会社従業員らに関する不満を述べるメールを送信した)、16(Xは、取引先従業員らに対し、就業時間中に不動産や年賀はがき関係等の私的な内容を含むメールを送信した)となるところ、Y社の事務所の他の社員も、就業時間中に、画像を添付したメールを送信していることが認められ、上司等に対する不満を抱いてあだ名をつけたり、就業時間中に業務と直接関係ないメールを送信したりすることは会社の企業全体の体質としての問題とも言い得ること、Y社が、Xに対し、別紙1の番号13、14、16の事実について指摘した上で、注意を与えたが、Xの行状が改善しなかったといった事情を認めるに足りる的確な証拠も認め難いことからいえば、本件解雇に客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であるとは認め難いから、本件解雇は無効である。

2 XとY社との間に、黙示的にせよ退職合意が成立したと認める余地はなく、また、Xが解雇予告手当を返金しているのは、解雇を拒絶していると解するのが合理的であり、当該事実や、その後3年間、雇用継続の有無を確認する措置を講じなかったことをもって、XとY社との間で黙示の退職合意があったと認めることもできない。

3 Y社が、Xの休職までの間に、X主張の他の従業員らの行為について調査をしなかったとしても、それが直ちにY社のXに対する不法行為を構成するとまではいえないし、Y社が何の対策も取らなかったため、Xが休職するに至ったとも認められず、また、Xと、他の従業員4名との間に、高さ約180㎝のパーティションが設置されたことが認められるが、当該パーティションの設置によって、Xが精神疾患を発病したと認めることはできないこと等から、XのY社に対する不法行為に基づく損害賠償請求には理由がない。

いろいろと問題があったことが推測できますが、解雇の手順としては不十分と言わざるを得ません。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。