Monthly Archives: 3月 2019

セクハラ・パワハラ50 暴行・人格権侵害を理由とする損害賠償請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、暴行及び人格権侵害等を理由とする損害賠償責任が認められた裁判例を見てみましょう。

大島産業事件(福岡地裁平成30年9月14日・労経速2367号10頁)

【事案の概要】

甲乙事件は、Y社に雇用されて長距離トラック運転手として稼働していたXが、①Y社に対し、未払賃金929万7149円+遅延損害金を支払うよう求め、②B及びCに対し、Y社が前記①の未払賃金を支払わないことについて、Bが同社の代表取締役として、Cが同社の事実上の取締役として、それぞれ会社法429条1項又は民法709条に基づく損害賠償責任を負うと主張して、前記①の未払賃金+遅延損害金をY社と連帯して支払うよう求め、③Y社に対し、労働基準法114条に基づく付加金541万2912円+遅延損害金の支払を求め、④C及びY社に対し、CはXに対しパワーハラスメントと評価されるべき不法行為を行っていたところ、Cは民法709条に基づき損害賠償責任を負い、Y社は会社法350条の類推適用により事実上の取締役であるCがその職務を行うについてしたパワハラについて損害賠償責任を言うと主張して、165万円+遅延損害金を連帯して支払うよう求めるほか、Cに対しては前記165万円に対する不法行為の後である平成26年3月6日から平成27年8月31日まで同割合の遅延損害金の支払を求めた事案である。

丙事件は、Y社が、Xに対し、Xが平成25年9月28日及び平成26年3月7日に業務指示を受けていた運送業務を無断で放棄したため、Y社は受注していた運送業務を履行できず損害を被ったと主張して、不法行為又は債務不履行に基づき、229万7635円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

1 Y社はXに対し、937万0829円(未払賃金)+遅延損害金を支払え

2 Y社はXに対し、494万8855円(付加金)+遅延損害金を支払え

3 C及びY社はXに対し、連帯して110万円(パワハラの慰謝料等)+遅延損害金を支払え

4 CはXに対し、110万円に対する平成26年3月6日から平成27年8月31日までの遅延損害金を支払え

5 XはY社に対し、12万2609円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 Xは、本件失踪1の後に復職を認めてもらおうとしてY社に戻った際、E常務に指示されて、社屋入口前で、Cが出社して来るまで土下座をし続け、出社して来たCはこれを一瞥したが土下座を止めさせることはなく、Xはその後も数時間にわたり土下座を続けたことが認められる。
従業員が数時間にわたり社屋入口で土下座し続けるという行為は、およそ当人の自発的な意思によってされることは考えにくい行為であり、Cとしても、Xが強制されて土下座をしていることは当然認識し得たものとみられる。にもかかわらず、前記認定のとおり、Cは制止することなくXに土下座を続けさせたのであるから、XはCの指示で土下座させられたのと同視できるというべきである。したがって、Cは、民法709条に基づき、土下座を続けさせられたことによりXが受けた身体的、精神的苦痛について不法行為責任を負う。
また、上記Cの行為は、XのY社での就労再開に関して行われたもの、すなわち事実上の代表取締役としての職務を行うについてされたものであるから、Y社は、会社法350条の類推適用により前記のXが受けた身体的、精神的苦痛について賠償責任を負う。

2 C名義のブログ記事は、これが他人から閲覧されればXの名誉を棄損する内容であり、前記のXに関する記事が掲載されることによって、Xの名誉を棄損するものであると認められる。そして、Cは従業員に対する名誉毀損行為を防止すべき義務を負っていたといえるから、ブログ記事の掲載を放置したことについて、民法709条に基づき不法行為責任を負う。
また、Cは事実上の代表取締役であると認められるから、Y社は、会社法350条に基づき、Cが職務を行うについてXに与えた精神的苦痛を賠償すべき責任を負う。

