解雇287 復職の可否判断における主治医と産業医の見解の相違(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、休職期間満了後の退職扱いに関する裁判例を見てみましょう。

菱江ロジスティクス事件(大阪地裁平成30年6月19日・労判ジャーナル79号10頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、平成28年1月16日付けで休職期間満了前に治癒していたなどとして労働契約上の地位確認並びに未払い賃金等の支払を求め、また、Y社のa支店運輸部製品管理課への配転が無効であるとして同課に勤務すべき労働契約上の義務がないことの確認を求め、さらに、上司からのパワーハラスメントにより精神的苦痛を受けたとして使用者責任に基づく損害賠償等の支払及び復帰プログラムの実施により人格権を侵害されたとして職場環境調整義務の債務不履行に基づく損害賠償等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、休職期間満了前の平成28年1月13日、同月7日より復職可能である旨の本件診断書を提出し、復職を申し出ていたから、Xは、休職期間満了前に労務の提供が可能な状態に回復していた旨主張するが、確かに、医師が同月6日付けで作成した本件診断書には、「H281月7日より復職可能と思われる」旨記載されていることが認められるが、本件診断書は、心療内科の医師が作成したものと認められるところ、医師が、Xの会社における職務内容を詳細に把握して本件診断書を作成したか否かは不明であり、本件診断書をもって直ちに、XがY社に対する労務の提供が可能な状態に回復していたと認めることはできず、また、Xは、同月13日、Y社に対し、本件診断書をファクシミリで送信すると共に、明日にも復帰可能である旨連絡したものの、結局、同月14日及び15日は体調不良を理由に出社せず、同月18日、19日及び20日も、Y社への連絡なく出社していないこと等から、Xが、休職期間満了日である同月16日の前に、Y社に対する労務の提供が可能な状態に回復し、休職事由が消滅したとまでは認められない。

2 Y社は、遅くとも休職期間満了の5か月程度前からXへの連絡を試み、3か月前にはXの自宅に赴いて連絡を取ろうとし、その後は、書面を送付して連絡を求めたり、休職事由が消滅しない状況が継続すれば就業規則の所定の手続により退職となる旨警告したりしており、Xが、休職期間満了3日前になって、出社する旨連絡した際も、Xの元上司であるg部長がa支店に赴いて待機するなどしているのであって、休職期間中であるXへの対応として不誠実な点は見当たらず、一方、Xは、平成27年10月2日付け診断書に記載された「2か月」が過ぎても、Y社に対し、休職事由の消滅や復職について前向きな連絡を行わず、平成28年1月13日(就職期間満了3日前)になって、Y社に対し、その1週間前の日付けで「復職可能と思われる」と記載された診断書をファクシミリで送信し、翌14日に出社する旨述べたものの、結局、同日及び同月15日は出社せず、同月18日ないし同月20日も、連絡なく出社しておらず、以上の経過を併せ鑑みれば、Y社が、就業規則に基づき、Xが、同月16日の休職期間満了により自然退職した旨の主張をすることが、信義則に違反するということはできない

主治医と産業医の見解が相違する場合、裁判所がどのような点に着目して判断するかを事前に理解しておくことは、このような事案を取り扱う上で、極めて重要です。

必ず顧問弁護士のレクチャーを受けてから対応しましょう。