Monthly Archives: 12月 2018

解雇285 解雇の有効性と社宅の賃料請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、単身赴任手当の不正受給等を理由とした懲戒解雇処分につき有効性を認めた裁判例を見てみましょう。

KDDI事件(東京地裁平成30年5月30日・労経速2360号3頁)

【事案の概要】

本件本訴は、Y社と期間の定めのない雇用契約を締結し、Y社の借上社宅に居住していたXが、平成27年11月18日に単身赴任手当等の不正受給や社宅使用料等の支払を不正に免れたこと等を理由として懲戒解雇され、Y社の退職金不支給規定に基づき退職金の支払を受けられなかったことについて、①主位的には、本件懲戒解雇は、Y社が指摘する各懲戒事由が存在せず、また、相当性も認められないことから懲戒権を濫用したものとして無効であると主張して、Y社に対し、本件雇用契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、本件懲戒解雇後、本判決確定の日までの賃金の支払を求め、②予備的には、仮に本件懲戒解雇が有効であるとしても、Y社が指摘する退職金不支給事由はXのそれまでの勤続の功を抹消又は減殺するほどの著しい背任行為であるとはいえず、Xに本件不支給規定を適用することは許されないと主張して、Y社の退職金規程上の退職金支払請求権に基づき、退職金の支払を求める事案である。

本件反訴は、Y社が、Xは単身赴任手当等の各種手当を不正に受給したほか、入居資格を有していないにもかかわらずY社の借上社宅に居住し続けるなどし、本来Xが負担すべき債務をY社に負担させて同債務の支払を免れたなどと主張して、Xに対し、不当利得に基づき、Xの利得額及びこれに対する各利得日の翌日から支払済みまで年5分の割合による法定利息の返還を求めるとともに、Y社の社宅規程上の社宅返還義務に基づき、上記社宅の明渡しと同義務が生じた後の日である平成28年4月1日から明渡し済みまでの賃料相当損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、126万0246円+遅延損害金を支払え。

Xは、Y社に対し、537万4904円+遅延損害金を支払え。

Xは、Y社に対し、平成28年4月1日から平成29年3月29日まで、毎月末日限り、月額8万6000円の割合による金員+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Xは、Y社の就業規則上の懲戒解雇事由に該当する各行為を行ったものであるところ、その具体的な内容をみても、3年以上の期間において、Y社に対し、本来行うべき申請を行わなかったというにとどまらず、積極的に虚偽の事実を申告して各種手当を不正に受給したり、本来支払うべき債務の支払を不正に免れたりするなど、XとY社が雇用関係を継続する前提となる信頼関係を回復困難な程に毀損する背信行為を複数回にわたり行い、Y社に400万円を超える損害を生じさせたものである。
これらの事情に加え、前記のとおり、Xは、その後、Y社から弁明の機会を付与された際にも、前記のXの主張とほぼ同様の主張を行うにとどまり、本件懲戒解雇がされるまで、Y社に対して明確な謝罪や被害弁償を行うこともなかったことや、前記のとおりの本件懲戒解雇に至る経緯に照らして、同解雇の効力に疑義を生じさせるような手続上の瑕疵も認められないことからすると、Xが30年以上にわたりY社に勤務していたこと(なお、本件各証拠によっても、Xに顕著な功績があったとまでは認められない一方で、Xは、その経緯には争いがあるものの、前件懲戒処分の理由となった各行為も行っていたものである。)といったXが指摘する諸事情を考慮しても、本件懲戒解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないものということはできない。

2 Xは、3年以上の期間において、XとY社が雇用関係が継続していく前提となる信頼関係を回復困難な程に毀損する背信行為を複数回にわたり行い、Y社に400万円を超える損害を生じさせるなどしてものであって、Xの同各行為は、上記のとおり将来にわたるXとY社の信頼関係を回復困難な程に毀損するのみならず、それまでのXの長年の勤続の功のうち、KDDにおける長年の勤続の功についても、相当大きく減殺してしまうほどの著しく信義に反する行為に当たるといわざるを得ないものの、Xの上記各行為の時期、期間及び内容に照らして、その功を完全に抹消したり、その殆どを減殺したりするものとまではいえず、②一時金(加算金)315万0615縁については、本件不支給規定の適用も、その6割である189万0369円を不支給とする限度でのみ合理性を有すると解するのが相当である。

