労働者性23 労基法116条2項の適用の可否(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、労基法上の労働者性に関する裁判例を見てみましょう。

国・瀬峰労基署長事件(東京地裁平成30年5月31日・労判ジャーナル80号52頁)

【事案の概要】

本件は、外壁工事等を営む義父の下で作業に従事していたXが、作業現場で転落して負傷したことが、業務に起因したものであるとして、瀬峰労基署長に対し、労働者災害補償保険法に基づき療養補償給付、休業補償給付及び障害補償給付の各請求をしたところ、Xは同法上の労働者ではないとの理由でいずれも不支給処分を受けたことから、その取消しを求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xの本件事業主に対する家計費の支払状況やXに対する給与の支払状況、労働条件が明示されていなかったこと、X名義のローン代金等を実質的に負担していたことなどの事情を総合すると、X及びその妻子と本件事業主及びその妻とは、別個独立して生活を営んでいたとは認められず、生計を同じくする関係にあり、Xは本件事業主にとって同居の親族に当たると認められ、そして、本件事業場には常時使用されていたものはX以外におらず、業務の繁忙時期にのみ、臨時に労働者を使用していたが、その期間は、7か月間で6日であり、全く使用しない月が連続してあったことや、臨時労働者は年間で延べ30人程度であったことなどの事情を総合すると、本件事業場においてX以外の労働者を使用していた時期は一時的なものであったといえること等から、本件事業場は、本件事業主を経営者とする家族経営の事業であり、常時同居の親族以外の労働者を使用する事業には当たらないから、労働基準法116条2項の趣旨等を併せ考慮すると、同事業に従事する同居の親族であるXを労働者災害法(労働基準法)上の労働者と認めることはできない

労働基準法116条2項は「この法律は、同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人については、適用しない。」と規定されています。

あくまでこの規定の「趣旨」を考慮するとされているにすぎず、直接適用はされていません。

労働者性に関する判断は本当に難しいです。業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。