認容された未払賃金額もさることながら、事案の性質から来るレピュテーションダメージの方がよほど影響が大きいと思われます。

どこかの段階で口外禁止条項を付した和解ができなかったのでしょうか・・・。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

本の紹介894 ピコ太郎のつくりかた(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
ピコ太郎のつくりかた (NewsPicks Book)

古坂大魔王さんの本です。

プロデューサーとしてどのようなことを考えているのかがよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

何やってもいいから、1番になれと。でも1番になったら2番目を引っ張れと言われた。『まずは1番を倒せ。ただ、倒した後はちゃんと手を差し伸べろ。そうでないと、あんたの意見は通んねえよ。下から上にしゃべっても誰も聞いてくんないよ。上から手を差し伸べていたら、いざというときにいろいろ聞いてくれるから。まず自分が勉強して、強くなって、上に上がる。そしてそこからやればいいから』こういう母の教えが僕の中にはある。」(160頁)

私が考える順番とは異なりますが、言わんとしていることは理解できます。

自分の力をつけるために日々努力をすることは言うまでもないことです。

しかし、それとともに、力のある先輩に引き上げてもらえる「かわいげ」が必要です。

力のないうちは、力のある人にかわいがってもらえることがとても重要です。

そう、「かわいげ力」。

かわいげがない人は、たとえ力があっても、力を発揮する機会に恵まれません。

だからなかなか上に行くことができません。

解雇293 積極性の欠如を理由とする普通解雇が有効と判断された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、積極性の欠如等を理由とする普通解雇が有効とされた裁判例を見てみましょう。

アクセンチュア事件(東京地裁平成30年9月27日・労経速2367号30頁)

【事案の概要】

本件は、コンピュータ・ソフトウェアの設計、開発、制作、販売、リース、賃貸及び輸出入等を目的とする株式会社であるY社に雇用されたXが、Y社によって行われた解雇が無効かつ違法であると主張して、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認とともに、同契約に基づく上記解雇後の賃金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 ・・・そのように業務に臨む基本的かつ根本的な姿勢の問題をXは入社当初からY社によって繰り返し指摘されていたにもかかわらず、結局のところXは、自身の問題点を、そもそも自身が得意とする仕事を割り当てない会社側の問題点であるとすり替えて、自らの意識や仕事ぶりを全く顧省みることなく、これによって他のメンバーとの協働に支障を来していることにも思慮が至らないのであるから、Xについては、少なくとも就業規則54条2号に定める解雇事由があり、本件解雇には客観的に合理的な理由があるといえる。

2 そして、Xの解雇事由がそのような業務に臨む基本的かつ根本的な姿勢の問題であり、これを長年にわたって繰り返されたフィードバック等による私的によって容易に認識し得たにもかかわらずPIPで改善すべき点を示されるまで全く明らかにされてこなかったなどとしてそもそもの認識すら欠如していたこと、仕事の姿勢に対する基本的かつ根本的なY社の考えを明らかにされてもなお「積極性」の意味を手前勝手に解釈してこれに反する考えを一切受け容れないこと、そのようなXに対してY社において普通解雇の可能性を示唆しつつPIPを実施したことや退職勧奨を試みたこと等を併せて鑑みれば、本件解雇は社会通念上相当なものであるといえる。

3 これに対し、Xは、Y社のアサイン制度が解雇権濫用法理との関係ではらむ問題点等を主張するが、それは単に一般的抽象的な懸念にすぎず、Xの主張を採用することはできないし、Xの技術力が一定程度評価されていたことや職位を落とすことによってアサイン継続の可能性が検討された事実があったことといったXに有利な事情を全て踏まえても、前記認定・説示に係る具体的なXの勤務態様及び業務に臨む基本的かつ根本的な姿勢の問題に照らして、解雇の有効性に係る上記判断が覆るものではない。
したがって、本件解雇は、客観的に合理的な理由があり、社会通念上も相当であって、有効である。