結果としては、本訴原告が本訴被告に支払うべき金額のほうがはるかに大きくなりました。

それはさておき、本裁判例からわかるとおり、懲戒解雇の有効性と退職金不支給は当然には連動しません。

とはいえ、この点を事前に把握することは現実的には極めて困難です。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介866 ハイスコア(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
ハイスコア 人生は最大限を目指すゲーム

サブタイトルは「人生は最大限を目指すゲーム」です。

減点方式ではないから、失敗しても大丈夫。

どんどん挑戦してハイスコアを目指せばいいと。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

学びの多い場所は、得てして、居心地が悪いものです。・・・成長したいのなら、自分のステージをを引き上げてくれる人と一緒に居るのがカギです。いつもと違う。その違和感・ギャップを、成長の伸びしろと捉えて、勇気を出してステージの高い人と一緒に居ることを、強く強くお奨めします!」(206頁)

まったくそのとおり。

特に若いうちは、自分のステージを引き上げてくれる人と時間をともにすることが大切です。

居心地が悪いですが、その居心地の悪さこそが今の自分と次のステージとの距離なのです。

居心地が良いところでのんびりするのは、引退後にやればいいのです。

解雇284 飲酒運転を理由とする懲戒免職と相当性の要件(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、市職員の飲酒運転を理由とする懲戒免職に関する裁判例を見てみましょう。

茨城県市町村総合事務組合事件(水戸地裁平成30年7月20日・労判ジャーナル80号42頁)

【事案の概要】

本件は、茨城県下妻市の元職員Xが、飲酒運転による物損事故を起こして懲戒免職処分を受けたことに伴い組合長から一般の退職手当の全部を支給しないとの退職手当支給制限処分を受けたため、茨城県市町村総合事務組合に対し、同処分が違法であるとして、その取消しを求めるとともに、市町村職員退職手当条例に基づき、組合に対し、一般の退職手当等約2261万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

懲戒免職処分は無効

【判例のポイント】

1 下妻市の幹部職員であるXが飲酒運転をして物損事故を起こしたという本件非違行為の内容からすれば、公務に対する住民の信頼が一定程度失われたことは疑いようがなく、これによりXの退職手当の受給権が相当程度制限されること自体はやむを得ないといえるが、Xのこれまでの公務に対する貢献や、本件事故による被害の内容等をみると、本件非違行為は、Xのこれまでの公務に対する貢献が無に帰するほどの重大なものであると評価することは困難であり、本件制限処分によるXの経済的な不利益の程度等を併せ考慮すれば、本件非違行為の内容及び程度と不利益処分の重大性とが均衡を欠き、退職手当の全部の支給を制限することは衡平を欠き、重きに失するといわざるを得ないから、本件制限処分は、社会通念上著しく妥当性を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものとして違法であり、本件制限処分の取消しを求めるXの請求は理由がある。

相当性の要件で救済されました。

飲酒運転事案の裁判例は常に一定数ありますが、判断がまちまちで、結果の予測可能性はそれほど高くありません。

悩ましい判断が求められますが、過去の裁判例を参考に判断するほかありません。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介865 バカと付き合うな(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
バカとつき合うな

堀江さんと西野さんの本です。

いろいろな「バカ」を紹介してくれています。

自分がそうならないこと、また、そのような人と付き合わないことが大切です。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

2013年に他界した元イギリス首相のマーガレット・サッチャーは、かつでこう言いました。『金持ちを貧乏人にしたところで、貧乏人が金持ちになるわけではない』。金持ちや成功者を嫉妬で攻撃しても、そうする人の財布が潤うわけがない。それと同じで、『行動している人に文句を言っていても、文句を言う人間が行動できる人間になれるわけがない』。」(167頁)

多くは、嫉妬心からくる批判・非難です。

世の中、こういうのが本当に多いです。

自分には全く関係がないことに対して批判・非難があまりにも多い。

そんなことしたって自分の人生、変わらないのに。

逆に言えば、無関係な人からの批判・非難を気にしないことです。

やりたいようにやればいいのです。

不当労働行為210 労組の情宣活動と使用者の団交拒否(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、労組の申し入れた組合員の復職等を議題とする団交に応じなかった会社の対応は、正当な理由のない団交拒否に当たるが、支配介入には当たらないとされた事案を見てみましょう。

重田事件(東京都労委平成30年3月6日・労判1187号91頁)

