Daily Archives: 2019年5月10日

不当労働行為215 組合掲示板設置の便宜供与拒否と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、市に勤務する労組の組合員が1名であることなどを理由に、労組の要求する掲示板設置等の便宜供与を拒否したことが不当労働行為に当たらないとされた事案を見てみましょう。

東大和市事件(東京都労委平成30年7月17日・労判1194号92頁)

【事案の概要】

本件は、市に勤務する労組の組合員が1名であることなどを理由に、労組の要求する掲示板設置等の便宜供与を拒否したことが不当労働行為に当たるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 正規職員の約6割を組織する職員団体と、非正規職員1名のみを組織する組合とでは、組織規模に大きな違いがあり市の施設を利用する必要性等の事情も異なるであろうことなどを考慮すれば、併存組合である職員団体が組合掲示板設置等の便宜供与を受けているとしても、そのことから、直ちに組合に本件便宜供与一式が認められるべきであるとまでいうことはできない。そして、第6回団体交渉において、市が本件便宜供与一式の拒否理由として説明した、組合掲示板設置については、組合事務所貸与については、物理的にスペースがないことなどについても、一概に不合理な理由であると断ずることはできない。

2 本件便宜供与一式の具体的内容は、組合掲示板設置のほか、組合事務所貸与、内線電話の設置・利用、郵便物取次ぎ、終業時間内の短時間組合用務の黙認などを含んだ多様なものであったところ、市は、比較的軽易で使用者の負担も軽いと思われる事項についても、一律に拒否する旨を回答している。こうした事項について、職員団体への便宜供与を認める一方で、組合に対しては一切認めない市の対応には疑問がないではない
しかしながら、組合は、職員団体が市から多様な便宜供与を受けていることを踏まえて、職員団体に認めて組合に認めないのは差別的取扱いであるなどとして、職員団体と同じ扱いにするよう求めており、本件便宜供与一式を一括して要求していることから、市の回答は、こうした組合の要求方式に対応したものとみることができる。そして、組合は、団体交渉において、組合が最重要視していた組合掲示板設置以外の個別の事項について、切り離して要求する姿勢をみせてはいないのであり、組合掲示板設置の代替案として市が置きビラの提案を行い、それについての協議が行われたことは上記判断のとおりである。
そうすると、組合が29年1月13日に初めて本件便宜供与一式を要求した後の最初の交渉となる第6回団体交渉において、具体的な交渉に入る前の段階の回答で、市が、本件便宜供与一式の一切を拒否し、その回答を変えていないことをもって、支配介入に当たるとまではいえない

非常に参考になる判断です。

是非、団体交渉を行う際に頭に入れておいてください。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。