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今日は、バス運転手の未払時間外割増賃金等請求に関する裁判例を見てみましょう。
天理交通事件(大阪地裁平成31年2月28日・労判ジャーナル88号38頁)
【事案の概要】
本件は、バスの運転手としてY社に勤務していたXが、Y社に対し、平成26年10月28日から平成27年11月10日までの間における時間外割増賃金及び付加金の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
一部認容
付加金等請求は棄却
【判例のポイント】
1 Y社は15日を超えた場合に支給される1日1万2000円の金員は、割増賃金として支給したものである旨主張するが、本件雇用契約書には、「基本給150,000円(1ヶ月15日間拘束・超過日数分は、歩合給として1日につき12,000円)」と記載されていること、Y社がXに対して毎月交付していた給与明細書には、時間外割増賃金とは別に、「所定時間外賃金」の項目が記載されていること、以上の点に、本件雇用契約締結時、Y社がXに対し、Y社就業規則(賃金規程)の該当箇所を見せるなどして、15日を超えた分の賃金が、時間外割増賃金の趣旨で支払われる旨の説明があったことを認めるに足りる的確な証拠はないこと(かえって、同金員について、本件雇用契約書には「歩合給」として支給する旨記載されている)をも併せ鑑みれば、Y社が「所定時間外賃金」として支払っている金員が時間外割増賃金の趣旨で支払われるということについて、XY社間に合意があったとは認められないから、Y社がXに対し、「所定時間外賃金」として支払っている金員については、本件請求期間に係る時間外割増賃金の額算定に当たって基礎賃金に含まれると解するのが相当である。
2 Y社は、Xに対する時間外割増賃金について、支払いを怠り、同賃金支払義務を負っていると認められるが、もっとも、Y社は、Xに対し、毎月、不足額があったとはいえ、時間外割増賃金を一定額支払っていること、Y社がXに対する割増賃金支払義務を負うのは、エンジン停止時間が休憩時間に該当するのか、労働時間に該当するのかというY社の認識の違いによるものであると考えられるところ、休憩時間に該当するか否かは、業務実態の面もさることながら、法的な評価を含む面もあることは否定できないこと(Y社と同様の業種業態の会社等においても、エンジン停止時間や中休時間について、休憩時間として処理している場合もある)、Y社は、本件訴訟に至ってからとはいえ、Xに対し、運転日報等の労働時間に関する資料を任意に交付したこと等本件に関する諸般の事情を総合的に勘案すると、Y社に対し、付加金の支払を命じるのは相当とはいえないと考えるから、XのY社に対する付加金請求については、これを命じないこととする。
この事案も賃金システムの運用ミスから生じているものです。
残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。