おはようございます。
今日は、論文盗用等を理由とする懲戒解雇に関する裁判例を見てみましょう。
国立大学法人滋賀医科大学事件(大阪地裁平成30年5月16日・労判ジャーナル79号24頁)
【事案の概要】
本件は、Y大学が、大学の医学部看護学科の元教授Xに対し、Xが、自ら指導していた大学院生の修士論文を盗用及び改ざんし、大学の名誉及び信用を傷つけたとして、平成28年1月28日付けで懲戒解雇したため、Xが、大学に対し、本件解雇が違法無効である旨主張して、労働契約上の地位の確認並びに本件解雇後の賃金(賞与を含む)等の支払を求めるとともに、不法行為に基づく損害賠償請求として慰謝料100万円等の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 本件非違行為は、盗用が1件にすぎないことを考慮しても、もとより大学の名誉及び信用を著しく害する重大なものであるところ、Xから真摯な反省の態度が窺われず、Xの規範意識の低さが顕著であることをも併せ考慮すると、雇用関係を維持しがたいほどに重大であるといわざるを得ないが、他方において、Xは、約15年弱にわたり大学に勤務し、その間、学科長や学長補佐等の要職を務めるなど大学に貢献したこと、Xには、本件解雇以前に処分歴がないことが認められ、これらの点はXのために酌むべき事情ではあるが、上記非違行為の重大性に鑑みると、Xについて情状酌量の余地がないものとして、Xを懲戒解雇とすることが、懲戒処分としての相当性を欠き懲戒権の濫用に当たると認めることはできないこと等から、本件解雇は有効であるから、これが無効であることを前提とするXの地位確認請求及び賃金請求は、いずれも理由がない。
2 本件解雇は有効であり、違法な点は認められないから、Xの損害賠償請求は理由がない。
当該行為発生後の本人の反省の態度についても処分の相当性を判断する上で考慮されますので、注意が必要です。
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。