おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。
今日は、ドライバーの未払時間外割増賃金等請求に関する裁判例を見てみましょう。
ナニワ企業事件(東京地裁平成31年1月23日・労判ジャーナル89号52頁)
【事案の概要】
本件は、平成17年10月から平成28年6月30日までY社の正社員のドライバーとして勤務していたXが、Y社に対し、①雇用契約に基づき、平成26年6月支給分から平成28年7月支給分の未払所定内賃金として約12万円、平成26年8月から平成28年5月までに支給されるべき無事故手当34万円等の支払、③労働基準法114条に基づく付加金として、約468万円等の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
一部認容
【判例のポイント】
1 X入社時の長距離手当についてその趣旨を明らかにする客観的証拠がなく、長距離手当のほかに時間外手当名目の支払もあったことや、C所長がXに対し、賃金について、基本給と諸手当を含めて手取り30万円との説明をしたことなどを勘案すると、就業規則が制定されるまでの長距離手当は、その全額が割増賃金の趣旨であったということはできず、入社時におけるXの長距離手当に関する賃金の定めは、結局、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別できないものといわざるを得ないから、入社時以降、Xに支給されていた長距離手当は、通常の労働時間に対する賃金に当たるものとして、基礎賃金に含まれるところ、平成21年11月6日制定の就業規則は、Xの入社時には通常の労働時間に対する賃金であった長距離手当を、割増賃金の支払の趣旨であると規定することにより、Xの基礎賃金を切り下げるものであるから、労働条件の不利益変更に当たるところ、Y社がXの同意を得た事実は認められないから、就業規則の制定によりXの労働条件を不利益に変更することはできず、長距離手当は、基礎賃金に含まれる。
2 Y社は、従業員の家族構成や住宅の形態に応じて定額の住宅手当を支給しており、住宅に要する費用に応じて算定されているとはいえないから、Y社がXに支給していた住宅手当は、割増賃金の算定基礎から除外される賃金とは認められず、また、Y社における食事手当は、従業員が長距離運転をする場合に支給されていたものであり、正に労働の対償として支払われたものとして、賃金に当たるというべきであるから、食事手当を割増賃金の基礎から除外すべき理由はなく、さらに、Y社は、特別給及び能率給を、基本給と同様の通常の労働時間に対する賃金として定めているから、賃金規程どおり、特別給及び能率給も、割増賃金の算定基礎とすべきであるが、他方、Y社は、無事故手当について、一度交通事故を起こした場合には、車輛の取扱に優れている者と認定できないとの趣旨で、10回分不支給とする取扱をしていたところ、無事故手当は、支給された月は割増賃金の基礎となるが、支給されなかった月において、割増賃金の基礎とすることはできない。
運送業における各種手当の運用方法の誤りが本当に目立ちます。
来月、運送業者対象のセミナーをやりますが、こういうセミナーに参加される会社は実はしっかりできていることが多く、関心すら持たない会社のほうが滅茶苦茶な賃金制度だったりします。
痛い目に合わないとわからないわけです。
残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。