Daily Archives: 2019年8月14日

管理監督者42 課長の管理監督者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、労働時間の裁量と管理監督者該当性に関する裁判例を見てみましょう。

日産自動車事件(横浜地裁平成31年3月26日・労判ジャーナル88号26頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の課長職を務めていた亡Xの妻が、Xの死亡によりその賃金請求権の3分の2を相続したとして、Y社に対し、雇用契約による賃金請求権に基づき、平成26年9月から平成28年3月までの時間外労働分につき、労働基準法上の割増率による割増賃金約525万円等並びに労働基準法114条の付加金支払請求権に基づき、未払時間外割増賃金と同額の付加金等の支払を求めた事例である。

【裁判所の判断】

管理監督者に該当しない
→請求の一部認容

付加金等支払請求は棄却

【判例のポイント】

1 D部に配属されていた当時のXのその他の職責及び権限を考慮しても、その当時のXが、実質的に経営者と一体的な立場にあるといえるだけの重要な職責及び権限を付与されていたとは認められず、また、N部に配属されていた当時のXのその他の職責及び権限を考慮しても、その当時のXが、実質的に経営者と一体的な立場にあるといえるだけの重要な職責及び権限を付与されていたとは認められず、Xは、自己の労働時間について裁量があり、管理監督者にふさわしい待遇がなされているものの、実質的に経営者と一体的な立場にあるといえるだけの重要な職責と責任、権限を付与されているとは認められないから、Xが、管理監督者に該当するとは認められない。

2 Y社が、割増賃金を支払わなかったのは、Xを管理監督者と認識していたためであるところ、Xは、結果として管理監督者とは認められないものの、間接的とはいえ経営意思の形成に影響する職責及び権限を有し、自己の労働時間について裁量も有しており、管理監督者にふさわしい待遇を受けていたことからすれば、Y社がXを管理監督者に該当すると認識したことに、相応の理由があるというべきであり、Y社がX及びXの妻に割増賃金を支払わなかったことについて、その態様が悪質であるということはできないから、本件において、Y社に付加金の支払を命じるのは相当でない

管理監督者の制度運用はもうあきらめたほうがいいかもしれませんね。

要件が厳しすぎてほとんど認められる余地がありません。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。