Daily Archives: 2019年5月30日

不当労働行為219 労組委員長の雇止めと不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、交通事故等を理由に労組委員長の再雇用契約を更新せず、雇止めにしたことが不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

太宰府タクシー事件(福岡県労委平成30年11月2日・労判1196号93頁)

【事案の概要】

本件は、交通事故等を理由に労組委員長の再雇用契約を更新せず、雇止めにしたことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 A1は、約9年間組合の執行委員長を務め、組合活動の中心的な人物であった。

2 会社は、5月3日の苦情の前には、A1の雇止め及び解雇について、社内で検討したことがなかったにもかかわらず、5月3日の苦情の件については、その2週間後の同月17日に懲戒処分通知を発し、同時に本件雇止め通知を発するなど、本件雇止めを性急に決定した

3 会社では、料金メーターを不正操作するなど懲戒解雇事由に該当する行為を行った従業員に対しても雇止めは行われておらず、A1に対する本件雇止め以外に雇止めの事例はない

4 上記の各事実から、会社による本件雇止めは、会社が組合の執行委員長であるA1を嫌悪し、同人を会社外に放逐することにより、組合活動を困難にさせることを企図して行われたものと十分推認できる。

5 以上のとおり、本件雇止めは、組合活動の中心的な存在であるA1を嫌悪してなされた不利益取扱いと認められ、同時に、組合活動を委縮させるものであるから、労組法7条1号及び3号に該当する不当労働行為である。

上記命令のポイント1~3のような事情があると雇止めの合理性を肯定するのは難しいでしょうね。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。