解雇293 積極性の欠如を理由とする普通解雇が有効と判断された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、積極性の欠如等を理由とする普通解雇が有効とされた裁判例を見てみましょう。

アクセンチュア事件(東京地裁平成30年9月27日・労経速2367号30頁)

【事案の概要】

本件は、コンピュータ・ソフトウェアの設計、開発、制作、販売、リース、賃貸及び輸出入等を目的とする株式会社であるY社に雇用されたXが、Y社によって行われた解雇が無効かつ違法であると主張して、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認とともに、同契約に基づく上記解雇後の賃金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 ・・・そのように業務に臨む基本的かつ根本的な姿勢の問題をXは入社当初からY社によって繰り返し指摘されていたにもかかわらず、結局のところXは、自身の問題点を、そもそも自身が得意とする仕事を割り当てない会社側の問題点であるとすり替えて、自らの意識や仕事ぶりを全く顧省みることなく、これによって他のメンバーとの協働に支障を来していることにも思慮が至らないのであるから、Xについては、少なくとも就業規則54条2号に定める解雇事由があり、本件解雇には客観的に合理的な理由があるといえる。

2 そして、Xの解雇事由がそのような業務に臨む基本的かつ根本的な姿勢の問題であり、これを長年にわたって繰り返されたフィードバック等による私的によって容易に認識し得たにもかかわらずPIPで改善すべき点を示されるまで全く明らかにされてこなかったなどとしてそもそもの認識すら欠如していたこと、仕事の姿勢に対する基本的かつ根本的なY社の考えを明らかにされてもなお「積極性」の意味を手前勝手に解釈してこれに反する考えを一切受け容れないこと、そのようなXに対してY社において普通解雇の可能性を示唆しつつPIPを実施したことや退職勧奨を試みたこと等を併せて鑑みれば、本件解雇は社会通念上相当なものであるといえる。

3 これに対し、Xは、Y社のアサイン制度が解雇権濫用法理との関係ではらむ問題点等を主張するが、それは単に一般的抽象的な懸念にすぎず、Xの主張を採用することはできないし、Xの技術力が一定程度評価されていたことや職位を落とすことによってアサイン継続の可能性が検討された事実があったことといったXに有利な事情を全て踏まえても、前記認定・説示に係る具体的なXの勤務態様及び業務に臨む基本的かつ根本的な姿勢の問題に照らして、解雇の有効性に係る上記判断が覆るものではない。
したがって、本件解雇は、客観的に合理的な理由があり、社会通念上も相当であって、有効である。

一般には、積極性の欠如等を理由に解雇することはとてもハードルが高いです。

本件でも、会社はいきなり解雇したわけではなく、根気強く指導・教育をしています。

多くの場合、会社がそこまで忍耐強く指導できないために、相当額の解決金を支払って和解しているわけです。

また、今回は結果として解雇が有効になっていますが、仮に相当性の要件で解雇が無効となれば、バックペイの金額がかなり高額になるというリスクを会社側は負うことになります。

リスクヘッジの意味でも、ある程度の解決金を支払うという判断がなされることは十分にあり得ることです。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。