【事案の概要】

本件は、労組の申し入れた組合員の復職等を議題とする団交に応じなかった会社の対応が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

団交拒否にはあたるが支配介入にはあたらない

【命令のポイント】

1 会社は、組合が正当な組合活動の範囲を逸脱した情宣活動について言及したことが、会社が組合の主張及び要求を全て認めるよう強要するものであるから正当な団体交渉の申入れではないと主張する。
しかし、組合が記載した情宣活動は直ちに違法と判断されるような内容のものではなく、しかも、いまだ実行されてもいなかった。また、そもそも本件記載は、団体交渉の「申し入れを拒否する場合は」と書かれており、会社が組合の主張や要求を全て認めなければ、組合が本件記載の行為を実行すると理解することもできない。
したがって、会社の主張は、団体交渉を拒否する正当な理由とはなり得ないものであり、採用することができない。

2 会社は、A2が、ごみ箱内にあったわけでもないワインを拾得したことについて報告や引継ぎも行わず、自身の専用ロッカーに入れていたこと等から、同人によるワインの拾得が窃盗ないし横領に当たることが明白であると考えたことに加え、同人も会社の処分に従うと申し出て退職の意思を表示したと判断していたことから、もはや組合との団体交渉により復職に向けて交渉する段階にはないと考え、7月21日付回答書に至ったとみるのが相当である。そして、組合も、それ以上に会社に団体交渉を働きかけることなく、同回答書の受領後直ちに本件不当労働行為救済申立てを提起していることからすると、この回答が組合の活動を制限し、組合の運営を阻害し弱体化させるものであったとまでは認めることはできない
したがって、会社が団体交渉に応じなかったことが支配介入に当たるとまではいえない。

特に上記命令のポイント1は注意しましょう。

このような理由では団体交渉を拒否する理由とはなりません。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介864 瞬発力の高め方(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
瞬発力の高め方

ユーチューバ―のジョーブログさんの本です。

先日のボクシング企画はとてもよかったです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

誰でも生きていれば、知識や経験がついてくる。若いときのような突破的な意識や、行動力は次第になくなってくるやろう。やりたいことには賞味期限、消費期限があり、その期限すぎたらやらなくなったり、落ち着いちゃったりする。だから、ダッシュできるときにしまくる。
なんでか? 知るか! 
ごちゃごちゃ考えるな。やらなきゃ、なんも言えん。やればわかる。やってみろや。その先を全部あるわ。」(191頁)

堀江さんもとにかく行動するということの大切さを説いています。

いろいろ考えて結局やらないということが多すぎるような気がします。

取れるリスクはどんどん取ってチャレンジしていかないと、あっという間におじいちゃんになってしまいます。

世間体だの周りの評価だのを気にし過ぎて縮こまっているなんてつならなくて死にそうです。

解雇283 配転命令の有効性の判断方法(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、試用期間の再延長が否定され、配転命令拒否等による解雇が有効とされた裁判例を見てみましょう。

F社事件(神戸地裁平成30年7月20日・労経速2359号16頁)

【事案の概要】

本件は、原告が本件解雇は無効であると主張して地位確認等を求めるとともに、Y社による本件自宅勤務命令、徳島本社への配転命令、本件解雇はいずれも違法であると主張して不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは平成28年2月25日からY社において勤務を始め、徳島本社で研修を受けた後、4月14日から関西支社勤務となり、資産形成事業部関西営業課に配属されたが、5月13日に本件自宅勤務命令を受け、以後その状態が続いていた。そして調査の結果、関西営業課において業務に従事していた際のXの営業活動に業務フロー違反があったことが発覚しており、また、Cと結託してE取締役の意向に沿わない営業活動を行っていたことも疑われる状況にあった。Y社は、延長された試用期間の満了にあわせて本件自宅勤務命令を解除することとしたが、このような状況で、8月25日以降、Xをもとの関西営業課で勤務させることはできないと判断し、用地仕入業務に従事させることとするとともに、徳島本社において改めて研修を受けさせることにしたというのである。
認定事実によれば、このY社の判断を基礎づける事実が実際にあったから、本件配転命令には必要性があったといえるし、不当な動機・目的によって行われたものともいえない。これによってXが特に不利益を被るという事情も認められない。したがって本件配転命令が業務命令権の濫用とされることはなく、有効である。

