おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。
今日は、有期契約労働者(アルバイト職員)への賞与不支給の違法性に関する裁判例を見ていきましょう。
大阪医科薬科大学(旧大阪医科大学)事件(大阪高裁平成31年2月15日・ジュリ1530号4頁)
【事案の概要】
本件は、期間の定めのある労働契約を締結してY社において勤務していたXが、期間の定めのない労働契約をY社と締結している労働者(以下「無期契約労働者」という。)とXとの間で、基本給、賞与、年末年始及び創立記念日の休日における賃金支給、年休の日数、夏期特別有給休暇、業務外の疾病(私傷病)による欠勤中の賃金、附属病院の医療費補助措置に相違があることは労働契約法20条に違反すると主張して、Y社に対し、不法行為に基づき、差額に相当する額等合計1272万1811円の損害賠償金及びこれに対する原審における請求の趣旨変更の申立書送達の日の翌日である平成28年4月29日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
原判決は、Xの請求をいずれも棄却したので、Xが本件控訴を提起した。
【判例のポイント】
1 Y社が正社員に年2回(1年で概ね基本給の4.6か月分)支給している賞与の支給額は、正職員全員を対象とし、基本給のみに連動するもので、従業員の年齢や成績に連動するものではなく、Y社の業績にも一切連動していない。このような支給額の決定方法を踏まえると、Y社における賞与は、賞与算定期間に就労していたこと自体に対する対価としての性質を有し、そこには賞与算定期間における一律の功労の趣旨も含まれるとみるのが相当である。そうである以上、同様にY社に在籍し就労していた、とりわけフルタイムのアルバイト職員に対し、賞与を全く支給しないことに合理的な理由を見出すことは困難であり、不合理というしかない。
もっとも、Y社の賞与には、功労、付随的にせよ長期就労への誘因という趣旨が含まれ、使用者の経営判断を尊重すべき面があることも否定し難い。さらに、正職員とアルバイト職員とでは、実際の職務も採用に際し求められる能力にも相当の相違があり、アルバイト職員の賞与算定期間における功労も相対的に低いことは否めない。これらのことからすれば、正社員のうち平成25年4月に採用された者と比較し、その者の賞与の支給基準の60%を下回る支給しかしない場合は不合理な相違というべきである。
2 夏期特別有給休暇の趣旨は、体力的に負担の大きい夏期に休暇を付与し心身のリフレッシュを図らせることにある。アルバイト職員であってもフルタイムで勤務している者は、夏期に疲労を感ずることは想像に難くなく、正職員と同様の夏季特別有給休暇を付与しないことは不合理というほかない。
3 Y社の正職員の私傷病による欠勤時に支給される賃金(6か月間は賃金全額、6か月経過後は標準賃金の2割の休職給)の趣旨は、長期継続就労を評価・期待し生活保障を図る点にある。契約を更新して一定期間継続就労し、Y社に一定の貢献をしているアルバイト職員にも、生活保障の必要性があることは否定し難く、私傷病による欠勤中に賃金を支給しないことに合理性があるとはいい難い。もっとも、その契約期間は更新があるとしても1年が原則であり、当然に長期雇用が前提とされているわけではないことから、私傷病による賃金支給につき1か月分、休職給の支給につき2か月分(合計3か月、雇用期間1年の4分の1)を下回る支給しかしないときは不合理というべきである。
4 年末年始や創立記念日の休日の賃金については、正職員の月給制、アルバイト職員は時給制を採用したことの帰結にすぎず、不合理とはいえない。年休の日数に1日の相違が生ずることも、不合理な相違とはいえない。附属病院受診の際の医療費補助措置は、恩恵的な措置であって労働条件に含まれるとはいえず、不合理な労働条件の相違とはいえない。
前回に引き続き、労契法20条関連の裁判例です。
同種の訴訟が全国で頻発しており、まだまだ落ち着く気配はありません。
今後、どのように対応していくべきかについてはいまだ正解がないため、過去の裁判例に照らして、弁護士等と相談しながら検討するほかありません。
日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。