おはようございます。
今日は、医師の労基法上の労働者性に関する裁判例を見てみましょう。
メディカルプロジェクト事件(東京地裁平成30年9月20日・労判ジャーナル84号48頁)
【事案の概要】
本件は、美容外科等の診療科目で開設された医院で稼働していた医師Xが、医院の経営に関するコンサルタント業務等を目的とするY社に対し、雇用契約に基づき、平成27年1月分の賃金150万円、平成26年12月分の賃金として支払われるべき未払いのインセンティブ4万7557円、平成26年8月1日から平成27年1月23日までに、所定休憩時間に休憩できず1日8時間を超えて労働したことに対する時間外割増賃金約105万円の合計260万円から、既払い金74万円を控除した残額約186万円等の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
労基法上の労働者性を肯定
【判例のポイント】
1 本件契約上、Xは、毎月末日を締日とする1か月の期間ごとに、所定の22日間の勤務を行うことが求められ、Y社は、これに対して、月額150万円の報酬を支払うことが定められており、この報酬については、医師の勤務日数が所定の日数を下回る場合には、日割り計算した分を減額されるなど、期間と勤務日数に対応した報酬という性格を有しており、また、本件各院における施術項目や診療体制等を決定していたのは、本件各院を実質的に運営していたY社であると認められ、Xは定められた施術項目や診療体制等に従って、患者の診療・施術等に当たっていたと認められるから、この限りにおいて、Y社の指揮命令に服していたと認められ、Xは、あらかじめ定められたシフトに基づき、勤務日に各院に出勤し、基本的には本件契約に基づく所定の勤務時間に従って、医療行為等の業務に従事していたと認められること等から、本件契約はXがY社に使用されて労働し、Y社がこれに対して賃金を支払うことを内容とする雇用契約(労働契約)に当たり、Xは、労基法9条の「労働者」に該当すると認めるのが相当である。
判決理由を読む限り、指揮命令下に置かれていたことは明らかですね。
もっとも、通常、労働者性に関する判断は本当に難しいです。業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。