2 本件配転命令は有効であるからXは平成28年8月25日以降徳島本社で勤務する義務を負ったが、本件解雇のあった9月5日まで1日も出勤しなかった。・・・しかもXは8月28日、「(本件配転命令によって)労働契約は終了ということになる、解雇になったと認識していいか」などのメッセージをD取締役に送信している。このことからすると、Xは遅くとも9月2日までに、本件配転命令を拒否する意思を明確にY社に表明したと認められる。
指定された勤務場所で勤務する意思がないことを従業員が表明するということは、就労の意思を放棄するにも等しいことであり、労働契約上の義務の重大な違反である。Y社の就業規則においても配転命令は「重要な職務命令」と位置づけられている(就業規則71条1項16号)。一方、本件配転命令に従わないことについて正当な理由は認められないし、特に酌むべき事情も認められない。
このように重大な義務違反である本件配転命令の拒否があったことに加え、秘密漏洩行為、業務フロー違反行為もあったのであるから、本件解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないということはできない。本件解雇に権利の濫用はなく、有効である。

配転命令について不当な動機目的(例えば、退職に追い込むためなど)に基づくものではないということをいかに立証するかがポイントとなります。

上記判例のポイント1のような流れが裏づけとともに主張できると有効と判断してもらえます。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介863 一生お金に困らない「華僑」の思考法則(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
一生お金に困らない「華僑」の思考法則

「華僑」に関する本は複数出版されています。

当然、共通点が数多くありますね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

華僑ビジネスにおいても『致命傷だけは負うな』が合い言葉です。致命傷を負わないために”まず手を挙げて”慣らしていく。そして死なない程度の失敗をしながら身をもって危険を学ぶ。これを繰り返すうち、ビジネスに対する免疫力が上がり、瞬時に危険を回避する判断力が磨かれ、大きなチャレンジに耐えうる丈夫な心と勇気が備わっていくのです。」(47頁)

いきなり大きな仕事はできません。

小さな仕事を積み重ねて、場数を踏んでいく。

徐々に扱える仕事の種類が増えていきます。

その過程で、試行錯誤を繰り返し、力をつけていくのです。

人が休んでいるときに刀を磨く。 そういう地道な努力が実を結ぶと信じています。

不当労働行為209 定年前人事考課を理由とする再雇用拒否と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、定年退職後再雇用を希望する組合員に対し、定年前人事考課が低く再雇用基準を満たしていないとして再雇用しなかったことを不当労働行為とした事案を見てみましょう。

医療法人社団更正会事件(中労委平成30年3月7日・労判1187号90頁)

【事案の概要】

本件は、定年退職後再雇用を希望する組合員に対し、定年前人事考課が低く再雇用基準を満たしていないとして再雇用しなかったことを不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 本件二段階引下規定は、人事考課表不提出者に対して、最終評価ランクの決定の段階で目標評価3項目を既にマイナス16点という不利な評価をしたことに加えて、最終評価を二段階引き下げるという二重に不利な評価を行うものである。そしてその不利な評価は、給与額や賞与額という重要な労働条件のみならず、定年後の再雇用にも重大な不利益を及ぼすものである。本件二段階引下規定は、このように広範かつ重大な不利益を生じさせるものであるが、その重大な不利益を緩和する段階的な適用や措置は想定されていない

2 このような本件二段階引下規定が導入されたのは、組合がA1支部結成以来一貫して人事考課制度に反対して情宣文書の配布やストライキ等の闘争を行い、遂には人事考課表提出拒否闘争を行うに至ったことを契機とするものであり、人事考課制度をめぐる労使関係の対立が顕著となる中で行われたものであった。そして、単に人事考課表の提出拒否を防止するための措置というには不相当に重い本件二段階引下規定を、何らの段階的適用や緩和措置を検討することなく導入するにあたって、法人は、本件二段階引下規定の適用対象者が事実上、組合員のみであることを、上記経緯から、十分に認識していたといえる。

3 以上からすると、同規定は、組合の人事考課制度に対する反対運動を嫌悪した法人が、人事考課表を提出しない組合員を狙い撃ちにして殊更に重い不利益を与え、特に再雇用との関係では、同規定の適用によって、再雇用拒否により組合員が法人から排除される結果をもたらすことを認識・認容した上で定めたものと認めるのが相当である。

法人側の気持ちも理解はできますが、このようなやり方では不当労働行為と評価されてしまうのも仕方ありません。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。