Daily Archives: 2019年7月1日

有期労働契約87 雇止めが有効と判断される場合とは?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間がんばりましょう。

今日は、雇止めの有効性が争われた裁判例を見てみましょう。

沢井製薬事件(大阪地裁平成30年12月20日・労判ジャーナル87号99頁)

【事案の概要】

本件は、医薬品の製造販売等を目的とするY社との間で期間の定めのある労働契約を締結していたXが、平成29年4月1日以降の労働契約の更新を拒否されたところ、労働契約法19条により労働契約を更新したものとみなされるとして、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、労働契約に基づき、平成29年5月1日から本判決確定の日まで、毎月27日限り、約21万円の賃金等の支払を求めるとともに、Xの上司であったY社の従業員が長期間にわたり業務上の合理性なくXに仕事を与えなかった(安全への配慮を怠った)ため、Xがうつ病に罹患して精神的苦痛を被ったとして、債務不履行(民法415条)に基づき、慰謝料100万円等を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、勤務時間中、多数の従業員がいる中で、同僚の態度に怒って「なめとんのか」などと大声を発しただけでなく、詰め寄って両手でシャツの襟辺りを上に引き上げたのであって、殴るなどの行為には及ばなかったものの、無抵抗の者に一方的にそのような行為を行い、他の同僚に2人がかりで引き離されるまでそれを止めず、この点、eが舌打ちしたなど同人に全く非がないわけではないにしても、思わず声を荒げてしまったというだけであればともかく、更に詰め寄ってシャツの襟辺りを掴むといった身体に対する有形力の行使まで許容されるものではなく、明らかに過大な対応といわざるを得ず、これによって直接被害を受けたeの精神的ショックは大きく、また、このような事態を目撃した同僚が受けた衝撃も大きかったことは容易に推察されるから、本件暴行は重大なものであったといわざるを得ず、Xが本件暴行後に謝罪していること等を考慮しても、Xが本件契約の更新を期待することについて合理的な理由があるとはいえず、また、仮にその期待に合理的な理由があるとしても、Y社による本件契約の更新申込拒絶は、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であるといえる。

事案の程度としては雇止めの有効性に関する評価のしかたが微妙なケースがあります。

それでもなお、このまま契約を継続することはできないと判断する場合には、訴訟を覚悟しつつ雇止めもしくは解雇をせざるを得ないことがあります。

その場合は、事前の準備をしっかりして、訴訟に臨む必要があります。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。