一般には、積極性の欠如等を理由に解雇することはとてもハードルが高いです。

本件でも、会社はいきなり解雇したわけではなく、根気強く指導・教育をしています。

多くの場合、会社がそこまで忍耐強く指導できないために、相当額の解決金を支払って和解しているわけです。

また、今回は結果として解雇が有効になっていますが、仮に相当性の要件で解雇が無効となれば、バックペイの金額がかなり高額になるというリスクを会社側は負うことになります。

リスクヘッジの意味でも、ある程度の解決金を支払うという判断がなされることは十分にあり得ることです。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介893 ざんねんな努力(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
ざんねんな努力

帯にはこう書かれています。

頭は悪くない、努力もしている・・・でも・・・なぜかうまくいかない

『頑張り方』を間違えているあなたへ

筆者はこれを「ざんねんな努力」と言っています。

全体を通して習慣の大切さと習慣化の方法について説いています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・努力をすればいつかきっと報われると思っていたのが、そうではないんだ、とね。ただがむしゃらにガンバるんじゃなくて、努力の仕方によってはガンバらなくても結果を出せるということを学んでいたよ。それで、次々に目標を達成することができるようになっていったんだ。プライベートでも仕事でも。」(17頁)

確かに努力の仕方、つまり、方法論も大切です。

でも、実際は、方法論を知ったとしても、多くの人は、やらない。

いや、正確にはやり続けられないのです。

だから、成功する方法を教えてもらっても、多くの人は成功しない。

なぜか?

成功する前に止めちゃうからです。

ジムも英会話も仕事もすべて途中でやめちゃうから結果が出ないのです。

不当労働行為212 併存組合が存在する場合の使用者の対応と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、会社内に併存する2労組に掲示板を貸与しながら、新たに結成された労組の下部組織に掲示板を貸与しなかったことが不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

山陽タクシー事件(兵庫県労委平成30年10月25日・労判1189号183頁)

【事案の概要】

本件は、会社内に併存する2労組に掲示板を貸与しながら、新たに結成された労組の下部組織に掲示板を貸与しなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社は併存組合に対しては、具体的条件を付さずに掲示板を貸与しながら、A1分会に対しては、これを貸与せず、その異なる取扱いについて合理的な理由は認められないので、Y社がA1分会に対して掲示板を貸与しないことは、A1分会を不当に差別して取り扱い、組合の弱体化を図ったものと認められ、労組法7条3号の不当労働行為に該当する。

団体交渉でもよく掲示板の貸与の話が出されますが、併存組合が存在する場合には、その対応に注意しなければなりません。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介892 働き方1.9(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
働き方1.9 君も好きなことだけして生きていける

イサムです。

サブタイトルは「君も好きなことだけして生きていける」です。

無理だと思う人もいれば、すでにそうしている人もいます。

ユーチューバ―で生計を立てるかどうかはさておき、考え方は学ぶところがあります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

たくさんのタネを蒔くという簡単な行動は、今すぐにでもできる。年齢のことに触れたのでついでにいうが、簡単だからこそ先送りしないで今すぐに始めよう。『定年退職してから始める』とか『子どもが独立して家を出てから始める』とかいう人は、たいてい定年退職しても、子どもが独立しても始めない。」(119頁)

まあ、そうですね。

もう少し時間ができたらやってみようかな、と思っている大半のことは、時間ができてもやりません。

本当にやりたいこと、やるべきことは、時間を作ってでもやるからです。

先送りしているということは、それほどやりたいと思っていない証拠ですから。

そう考えると、忙しい毎日の中で、いかにして時間を作るかが極めて重要になってくるわけです。

だからこそ、1分でも無駄な時間をなくしたいわけです。

自分の時間を大切する。

必要以上に他人に時間を奪われない。

このような意識からしか時間を作ることはできません。

配転・出向・転籍37 転居命令が無効と判断された理由とは?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、転居命令が業務上の必要性を欠くとして無効とされた裁判例を見てみましょう。

ハンターダグラスジャパン事件(東京地裁平成30年6月8日・労経速2365号18頁)

