おはようございます。
49日目の栗坊トマト。そろそろ花が咲きそうな感じです!
今日は、即戦力採用の管理職に対する本採用拒否の適法性について判断した裁判例を見てみましょう。
社会福祉法人どろんこ会事件(東京地裁平成31年1月11日・労判1204号62頁)
【事案の概要】
本件は、Y社により発達支援事業部長として採用されたXが、Y社から平成29年1月31日限りで解雇されたところ、同解雇は無効であると主張して、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、同年3月25日以降本判決確定の日に至るまで、支払期日又は支払期日後の日である毎月25日限り、同年2月分以降の月例賃金月額83万4000円+遅延損害金の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 Xは、その履歴書における経歴から、発達支援事業部部長として、さらにはY社グループ全体の事業推進を期待されるY社の幹部職員として、Y社においては高額な賃金待遇の下、即戦力の管理職として中途採用された者であったものであり、職員管理を含め、Y社において高いマネジメント能力を発揮することが期待されていたものである。
2 ・・・これらの点からすると、Xの業務運営の手法は、少なくとも施設長らとの円滑な意思疎通が重要となるY社の発達支援事業部部長としては、高圧的・威圧的で協調性を欠き、適合的でなかったと評価せざるを得ない。
3 結局、以上の点に照らすと、上記のように高いマネジメント能力が期待されて管理職として中途採用されたXにつき、少なくとも、本件就業規則14条1項6号、29条5号、11号及び同就業規則14条1項1号に規定するように、他の職員の業務遂行に悪影響を及ぼし、協調性を欠くなどの言動のほか、履歴書に記載された点に事実に著しく反する不適切な記載があったことが認められるところであり、本件本採用拒否による契約解消は、解約権留保の趣旨、目的に照らし、客観的に合理的な理由が存し、社会通念上相当なものと認められる。
4 以上に対し、Xは、採用に際して「経営陣との軋轢を恐れない」ことが条件とされており、大胆な意見具申と改革提案が期待されていたなどと主張する。確かに、募集要項にそのような記載はあり、外部の人材であったXに意見具申と改革提案が期待されたとはいえるが、現実に軋轢を生じては企業活動が進まないことは自明であって上記募集要項の記載もそのような気概で募集に応じてくれる者を求めた程度の趣旨にすぎない。以上のとおり、上記記載と実際に職員と軋轢を生じることとは別であり、その記載からXの所為が正当化されるものではない。
上記判例のポイント1のような事情がある場合には、通常の本採用拒否ないし解雇の場合よりも判断が緩やかになる傾向があります。
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。