おはようございます。
今日は、市職員の飲酒運転を理由とする懲戒免職に関する裁判例を見てみましょう。
茨城県市町村総合事務組合事件(水戸地裁平成30年7月20日・労判ジャーナル80号42頁)
【事案の概要】
本件は、茨城県下妻市の元職員Xが、飲酒運転による物損事故を起こして懲戒免職処分を受けたことに伴い組合長から一般の退職手当の全部を支給しないとの退職手当支給制限処分を受けたため、茨城県市町村総合事務組合に対し、同処分が違法であるとして、その取消しを求めるとともに、市町村職員退職手当条例に基づき、組合に対し、一般の退職手当等約2261万円等の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
懲戒免職処分は無効
【判例のポイント】
1 下妻市の幹部職員であるXが飲酒運転をして物損事故を起こしたという本件非違行為の内容からすれば、公務に対する住民の信頼が一定程度失われたことは疑いようがなく、これによりXの退職手当の受給権が相当程度制限されること自体はやむを得ないといえるが、Xのこれまでの公務に対する貢献や、本件事故による被害の内容等をみると、本件非違行為は、Xのこれまでの公務に対する貢献が無に帰するほどの重大なものであると評価することは困難であり、本件制限処分によるXの経済的な不利益の程度等を併せ考慮すれば、本件非違行為の内容及び程度と不利益処分の重大性とが均衡を欠き、退職手当の全部の支給を制限することは衡平を欠き、重きに失するといわざるを得ないから、本件制限処分は、社会通念上著しく妥当性を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものとして違法であり、本件制限処分の取消しを求めるXの請求は理由がある。
相当性の要件で救済されました。
飲酒運転事案の裁判例は常に一定数ありますが、判断がまちまちで、結果の予測可能性はそれほど高くありません。
悩ましい判断が求められますが、過去の裁判例を参考に判断するほかありません。
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。