【事案の概要】

本件は、建材及びインテリア・ブラインド等の製造販売を主たる業務とするY社の従業員であるXが、Y社が平成28年11月4日にした転居命令に従わなかったことを解雇事由として平成29年3月31日付けで解雇されたことから、Y社に対し、本件解雇は客観的合理的理由及び社会通念上の相当性を欠き、労働契約法上無効であるなどと主張して、労働契約上の地位の確認、本件転居命令に従う義務のないことの確認、平成29年4月及び5月の賃金合計125万1000円+遅延損害金等の支払を求めている事案である。

【裁判所の判断】

解雇は無効

転居命令も無効

Y社はXに対し、125万1000円+遅延損害金を支払え 等

【判例のポイント】

1 本件について業務上の必要性をみるに、Y社は、往復6時間の長時間通勤は、Xの健康不安、疲労や睡眠不足による工場内事故の危険、通勤途中の事故や交通遅延の可能性の増大、残業を頼みにくい不都合等から、Y社はXの長時間通勤を長期間放置することはできず、本件転居命令には業務上の必要性がある旨主張する。
しかし、本件転居命令は、本件配置転換の約1年後に出されたもので、Xは、その期間、転居せず自宅から茨城工場に通勤していたこと、Xの茨城工場での業務内容は梱包作業であり、早朝・夜間の勤務は必要なく緊急時の対応も考え難いこと、X不在時には他の従業員がXの業務に対応することができたこと、Xに残業が命じられることはなかったこと、Xは、片道3時間かけて通勤しているが、交通事故のために休職した期間と一度の電車遅延による遅刻の他は遅刻や欠勤はなく、長距離通勤や身体的な疲労を理由に仕事の軽減や業務の交替を申し出たこともほとんどなかったことが認められる。
そうすると、Xが転居しなければ労働契約上の労務の提供ができなかった、あるいは提供した労務が不十分であったとはいえず、業務遂行の観点からみても、本件転居命令に企業の合理的運営に寄与する点があるとはいえず、業務の必要性があるとは認められない

2 本件転居命令を巡る交渉において、Xが不満とした家賃の負担や別居手当の不支給は、Y社の旅費規程で定められたものであるから、Y社がXの不満に対応することが出来なかったことはやむを得ない。また、本件転居命令を出したことにつきY社に不当な動機・目的の存在は認められないし、Y社がXに対して転居することを強く求めたのも安全配慮義務の履行のためであったことは否定できない。そうすると、本件転居命令が無効であり、それに従わないことを理由にした本件解雇が無効であるからといって、Y社がXに対して、本件転居命令に従うよう求めたことが直ちに不法行為に当たるとは認められない。
したがって、Xの不法行為に基づく慰謝料請求は理由がない。

会社の考えもわからないではありませんが、判決となるとこういう結果になりますね。

それにしても、毎日片道3時間の通勤ですか・・・。考えただけでしんどいです。

片道3分のところに住んでしまうと、もう長時間勤務ができない体になってしまいます。

実際の対応については顧問弁護士に相談しながら慎重に行いましょう。

本の紹介891 勝間式超コントロール思考(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
勝間式超コントロール思考

勝間さんらしい本です。

こういうことは、楽しんで取り組める人が勝ちです。

少しでも効率的にならないかを考えるトレーニングになります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

移動時間を無駄遣いしないという感覚の鈍化についてもっと言えば、通勤時間についてもなるべく短い方が当然ながら理想です。・・・もし引っ越せるならば通勤時間が短くなることを最優先に選ぶ、そして諸事情で引っ越せないならば5分でも短くできる方法を考えることをお勧めします。」(101頁)

全く同感です。

通勤時間3分のところに住んでしまうと、もう職場から遠くに住むことができなくなります。

車の運転もできるだけしたくありません。

寝れないし、資料も読めないし・・・。

とにかく極力無駄な時間をなくしたい。

ちりつもで考えると小さな無駄の積み重ねで膨大な時間を無駄に消費していることになります。

継続雇用制度26 定年後再雇用者の労働条件と同一労働同一賃金問題(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、定年後再雇用者につき、定年前後の基本給等の差異は不合理でないとされた裁判例を見てみましょう。

日本ビューホテル事件(東京地裁平成30年11月21日・労経速2365号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社を定年退職後にY社との間で期間の定めのある労働契約を締結していたXが、当該有期労働契約と定年退職前の期間の定めのない労働契約における賃金額の相違は、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違であり労働契約法20条に違反するとして、Y社に対し、不法行為による損害賠償請求として定年退職前後の賃金の差額相当額688万0344円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xの定年退職時と嘱託社員及び臨時社員時の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(職務の内容)は大きく異なる上、職務の内容及び配置の変更の範囲にも差異があるから、嘱託社員及び臨時社員の基本給ないし時間給と正社員の年俸の趣旨に照らし、Xの嘱託社員及び臨時社員時の基本給及び時間給が定年退職時の年俸よりも低額であること自体不合理ということはできない
そして、その他の事情についてみるに、定年退職時の年俸額はその職務内容に照らすと激変緩和措置として高額に設定されている上、正社員の賃金制度は長期雇用を前提として年功的性格を含みながら様々な役職に就くことに対応するように設計されたものである一方で、嘱託社員及び臨時社員のそれは長期雇用を前提とせず年功的性格を含まず、原則として役職に就くことも予定されておらず、その賃金制度の前提が全く異なるのであり、このような観点からみても、正社員時の賃金額と嘱託社員及び臨時社員時の賃金額に差異があること自体をもって不合理といえないことは明らかである。
加えて、Xの定年退職時の年俸の月額とこれに対応する嘱託社員及び臨時社員時の賃金とを比較するとその違いは小さいものとはいえないが、それらの賃金額は職務内容が近似する一般職の正社員のそれとは比較においては不合理に低いとまではいえないことも併せ考慮すれば、Y社における嘱託社員及び臨時社員の賃金額の決定過程に労使協議が行われていないとのXの指摘を踏まえてもなお、Xの定年退職時の年俸の月額と嘱託社員及び臨時社員時の基本給及び時間給の月額との相違が不合理であると認めることはできず、これをもって労働契約法20条に違反するということはできない。

まだ当分の間、労働契約法20条に関する裁判が続くと思われます。

最高裁判決が出てもなお、個別の事情を踏まえての判断になるため、紛争自体はなくなりません。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。

本の紹介890 インパクトカンパニー(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
インパクトカンパニー 成熟企業を再成長させる、シンプルな処方箋

久しぶりの神田さんの本です。

サブタイトルは、「成熟企業を再成長させる、シンプルな処方箋」です。

これからの時代のマーケティング手法について非常に参考になります。

また、文章の構成自体が勉強になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

はじめに言葉ありきー答えは、『言葉』に他ならない。ページデザインや写真の美しさも当然、重要だが、そうしたクリエイティブな要素は、コピーが表現するメッセージを、より伝達しやすくする補完的な役割を果たす。やはり主役は、読み手が商品価値を直感的に理解できる言葉や、その商品を使っている姿を明確にイメージできる言葉なのである。」(220頁)

どのような言葉を選択するかは、まさにその人がこれまでどのような人生を送ってきたかを如実に表します。

言葉には、単語のほかに文章も含まれていると思います。

相手に対して、いかに自分の意見を伝えるか。

聞き手、読み手の立場を想像し、どのように伝えるのが一番伝わりやすいかを考える。

一朝一夕にできることではありませんが、反面、年齢を重ねてもできない人は永遠にできません。

だからこそ、どのような人生を送ってきたかが出てしまうのです。

事実なので受け入れるしかありません。

でも、人生は変えられます。 簡単ではありませんが変えられます。

想像力を鍛え、使う言葉を変えると人生が変わり始めます。

信じるか信じないかは、あなた次第。